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「あれ? ここはどこなのです?」
「アルジェさん、大丈夫ですか? 先ほど倒れられて……」
「うーん変な夢をみていたようなのですが……」
私は昔、自分が使っていた部屋のベッドに寝かされていました。心配そうにジュニアスさんが私を覗き込んでいます。
はぅ、昔こんなことがありましたね。熱を出した私をジュニアスさんがお見舞いに来てくれたり……。
「私の父が……一人の人間の女性を悲しませるようなことをしていたなんて」
「うーん、でも色々事情があったようです。私達がどうこう言えることじゃないですよジュニアスさん」
悲しげにうなだれるジュニアスさん、でもおじ様はおば様といて幸せそうです。
事情があったと思います。それに過去のことを色々言っても仕方ないですよ。
「私、シルヴィアさんの夢をみていたような気がするです」
「え?」
「銀の髪のお嬢さんが、呪われよと銀の竜さんに叫んでいました。でも……どうしてかわかりませんです」
それを聞いてぎゅうっとジュニアスさんが私が抱きしめました。体が震えているようです。
裏切り者という声が私の脳裏によみがえりました。
「私は絶対に……アルジェさんを裏切ったりはしません」
「え?」
「だから……」
シルヴィアさんはどこにいったのでしょう? 私はジュニアスさんの温かさを感じます。しかし一瞬だけなぜでしょう。何かこんなことがあったような気がしました。
でも何でしょうねぇ、自分の事じゃないような感じなんです。
本をお話で読んで感情移入した時のような感じですか?
「私はアルジェさんのことを……」
「裏切り者って……」
声が聞こえたことを話すと、一度おじ様に聞いてみますと沈鬱な表情で答えるジュニアスさん。
私はジュニアスさんの手を握り締め、何か事情があったんですよと言うとありがとうございますと少し悲しげにジュニアスさんは笑いました。
でも自分のお父様が昔愛した人を裏切ったかもしれないなんて……悲しいですよね。
当事者じゃないからそれはわからないのですよ。そういうとそうですねとにこりとジュニアスさんは笑いました。
それから私は色々と考えましたですよ。考えて……おじい様達にその結果を伝えました。
「王都には行きませんです」
「どうしてだ?」
「図書館を留守にはできません。後、どうも何かきなくさい感じがするのです。ユライさんが私を連れて行かないとと言った事等も気になります。ここから動かず様子を見た方がいいと思いました」
私はユライさんが操られていたことと最初にきた使者のことが気になっていました。
アッシュさんとは何か感じが違ったからです。
アッシュさんも私を呼びだす手段は無茶でしたが、話し合いをしようとしてくれました。
だが最初のおじ様は私を無理やり連れて行こうとしたのです。
アッシュさんも最初の使者さんのことは知らないと言っていましたし……。
「では護衛をつけようアルジェ」
「しかしそれは……」
「周りにはわからぬようにするからつけさせてくれ愛しい孫娘よ」
「ありがとうございます」
おじい様のお言葉に甘えるのはどうかと思いましたが、しかし悲しげに言うおじい様に心配させているのと感じ、私は頷きました。
アッシュさんも納得してくれましたですよ。
護衛としてアッシュさんと他の魔法使いの人がついてくれることになりました。
ユライさんのことも気になるから調べてくれるそうなのです。
「気をつけてなアルジェ」
「はいおじい様も」
私がぎゅうっと抱きつくと、おじい様は私を抱きしめお前を愛しているよと優しく囁いてくれます。
私もと言うと、愛しい孫娘とおじい様は私の頭を撫でてくれました。
アークのことも少しは気を配ってくれたらいいと思うのですがあまり言えません。
「グロウズ殿、では私がアルジェ様を護衛致します」
「うむ頼んだアッシュ」
二人はずっと一緒に旅した仲間で、アッシュさんはまだ独身だそうです。
どうもシルヴィナさんのことを話す時何か含みがありそうなので、もしかしたら?
「図書館のユライさんは大丈夫なのでしょうか?」
「不穏な気配は消えているようですよアルジェさん」
「操られていたにしても、いつからなのか……」
「普通でしたわよねぇ、でもティンカさんが変な気配をするっていってましたです」
「妖精が言うならそれは確かでしょう」
ティンカさんの言葉をもっときちんと聞いてあげればよかったです。
私も馬鹿です……。
ジュニアスさんがいつも勘違い発言するから気にしない方がいいと言ってくれましたが、でもそんなティンカさんのドジな所も私は大好きです。
「では頼んだぞ」
「はい」
おじい様の館を後にしましたが、しかし一番気になるのは闇が何かということです。
アッシュさんは王家の機密に関することだから話せないと言われましたです。
うーん王太子殿の命令って一体なんなのでしょうね?




