2月20日 現実
とりあえず、留学の具体的なことに関しては、お金を稼いでから考えることにした。そしてお金を稼ぐためにも、新しいバイトを探すことにした。俺は、バイト一覧になった雑誌を眺めていると、ジュースを買ってきた旭が笑っていた。
俺 「どのバイトがいいと思う?」
旭 「そうだな?」
俺が渡したバイト雑誌をパラパラまくっていた。
俺 「難しいよね」
旭 「今は、農園だから、飲食店とかはどう?」
パラパラめくっていた手を止めて、話し始めた。
俺 「飲食店かぁ。向いてるかな?」
旭 「そうだな。傑ならなんでもできるんじゃないか?」
あんなにテレビで出て活躍している旭だが、そんな自分をさしおいて、いつも評価してくれていた。
俺 「ホント?」
手にとっていたバイト雑誌を置いた。
旭 「うん。接客業とかなんでもできそう」
接客業かぁ。あんま考えたことなかったな。
俺 「なんか、嬉しいな」
旭 「そう?」
旭は、首をかしげながら、バイト雑誌を丸め出した。
俺 「ああ。自信つくわ」
久しぶりに褒められている気がした。
旭 「なんで?」
俺 「そりゃあ、サッカー上手い旭に言われたらな」
あの日、テレビに映る旭は、誰よりも輝いていた。
旭 「サッカーなんてお金にならないからね」
俺 「でも、いい会社に入れるんじゃないの?」
あれだけの活躍が続いたら、社会人のサッカーチームからもオファーがくるんじゃないかと勝手に思っていた。
旭 「そんなことねぇよ。俺だって、来年はちまなこになって会社探していると思うぜ」
全然、想像できない。
俺 「そうか?旭だったら余裕そうだぜ」
旭 「全然だよ。それこそ、新チームになっても、試合に出れるかわからねぇしな」
あの旭でも、新しいチームになったら、またレギュラー争いからスタートなのか。サッカーも簡単じゃねぇんだな。
俺 「あんだけ活躍してたのに?」
旭 「あの時は、たまたまだよ」
丸めたバイト雑誌で太ももを叩き出した。
俺 「えー、まじで?」
旭 「うん。俺よりも大屋や柴山の方が上手いし」
大屋は、FWの選手。柴山は、途中で怪我をして、ピッチから離れていた選手かぁ、、、。
俺 「そうなんだ。全然わからんかった」
旭の話を聞いていると、少しずつサッカーの難しさを感じた。
 




