周りからするとダメスキル<憑依>でメンバーを集めていたのに、 寝てるだけと追放された。 憑依解除したらすっきりした、何で皆ついてくるの? ギルドが潰れるから戻れと言われたけど、もう遅い。
王都 ギルド ノットリタイナ
ギルドにはよく眠っていて、ぼーっとしている少年が居た。彼はアルムF級のダメな冒険者だ。
彼の最近の悩みは、スキルを使いすぎてボーっとすることだ。
今日もそのせいで、危うくギルド長の呼び出しを忘れるところだった。
「F級冒険者アルムよ。今日で貴様はクビだ。さっさと荷物をまとめて出ていけ。」
「えっ・・・(なんかギルド長が言っている。)
もう1度言ってください。」
「ふん。グズで怠惰なアルムよ。
今すぐ出てけーーーー。
クビだ。
副ギルド長よ。
そいつをつまみ出せ。
もう顔も見たくない。」
「待ってください。
なんでクビなんですか?
理由を聞いても」
「分かりきったことだ。最近のおまえは寝てばかりじゃないか。
お前が最近仕事をしたのはいつだった?
このただ飯食らいが。」
「・・・(ただ飯食らいとかひどいな。
言い訳しないと。本当に追放されてしまう。
でもボーっとして言葉が出ない。)」
「さあ、この部屋から出ろ。
ただ飯食らい。
ははは。」
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外
「痛い。離して下さい。
じ、自分で歩けますから。」
「ふん。追放されるんだ。
こんな物は、もういらんだろ。」
冒険者証明証を盗られた。
「待って。
それがないと他で働けないんです。
返してください。」
「ふん。どうせF級証明証だろ。
あっても無くても変わらんだろ。
俺がこうしてやる。」
ぐしゃ。
ぐしゃ。
ダン。
「あーーーー。僕の冒険者証明証がーーーー。
折って、踏みつぶすなんてひどすぎる。」
「まあおまえにはそれがお似合いだ。
そのゴミは持って行っていいよ。
使えるならな。
はははははーーーー」
バタン。ギルドの扉が閉まる。
僕は泣きながら、証明証を拾った。
「ひどい、今までギルドのために
色んな冒険者集めたり、今も色んな体でクエスト攻略していたのに。
このスキル使いすぎると、少し眠たくなってボーっとだけなんのに。
追放なんてひどすぎるーーーー。」
泣いて泣いて泣きまくった。
「もう、こんなギルド知らないや。
スキル<憑依>解除。
みんな自由にしてください。」
「ん。頭がいつもよりスッキリする。
魔力も戻ってきた。
これなら新しい仕事も頑張れる気がするぞ。
そうだ、大変で新しい環境に行きたくなかったけど、今なら隣街に行ける気がする。
さあ、次の街へ行こう。」
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隣の街
「ふー、王都に比べてのどかな所だけど、落ち着いてていいや。
あれ?前のギルドに入れてた、治癒師のマリアさんが居る。」
「あ、アルムさんギルド辞めたって本当ですか?
私、アルムさんが居ないと、冷静に順番決めて回復できないんですよ。」
「えっ。順番くらい、重症な人から回復すれば良いじゃないか。
ライフを見たら分かるでしょ。」
「ライフって何ですか?」
「えっ?
そうか、普通の人は人の状態見れないのか。」
「アルムさんって人の状態見れてたんですか?
