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皆さん、どうしたら図書館利用者は増えると思いますか?
悪役令嬢アルジェです。いえこれはあだ名ですがね。
司書としての資格をとればなんとかなると思っていた私は馬鹿でした。
いえ……長年の夢であった図書館運営、一応色々と考えて前を通る人などをカウントしたのですよ? 100人はいたのに利用者は3人なのですよ。
だって村の近くにたてようとしたら私の株の運用益では到底無理でした。
土地代だけで私の株の10年の運用益でした。
この山の上なら土地代はタダでした。
なら狩人さんや木こりさんなどがついでに狩り……いえ本を借りてくれないかなと思った私の考えは甘かったのでしょうか?
同じ愚痴はやめて、これからどうしたら利用者が増えるか考えましょう。
「目録を作るのも大変です」
「手作業ではなく外注にだしたらいいと私は思うけどな」
「予算がありません」
「ああそうっていうか相変わらずここ私とジュニアスと後村の長しかきてないの?」
「そうですね……」
目録作りは一旦休憩して、妖精さんむけの小型本は今鋭意製作してます。
外注にだそうとしたらお断りされたので、私が作っています。しかし上手くいっておりません。
私が目録の前でうーんと唸りながら作っているとティンカさんがふうとため息をついてきました。
「あんた昔から不器用なのに手作りは無理じゃない?」
「人間やる気があればなんとかなるものですよ」
「米粒に絵かくようなものじゃん……」
米粒とはなんでしょう? 辞書で調べましたがよくわかりませんでした。
紙束をまとめます。それを針で縫いつけます。
ここまででかなり時間がかかってます。
そして縫いつける前に字やイラストを書かなきゃと気がついてやりなおしなのですよ。
「あんたそれなんて書いてるの?」
「ファッション関係の本を丸映ししてます。えっとそうですね今年の流行は……」
「それ字?」
「失礼な、字は綺麗だとよくいわれるんですよ!」
「というか……悪いけど字に見えないわ」
「え?」
「米粒に字を書ける人に依頼したらどう? あんたじゃ無理よ」
却下されてしまいましたよ。字に見えると思っていましたが駄目だったようです。
マニファクチュアでしたっけ? 手作業でなんでもできると思っていましたが駄目でしたよ。
しかし米粒ってなんでしょう? 尋ねたら小さい米よと言われました。
どうも詳しく説明しにくいようです。もう聞くのはやめることにしました。
「ジュニアスは最近来てる?」
「はいお料理の本をよく借りてくれますよ」
「はああいつあいかわらず女子力だけは高いわね……」
私達の会話はたまにかみあいません。クリスティーナさんともかみあいませんでした。
どうも女性と話すと私は本しか興味がないのでお話ができにくいようですね。
女子力とやらがよくわからなかったので尋ねましたが女の子としての魅力が高い人ということらしいです。ジュニアスさんはオスですよ?
「しかし相変わらずドラゴンさんって呼んでるの?」
「名前で呼ぶとジュニアスさんがおかしくなるんです」
「昔からだもんねあいつ」
どうしても彼を名前で呼べません。それに司書さん以外の呼び名をしてくれません。
昔はお嬢様とジュニアスさんは私のことを呼んでました。
名前で呼ばれたのはいつの日か?思い出せませんね。
「目録作りは一日かかりそうですよ」
「その数字なに?」
「9は小説といった……」
「わけわかんないから説明はもういいわ……」
分類方法の説明をはじめたら早々にもういいわといわれてしまいました。
私は出来たら司書をもう一人増やしたいです。
今度商人さんが株の運用益の報告に来ますから相談してみましょう。
分類法は目録作りには必須です。
外注に出せませんから黙々と一人作っています。建物が立つ前には今ある在庫は出来ましたが……。あらたに利用者のニーズにお応えして入荷した図書の目録作りに追われています。
「本、そんなに入れたの?」
「いいえ30冊ほどです」
「どうしてそんなに時間かかるのよ?」
「ブッカ―がうまくできないのですよ!」
「あんた不器用だもんね……」
ブッカ―は司書の敵です。いえ不器用司書の敵です!
本を貸し出しする前に目録と照らし合わせてこうですね。背表紙と後ろに簡単にいうと分類番号を張ります。
そして透明なシートをはります。
それをブッカ―といいます。
しかし外注がしてくれない時は司書がします。
まあ費用対策として司書がしたほうがお安いですから、30冊程度ですとサービスでブッカ―もしてくれません。
「ブッカ―っていうの?」
「カバーともいいます」
「しかし……それ何語?」
「司書語です多分……」
「ふうん」
司書専用言葉なので突っ込みはやめてくださいティンカさん……。
つまりブッカ―はりは不器用さんの天敵です。ぺたんと張って伸ばしたと思うとしわがつきます。ハサミで切る時ギザギザになります。
見かけは微妙です。
やり直しをしていると丸一日かかります。
だって司書の資格取る時にブッカ―の貼り方なんて単位にありませんでしたよ!
「上手くいきませんね」
「もう二ヶ月?」
「そうなりますね」
「新しい本も入ったし、木こりとかきてくれないの?」
「ええ宣伝してみましたが苦笑されただけでしたよ」
「今はもうすぐ冬だもんね、そろそろ狩人も消えるか……」
「そうです……」
もうすぐ冬です。木こりさんだって消えていく時期ですよ。暖炉だけじゃ図書館も寒くなります。開館したのは秋だったのですがね……。
「熊狙いの人が来るんじゃない?」
「熊狙いって……ここでるんですか!」
「あんた知らないの? ここ数年出るわよ」
「うう……熊」
「あんた調べてないの?」
「はいです。そこまでは調べてませんよ!」
「せいぜい食べられない様にしたほうがいいわよ」
「はいです」
リサーチが足りないとティンカさんにまで呆れられましたよ。熊って知らなかったですよ襲われたらどうしたらいいのでしょう? 銃を購入するべきですか?
ジュニアスさんに相談したら熊はさすがにここにはでませんと笑われました。
あうあう、ティンカさんにからかわれたようです。
そうこうするうちに王都から商人さんがやってきたのですよ。
株が暴落はしていませんが、中々厳しいと言われて泣けてきました。
幼馴染でもある彼と顔を突き合わせて渋い顔をしておりましたら休館なのですがジュニアスさんがやってきました。
人型をとってきたのですが……見たことがない笑顔で商人のクリスに笑顔で初めましてと言った瞬間、外と同じような冷たい空気を感じたのですがきのせいですか?
クリスがこんにちは初めましてと言った瞬間、もっと凄い笑顔にジュニアスさんはなったのでした。