1月30日 迷走
コンビニで買ったパンは、いつにもなく、柔らかかった。俺は、隼斗と図書館の昼食スペースにいた。
俺 「明日、何するん?」
隼斗「明日?明日は、映画や」
映画。久しく見に行ってないな。
俺 「映画かぁ。いいな」
隼斗「お前もいったら?」
俺 「今、彼女、受験勉強中やから難しいな」
明後日、七海は、大学受験初日だった。もめにもめた七海の進路は、結局、大学進学で落ち着いた。
隼斗「この前は、受験しないって言ってなかった?」
俺 「そうやな。気が変わったらしいな」
隼斗「なるほどな」
こいつは、谷口隼斗。彼は、小・中学校が同じで高校からは、淮南高校に進学していた。サッカー部のエースで旭のことも良く知っていた。
俺 「そっちは、どうなの?」
隼斗「あっ、彼女のこと?」
俺 「ああ」
隼斗の彼女は、同学年のいう藤田祐希だ。現在、藤田は、長丘大学の3年生。
隼斗「今は、インターンとかいって、就職活動してるらしいよ」
俺 「インターンって何?」
聞き慣れない言葉を、隼斗に聞き返した。
隼斗「インターンってのは、インターンシップって言って、学生が職業体験とかすることだよ」
俺 「凄いな。意識高い系なの?」
藤田とは、連絡先を知ってるくらい仲はよかった。彼女とは、二人が付き合う前から知り合いだった。それだけに、二人が付き合うことを知った時は、とても驚いたもんだ。
隼斗「まぁ、そうなるんかな」
俺 「そうだよ」
俺は、水で乾いた口を潤した。
隼斗「明日、暇やったら三人でどっか行こや」
俺 「いや、いいよ。二人で行ってこいよ」
正直、隼斗についていって、よかったためしがない。
隼斗「だって、二人だといつも文句言われるしめんどくさいのよ」
俺 「そう言われてもな」
隼斗「いや、絶対大丈夫だって。むしろ歓迎されると思うぜ」
確かに、藤田は、俺が来ても怒らないだろう。
俺 「三人で映画見んの?」
隼斗「三人だったら、ボルダリングでもいこうぜ」
隼斗の遊びのチョイスに驚かされる。
俺 「ボルダリング?独特すぎるだろ」
隼斗「いや、ずっと行きたかったんだよ」
俺 「そうなの?」
話は、隼斗のペースで進んでいく。俺は、明日、本当にボルダリングに行ってしまうような気持ちになってしまっていた。