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「あの美青年はどこなのよ!」
「あの人はどこ!」
「一体どうしてここにいないの!」
ええ利用者は増えました。
それは増えたのですよ……でも。
「あの図書館利用のカードをあの……」
「本なんて借りにきたんじゃないの。あの美青年はどこなのよ!」
「出してよ!」
「こんな山奥まで苦労してきたのにあの人がいないなんて!」
本を借りに来たんじゃないんですよ。お嬢さんたちが数十人来てくれたのですが……。
口ぐちにジュニアスさんはどこかと聞くのです。
一応彼は弟さんたちのお世話があるので夕方は利用してくれないのですよ。
というか利用できないのです。
大体は午前中にこられるのですよ。
たまに夕方来られますが、ご両親がそろって弟さんたちの面倒を見てくれる時だけだそうです。
銀の竜は雑食ですが、まだ小さい弟さんたちは自分でご飯を用意できないそうなのです。
今は夕方です。いるわけがないのですよ……。
「ここまでくるのに苦労したのに!」
「こんな山奥半日かかったわ!」
「なのにあの人がいないなんて!」
「「「どういうことよ!」」」
ええ私はジュニアスさんがいないことをどうやって説明しようか困っておりました。
お嬢さんたちはお洋服をぼろぼろにされてました。かなり汚れています。
お怪我をされているお嬢さんもいるようです。
「どうしてこんな山奥にあるのよ!」
「地図をもらったのに迷ったわよ!」
「半日で来られるって言われたのに!」
私は半日はかかりません。でもそれを言ったら多分今は空気読めってことになりそうなので黙りました。
ああお嬢さんたちは顔を真っ赤にして怒ってます。
「あの図書館を利用されないようならおかえり……」
「だからあの人はどこ!」
「あのだから説明しました通り、今はいません」
「いつ来るのよ!」
「明日の朝だと思います」
私の答えは堂々巡りです。青筋たてて怒られているお嬢さん達に同じ言葉を繰り返しています。
ティンカさんは利用者が増えるといったのに利用者は増えるどころかクレーマーが増えましたよ。
嘘つきとみなさん私を怒鳴ります。
嘘はついていません。明日の朝は絶対きますよ。
休館日以外は絶対午前中にはこられてますから!
いくら説明しても帰ってくれません。あんな山道降りるのいやだと泣きだされる方もいらっしゃいます。
でもジュニアスさんに来てなんて言えませんというより私竜使いじゃないので竜笛も持ってませんから呼び出せませんよ。
どうしたらいいんでしょう?
「……どうしたのアルジェ? すごい騒ぎね」
「ティンカさん助けてください!」
妖精? とお嬢さんたちが入口から入ってきたティンカさんを見ます。
ふうと小さくティンカさんはため息をついたかと思うとお嬢さんたちの周りと飛び回りました。
するとキラキラした粉? が辺りを飛び交いお嬢さん達の身体が床に崩れ落ちました。
「妖精の粉よ、大丈夫ただ眠っているだけよ」
「ありがとうございます。助かりました!」
床に倒れ伏したお嬢さん達、ティンカさんがはあどうしてこうややこしいことになってるの? と聞いてこられました。
事情を説明すると「……想定外だったわごめん」と謝罪されてしまいました。
利用者が増えるどころかクレーマーさんが増えまして……。
お嬢さんたちをどうしようかと悩みました所、ティンカさんが闇のつてとやらで魔法でふもとに体を運んでくれました……企業秘密と言われ移動の魔法は教えてもらえませんでしたよ。
あーあ、どうしてこう上手くいかないのでしょう企業努力が足りませんか?
私は利用者カードの説明すらできず、はあとカウンターでため息をつくしかありませんでした。