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2月8日 映画館

 目の前のスクリーンには、キレイな塔がたっていた。今日の映画は、『ぼくたちのまち』というアニメ映画だ。約2時間くらいの映画で、まだ開始15分程度だった。今は、仲間を集めてる途中の様だ。主人公の声はどこかで聞いたことがある。誰だっけな?知らないうちに他のアニメを連想していた。

 俺の左にいた清原は、とても真剣に見ていた。一方、右の大和は、ポップコーンを頬張りながらだったので、やや集中力がきれていた様だ。

 映画自体は、みんなでまちを建てるというものらしい。まだ、序盤でこれからどうなるかがよくわからない。でも、俺は、映画に集中できずにきた。それは、昨日、山本さんにも話したこれからのことだった。

 大学の春休みは、長い。それが、初めての感想だった。遊べるという感覚の人も多いのだろうが俺は違う。遊んだり、バイトしたりしてもどこか満たされない。何か足りない。そう思う毎日だった。

 自分のいるべき場所と今いる現在地との差がなかなか埋まらなかった。七海は大学、隼人はバイト、旭はサッカーとそれぞれ熱中できるものがあった。だが、俺にはそうしたものが見つからない。見つかるみんなが羨ましいという気持ちは全くない。でも、自分だけこのままでいいのかという思いが、日に日に強くなっていく。

 考えても無駄なことはわかっていた。だからこそ、何かしないと。そう考えて行動していた。今日は、大和、清原と映画館に来ていた。俺は、相変わらず、いかにも大学生という生活をしていたのだった。さっきまで考えていたのは何だったんだと自分に問いかけたくなる。

 大和は、大学生活をとても楽しんでいた。彼は、バスケサークルに入りながら、飲食アルバイトをしている。大和は、昔からアクティブでクラスの中心人物だった。将来は、教師になって、高校で授業をしたいという夢を持っているらしい。サークルやアルバイトだけでなく、きちんと単位も取っているのが、大和らしかった。

 俺も大和みたいにこれからどうするか考えないといけないんじゃないか。ただ、そのタイミングがわからない。何をしたらいいかも、何から始めたらいいのかも。右にいた大和がだんだん羨ましく見えたし、悩んでいる自分がバカらしく思えた。ポップコーンを落とした際に、俺の方を見てきた。

 俺は、どうした?と言わんばかりの表情をして、大和に顔をスクリーンの方に戻させた。映画は、仲間が集まるシーンへと切り替わっていた。

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