すごいですぅ。
だから、アルムさんが憑いてたら問題なく順番決められてたんですね。
私、アルムさんについていきます。
もう一度憑いて下さい。
私は、アルムさんが居ないとダメなんですぅ。」
「え。ノットリタイナのギルド辞めるの?」
「はい。もう辞めました。
もうアルムさん無しでは生きていけません。」
「わわわ、あんまり大きな声で言わないで誤解されるから。
それに大げさすぎるよ。
僕なんてしょせん、追放されたF級冒険者だからさ。」
「誤解って何ですか?私は本気です。
それにアルムさんがすごい人ってことは今、再確認しました。
尊敬してます。」
弱ったな。
こんなにも可愛くて、マジメな治癒師が付いてきてくれるなら、追放されたのも悪くないやって思える。
クエストも攻略しやすくなるし、いいよね。
「分かった。付いてきていいよ。」
「はい。」
とびっきりの笑顔だった。まるで恋に落ちている
少女のようだった。
「じゃあ、この街のギルドに登録しようか。」
「分かりました。行きましょう。」
こうして僕たちは、ギルドに登録し、ゴブリンを討伐したり、途中出てきた大きい赤色のウルフを討伐したり、そこそこの活躍をした。
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Side 追放した人たち
「ギルド長、報告します。
A級のパーティが1つ解散しました。」
「なにーーーーーーーーーー。
どういうことだ?
あんなに昨日まで皆頑張っていたではないか。」
「それが、こんなギルドに居てたまるかって
ここ数年で入ったA級の女冒険者が2人も辞めてしまいました。」
「理由はそれだけなのか?
居たくないだけなのか?」
「これは、申し上げにくいんですが。」
「なんだ。怒らないから言ってみろ。」
「あ、アルムが居ないから辞めると」
「なにーーーーーーー。
アルムってあのただ飯食らいの、居眠りアルムか。
なんでヤツの名前が今更出るんだ。
奴は無能だっただろ。」
「はい。ですから我々も驚いてましたが、
マリアとテレーズは、言うことを聞かず出て行ってしまいました。」
「治癒師と付与師じゃないか。
攻略の大事な補助じゃないか。
どうしてF級のガキのために。
大事な戦力を失わなければならないんだ。
副ギルド長、俺は間違ったこと言っているか?」
「いえ、ギルド長は正しいです。
あの無能に付いていく方がおかしいんです。
いえ、狂っています。」
「ああそうだな。」
「それに、うちには、まだまだ優秀な冒険者が居ますから。」
「そうだな、二人失ったぐらいでは。
A級ギルド ノットリタイナは崩れたりはしないさ。
ははははは。」
「そうですよ。あはははは。」
2人は笑っていて、気づいていないが、今日も明日も、辞めようとする優秀な女冒険者が居ることをまだ知らない。そしてこれが、ギルド ノットリタイナの最盛期であったことを。
無能と勘違いしてしまった、大事な少年アルムを追放してしまったことを、
彼らはいずれ後悔する。
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Side アルム
「ねえ、どういうことかな?マリア。」
「なんですか?アルム様。」
「なんか、昔の仲間がこっちのギルドに増えてない?」
「気のせいですよ。アルム様。
まだたった20人ぐらいしか移籍してませんよ。」
「20人って結構な数だよ。
しかも全員ここに集まったら前のギルドにバレちゃうよ。」
「大丈夫です。
ギルド長にはバレないように、何人か優秀な人を残してますから。」
「残してるってどういうこと。」
「大丈夫です。ギルド長には私たちの邪魔をさせませんから。
アルム様は安心してください。
うふふふ。」
マリアが、なんか悪い笑みを浮かべていた。
僕は前のギルドの事なんて、忘れていたいと思っていたけど、こんなに前のメンバーが居たら
嫌でも思い出しちゃうな。
そういえば、憑依の副作用で、みんなの好感度が少し上がるって説明に書いていたけど。
もしかして皆、僕狙いなんてことは無いよね。
「アルム様、私たちは一生憑いていきますからね。
うふふふ。」
すべてのことが、どうでも良くなるような、かわいい笑顔でマリアは微笑んでくれていた。
このあと、ギルド長が戻って来てくれとお願いしに来たり、憑依したメンバーの中に他国の姫様が混じっていたり、それが元で僕らが活躍していくのは、また別のお話。
完
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今日は、今流行りの追放ものです。
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