2.弟と王太子様
次の日の朝。私は前世の乙女ゲームの内容やキャラ設定などをノートに『ひらがな』で書いた。これなら誰も読むことが出来ない。ラッキーなことに私はこの世界の読み書きと前世の読み書きの両方が使える。そして朝食とほかの家族に会うための場所に私は移動した。
「おはようございます」
「おはよう、ルリ」
「おはようございます、お姉様」
私の家族構成は父、私、そして4歳の弟。母は弟を出産後病にかかり亡くなったらしい。
「お父様、弟の名前を伺っても大丈夫ですか?」
「あぁ。リト、お姉様は記憶が少し曖昧なんだ。名前を思い出してもらいなさい。」
「はい、お父様。お姉様、私の名前はリラルト・ハーマンです。思い出せますか?」
「リト、ありがとう。思い出せましたよ。」
弟は大層嬉しそうに笑ってくれた。待って。可愛すぎない?天使なんじゃないの?可愛がろう。そう心に決めた。
「お父様、お願いがあるの。」
「どうしたんだい?」
「私たくさんお勉強をしたいの。リトも一緒に家庭教師を付けてくれなませんか?」
「えっ?ボソッ…あんなに勉強を嫌がっていたルリが…」
「どうしました?お父様、無理なのでしょうか?」
「いや、全くもって問題ない。優秀な先生を呼ぶことにしよう。」
「ありがとうございます。リト、頑張りましょうね」
「はい!お姉様。」
ルリアは確か勉強嫌いで馬鹿だった。いじめも単純だったし王太子妃になるための勉強もギリギリ。勉強は出来なくても礼儀作法は完璧だったため、あまり怒られてこなかった。そんな彼女だから王太子に嫌われるし、弟にも嫌われるのよ。まぁ、私は王太子と結婚する気さらさらないけど。
「ルリ、今日急で申し訳ないのだか、王太子様からお茶会に誘われている。だからリトと行ってきて欲しい。」
「はい?」
待って、早速会うの?これじゃヤバい!婚約お願いされたらどうしよう!断れないじゃない!
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そしてお茶会に来てしまった。弟もさすがに緊張しているよう。私も違う意味で緊張している。
「やぁ、ハーマン家のご姉弟。今日はお茶会に来てくれてありがとう」
「いえ、こちらこそお誘い頂きありがとうございます、殿下。」
「ありがとうございます」
私と弟は王太子様に礼をする。まぁ、社交辞令だからね。少し会話をしつつお茶を飲む。さすが王家。すごく美味しい。
「ねえルリア嬢。今日君に話したいことがあるんだ」
「なんでしょうか、殿下」
きた!!ヤバいヤバいヤバい。どうしよう!
「良ければ僕と結婚してくれないか?」
「えっと…」
「お姉様、大丈夫ですか?」
ヤバい、ほんとにきちゃったよ。意識吹っ飛びそう。
「あの、殿下。私たち今会ったばかりですよね?」
「あぁ。そうだね」
「他の筆頭貴族令嬢に会われましたか?」
「いや、君が初めてだ」
「ではなぜ!?」
「一目惚れかな。あと、君は私に興味があんまりないところとか」
弟!助けてくれ!!そう願うがそれは届かず。
「お姉様!この婚約受理しましょうよ!僕、王太子様のこと大好きになったから!ね、お願い」
「ごめんね、リト。私じゃ決められないの。殿下、それを父に話してもらえません?父から許可が出ているのなら私は受理します。」
「あぁ、それならもうもらっているよ。ではこれからよろしくねルリア嬢」
あぁ。根回しされてた。断れないし弟にお願いされるしで…でも悪態ついたら?よし!殿下に嫌われるようなことをしよう!そうすれば王太子は嫌になり、婚約破棄してくれるはず!これなら!
そう。この時から実は弟と王太子は繋がっていた。だけど私は乙女ゲーム内の学園のストーリーの最後まできづくことはなかった。