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「ティンカですか? あれアルジェさんのところに行っているとばかり……」


 妖精の長さんが首をひねります。可愛らしい女の子さんの姿をしていますが私が小さい頃からこの姿です。

 妖精の里は村の外れの森から門を開いて行けます。

 私とジュニアスさんは妖精のお守りを貰っているので門はすぐ開いて妖精の里についたのでした。

 ジュニアスさんは小型化しています。やっぱりドラゴンさんの姿もかわいいです。


 妖精の長さんがいる家は人が暮らせる位の大きさです。

 人間との交流のためだと聞きましたが、暮らしにくくにないですかね?


「いいえ2週間ほど顔を見てないのですよ」


「花嫁選びが中止になったからアルジェさんに愚痴を言いに行くとその時期に里を出たきりですよ。来年の夏至に妖精王が変更されまして。気まぐれはいつものことですが、ティンカかなりがっかりしていましたからね」


 しかしならどうして私の所にきていないのでしょう? 長さんも人間に捕まった? とか物騒なことを口走ります。

 ジュニアスさんは鉄の箱あたりに閉じ込められて見世物とか? とかもっと怖い事をいいますよ。 

 妖精は鉄に弱いのです。火傷をしてしまいます。

 だから見世物にするときは鉄を箱にしたりして閉じ込めます。

 そうして顔だけだせるようにと……いえいえ物騒すぎますよ。


「不穏な気配は村にも感じませんでしたが……ティンカはドジですから、どこか木のうろにハマって抜けられないなどの可能性もあります。妖精の里で手があいている者に探させます」


「長さん、私とジュニアスさんも一緒に探します!」


「ええ、ティンカのことですから……何かトラブルというより木のうろに挟まっている可能性もありますよね。長さん」


 木のうろなら森、後は昔やらかしたことといえば崖のところで風に吹かれて下に落ちていたり……でもあの時だって助けてという声は聞こえませんでした。 

 結局探しに行った妖精さんたちがみつけて引っ張り出したんですよ。

 妖精の魔力を使えない位弱っていたそうですが……。


「私と仲間達は森を探します。お二人は村を探してもらえませんか?」


「わかりました」


 私達の話方ってやはり似ています。私は母の話方を参考にしたのですが母は長さんの言葉を参考にしたのでしょうか? 幼い頃から一緒にいたそうですから。 

 二人は私とティンカさんのような関係らしいのです。


「では私とアルジェさんは村で聞いてみます」


「お願いします」


 ティンカさんが行方不明なんて昔は数度ありましたが2週間は長すぎます。

 もっと早く探してあげればよかったです。妖精王の花嫁選びなんて一世一代のことだろうだから忙しいんだなんてのんびり考えていたのが悪かったのですよ。

 



「ティンカ? いいや来てないぜ」


「オーク、よそ者が外から来たりなどは?」


「いいや……」


 ジュニアスさんが村長の所にいったらオークさんがいました。

 村長はおじい様のところにチェスをしにいったそうです。

 村長が辺境伯とチェスをする田舎なのですよねえ。そこまで狭いと言うか……。


「来たらすぐわかるにきまってる。確かに村人の数は多いが俺達はほぼ顔見知りだから」


「ですよね」


「町からも誰も来てないぜ」


「うーん……」


 ジュニアスさんは今は人型を取ってます。よそから人が来ていたらだめなので念のためです。

 王都からの使者さんのときは誰にも顔を見られずきたみたいでわかりませんでしたが、大概よそ者がきたらわかるシステムなのですよ。

 人以外の種族も多いのでそういうことは敏感です。


「ティンカ、また行方不明なのか?」


「2週間もらしいのです。これは初めてですよ……」


「それは長いな、俺も村でティンカのことを見た人間がいないか聞いてみる」


 オークさんはティンカさんや妖精さんとも顔見知りです。というより村人はみんなそうなのです。

 村と妖精の里は仲良しさんなのですよ。

 しかしティンカさんのことを見かけたと言う人はいませんでした。

 よそから人も来てないということなので、見世物とかにされるために閉じ込めらたという可能性もないのでしょうか? 

 私とジュニアスさんが途方に暮れていると、また小さく【助けて……鉄の箱……】と言う声が聞こえたのでした。



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