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「素敵でしたね……」


「13年ぶりの再会か」


「あの馬鹿待たせすぎなんだよ。13年もさ……」


「私もマリエルさんの好きな人のことなんて知りませんでしたが、オークよく知ってましたね」


 オークさんはぶすっとした顔で座っています。部外者が見ているのもなんですのでアリシアさんとユライさんに挨拶して私達は妖精の里にやってきていました。

 長さんがお茶を用意してくれていますが、物凄く不機嫌そうですよ。

マリエルさんのことを待たせ過ぎだとずっと文句言っていますよ。


「お茶ですって……オークレイ元気がないですね。マリエルの事ですね!」


「うるさい」


 憮然とした表情で長さんに食ってかかるオークさん。

 長さんはかなり安心したように笑っています。

 ティンカさんが無事だったこともあるでしょうが何処か嬉しそうですよ。


「マリエルはずっとユライのことを待っていましたからね……」


「13年は長すぎだろ!」


「オークレイ、あなたの気持ちもわかりますが、二人を祝福してあげましょう」


 ずっと怒っているオークさん。ティンカさんは羽が痛いとぶつぶつ文句を言っています。

 ジュニアスさんはそんなティンカさんに、ユライさんが助けてくれたからそれくらいですんだと苦笑いです。

 ちなみにですがクリスは村においてきました。

 申し訳はないのですが一応妖精の里は選ばれた人しか入れないんですよ。

 ティンカさんはクリスのことは悪い子じゃないと言っています。

 基本、悪意のない人間にはティンカさんは寛容です。

 ユライさんだって誤解がなければあれほど嫌わなかったと思います。

  

「大好きな人と結ばれるのがこの世界で一番の幸せなのですよオークレイ」


「でもこの10年マリエルとずっと一緒にいたのは俺だ! それに小さい頃から……」


「愛するということは相手の幸せを願うことです。オークレイ」


 長さんは静かに言い聞かせています。小さい女の子さんの姿ですが静かで淡々とした話し方には説得力があります。

 

「お茶でも飲んで落ち着きなさいオークレイ」


 小さいカップに入ったお茶はとてもいい匂いがします。

 しかし部外者の私たちが口出しできませんが、オークさんどうもアリシアさんのこと好きだったようです。

 そっとティンカさんに話すと「あんた人のことならよくわかるのね」とため息をつかれてしまいました。


ユライさんに王都のことを聞いてみました所、やはり王太子妃があれ(クリスティーナさん)なのは駄目だという噂がかなり広まっているそうです。

 隣国でやらかしたことは……ユライさんも聞きかじりだそうですが……。

 王太子殿に色目を使ったとか言いがかり? をつけて隣国の王女と喧嘩になったことだそうです。

 隣国が親善のために数年に一度王族が遊びに来るんですが、その時にやらかしたそうです。

 王妃様が隣国の出身なので交流があるんですよ。

 しかしクリスティーナさん……どうもやらかしているということが子供みたいです。

 我慢できなかったとかもあるでしょうが……隣国の王女様はすごくストレートに嫌みを言う方ですから。

 気持ち悪い髪の色、おばあさんみたーいと私はよく言われたのものですよ。

 適当に笑ってごまかしてましたが。


「ユライさんが言っていたことを考えると、何かありそうですね」


「しかしどうして今更ということはありますね。アルジェさんのことはみなで守っていますが……」


「私今聞いてびっくりしたわ。でも王都からどうして使者なんてきたのかな」


「わかりませんけど、王太子様の愛があるから平気とか言っていたことが何かほころびが出始めたかもしれませんからね。王太子殿、割と自分大好きなので保身に走る所があるんですよ」


 顔を突き合わせて話しています。だってオークさんと長さんの話に入れませんし……。

 ユライさんとマリエルさんはくっついたですが、これから竜さんとはどうするのでしょうか? 王都に行かれるのなら一緒に行くとか……まさかですが。


「しかしアリスさんはどうされるんでしょうかね。マリエルさんが王都に行かれるとしたら?」


「ついていくわけにはいきませんからねぇ、アルジェさん」


 ドラゴンと人と別れはあるものですと言うジュニアスさん。

 その表情は淡々としていて意外だった。

 アリスさんとマリエルさんは同じ年に生まれた友達同士で、コンビを組んでいたんですが……。

 アリスさんは火竜で人間に変化した時は赤毛の美少女になります。

 外見は18歳位です。

 竜さん達は長命でこの位の年で成人し、老化は遅いです。

 寿命は銀の竜さんが一番長命で千年以上、後のドラゴンさん達は500年位だそうです。


「私が死んだ後もジュ……」


 言いかけてやめました。胸がずきっと痛んだからです。そうですね同じ銀の竜さんを伴侶にして……。

 なんでしょう少しむっとしました。


「そうですねぇ、でも私は……」


「はい?」


「私は大好きな人とともに同じ年月を過ごして、そして……」


 ジュニアスさんが寂しそうに笑い黙ってしまいました。クリスは人間の寿命とドラゴンの寿命は違うからなぁと言ってましたね。その時ジュニアスさんはふうと小さくため息をついていたのです。


【竜と人間の恋物語があり得ないというのは寿命の違いもあるらしい、自分が死んだ後、愛した相手が数百年も長く生き続けるのを考えるとぞっとする。愛している人を一人残して死ぬのは辛いもんだぜ。うちの場合はお袋だがな……俺を生んですぐ死んだから】

 

 って言ってましたです。


 そういえばクリスのお母様はお若くして亡くなっています。元々体が丈夫じゃなかったそうですが……そこからずっとおじ様は独身です。だからこそクリスのいう言葉には実感がこもっていました。

 

「そうねロマンチックだと言い切るのは簡単だけど、寿命が違う相手との恋っていうのは悲しいもんらしいわよね」


「はいです……」


 ティンカさんに話してみると、この言葉が返ってきました。それもありますね。ずっとずっと幸せに暮らしましたなんて言っても、絶対人間の方が先に死ぬんですよ。

 ふとそれを考えるとやはり胸が痛くなるのを感じました。


「でもあいつ嫌な気配したのよ……」


 ティンカさんが小さく呟いていましたが、しかし助けてくれているのにそれじゃ……私が言うと気のせいかな? と小首を傾げるティンカさん。

 ジュニアスさんはティンカさんに気配? と聞くと「よくわかんないのよ」と返します。

 やっぱり勘違いだと思うのですが……ジュニアスさんの顔を見るとやっぱり何か複雑なものを感じたのでした。


 

 

 


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