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「何がありましたのクリス?」
「移動図書館についての見積をとるために町に出たんだけどさ、親父からの手紙がきていて、どうも王太子というより王がお前を婚約者に戻したいと思っていると噂が王都に流れてるって聞いたって……」
「え?」
「その前に王太子がお前を連れ戻して監禁とか考えていたのかもしれないぜ。もしくはあの女にそそのかされてとか……」
「監禁ですか?」
「どうもあの女、色々とやらかしたらしいぜ」
「は?」
お水が入ったコップを差し出すとごくごくと飲み干し、クリスは息をつきました。でも仲がよいと聞いいていましたが何があったのでしょうかね?
どうもクリスが聞いて来た所によると、まず王妃と王女と喧嘩をしたらしいのです。
すごいですよつわものなのですよ。
「私は無理ですよ。だって怖いですから……」
「すごいよな、取っ組み合いのけんかをやらかしたらしいぜ」
「なぜです?」
「庶民なのに王太子の婚約者になりたいとか身の程知らずとか言われたとかなんとか……」
「私は辺境伯の孫娘で、気味悪い髪と目の色をした変な娘とよくいわれたものですよ」
私があっけらかんと言うと、性格悪いって評判の王家の女どもだからなとため息をつくクリス。
身分が上なので私には言いたい放題でしたね。
しかし我慢してましたよ。だって私が言い返した途端、絶対何か罰を与えてきそうでしたからね!
「それは王太子が何とか誤魔化したらしい」
「他に何かあったのですか?」
「隣国の使者の前で、失態をやらかしたらしい」
「失態?」
「さすがに俺にはわからないが、何か大ごとだったらしいぞ」
もうわけがわかりませんですよ。実際、クリスティーナさんは礼儀作法もろくに知らない人でしたが、おいおい覚えていけばいいとか言われてましたし、なんとかするだろうとか私思っていましたですよ。
「んで、問題が山積でやはり庶民を王太子妃になんてできないってことで」
「私を呼び戻そうとですか? それはないと思います。だってさすがに追放した人をまたなんて……」
「だとしたら?」
「王太子殿が私を監禁というのも微妙です。だって自分大好きな人でしたがそこまで酷いことはしないと思いますよ。クリスティーナさんだって私を監禁してどうします?」
「さすがに消すわけにもいかないから、閉じ込めておくとか……理由も聞かず婚約破棄、追放をするような人間なんだろ? なら監禁もあり得るぞ」
しかしそこまでする人ですかね? 私を監禁してどうします? クリスも首をひねってますから可能性としては低いと思われます。
「これは一つの考えでやはり王がお前を連れ戻そうとしている可能性が大きいな、お前を連れ戻しに来たっていう使者は本当は王からの使いというのはどうだ?」
「考えた所、噂がかなり出回っているというのなら、それも可能性の一つではありますが、王太子といったのが謎なのですよ。王からの使いといえばよかったのでは?」
私はミステリは好きですが、自分が推理するのはいまいちなのです。
クリスのお財布の行方もまだわかりませんしね。
二人で考えてみましたが、やはりわからないままでした。身の回りに気をつけて、後はおじい様に一度を顔を見せに行くと言う事になりましたよ。相談するなら一番やりやすい人というのもありますし、孫娘に会いたいと手紙で泣きつかれたのですよ。
まずなぜ王太子と使者さんが言ったのか? 王が私を連れ戻したいと考えているなら王命でひっぱればいいんです。したくないから秘密裏に何かしたのか?
謎が謎を呼びますね。
私とクリスは探偵さんになれそうもありません。
あーあ、絶対王がお前を連れ戻しにきたか、王太子とあの女のたくらみだと思ったというクリス。
少し短絡的ですよ。
でも王都でかなり私を婚約者に戻したらどうか? という噂が流れているのは確実のようです。
絶対嫌ですよ!
カウンターで次の読み聞かせ会の紙芝居を選びながら私はため息をついたのでありました。