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大好きな本とともに人生を過ごすと決意しましたが……。
「お料理の本以外にいいものがあるでしょうか?」
「人に聞く前に自分から行動したらアルジェ?」
数少ない利用者のティンカさんは私を睨みつけます。
ううむ睨むというかパタパタと空中を飛ぶ妖精さんなので顔は良く見えません。
「妖精用の小型本いれてよ!」
「善処致します」
図書館司書の資格を手に入れても、図書館が流行らないのは駄目駄目です。
でも山の上といっても片道が半日ほどなのにどうしてきてくれないのでしょう? ほら狩人さんとか沢山きてますよ。需要はあるはずなんです。
「人間がこんなところでついでに本は借りないわよ、アルジェ」
「そうでしょうか?」
「うん」
私はティンカさんとは幼馴染というやつです。
この地方は閉ざされた中などではなく、人間だって住んでます。
竜使いの人達がいるくらいドラゴンさんも多いんですよ。
「出来たらあんたの美貌をもっと前面にだして!」
「ティンカさんの方が可愛いですよ?」
「ああ、あんがと」
金髪碧眼は貴族のステイタスです。
だが妖精である一人の彼女は、妖精王の花嫁になること以外に夢はないと言い切ります。
一度会いましたが妖精王って私、微妙に趣味じゃないです。
「ジュニアスは利用してるんでしょ?」
「はい利用してくれています」
「ならあいつ、色々あんたに差し入れしてくれるでしょ?」
「はい」
「アンタ……相変わらず鈍いわね」
「はあ」
私は辺境の地で幼少時過ごしました。
だから幼馴染には人外が多いです。
モフモフパラダイスと言われるくらい、獣人もいますよ。
ジュニアスさんも幼少時からの知り合いでありますが、いまだに名前をよんでくれません。
「あいつ……かわいそ」
「はあ」
私は司書、レファレンスなどもしたいのですがおしゃれの本しか興味がないティンカさんは人間用の本は読めません。
小型本はうまくいけば作れるのでしょうか?
私は一応元公爵令嬢、お金はまだ残ってます。
本のためならおしみませんよ!
「少し考えます。小型本と……」
「目録?」
「はい」
「予算はどうなってんの?」
「貯金を株式運用してます」
「株?」
「はい」
株というものはこの世界にはあるのです。私は上手く商会の株を持ってますから、その運用益が出る限りはなんとかなります。
経済を学んでいてよかったと思える出来事です。
幼馴染の一人の商人がいる限りはまあ大丈夫でしょう。
しかし昼が過ぎるのにやっぱり利用者はいません。
これって死活問題なのにどうしたらいいか思い浮かばない私は駄目駄目ですね。