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ふむ、事件というものは突然起きるものなのです。皆さん悪役令嬢アルジェなのです。あだ名ですがね。


 しかしねえ平和な日々にこんなことが起きるとは思っていませんでした。朝起きるとクリスのお財布がなくなっていたのです。いやそれって事件? と聞かないでくださいまし不思議な話だったのですよ。


「あれ、俺ポケットに入れておいたはずなんだが……」


「旅費が全部そこに入っていましたのよね?」


「ああ、確かここに入るまではあったんだぜ」


「むう、落としたという……」


「そうだな、それが一番あり得るな」


 朝起きてきたクリスの話を聞いて、私達は図書館中を探しまわりました。身の回りをクリスが全部探してもありません。

 旅費が入っているので王都に帰れないのですよ困りました。


「見つからないものは仕方ない。親父に手紙を書いて金を送ってもらう。悪かったなアルジェ、ジュニアスさん。探してもらって」


「いいえでもおかしいですね。どこかにはあると思ったのですが……」


 図書館は広いですが、お財布なんて落としていたらすぐわかりますよ。それに私、クリスがお財布を出すのを確かに見たんです。

 趣味が悪い布地なので一目瞭然だったのです。ピンクの財布なんて男の子が普通持ってませんよ。


「うーん、おかしいですね」


 ジュニアスさんも首をひねりましたが、探してないものは仕方ないとクリスは気にするなって言います。盗まれたなどはあり得ないから落としたというのが正しいとは私も思いますが……。

 いえ盗まれたと言う線は……だって私とジュニアスさんはそんなことしませんし、こんな山奥で盗むってあり得ます? しかも本人が嘘をついても仕方ありませんしね。


「親父から金が来るまでここにいてもいいかアルジェ?」


「はい私は大丈夫なのですよ」


「……村に宿屋がありますよクリスさん、私それくらいの宿代はお貸しします」


 ジュニアスさんが渋い顔をしています。珍しいですね彼はすごく親切なのですよ。

 いえ親切だから宿代を貸すというのでしょうか? でも表情が何処か暗いのです。


「あー、それは悪いからいい」


「クリス、では私の図書館改革をてつ……」


「改革ってなんだよアルジェ、改革って……」


 私とクリスの会話を聞いてすごく悲しそうな顔をジュニアスさんはしています。捨てられた子犬さんのようですよ。

 ふうむ、しかしどうして財布がなくなったのでしょう?

 この謎を解いてみたいですが、私の灰色の頭脳では無理そうでした。


「そうですねクリス、図書館に購入するべき図書と……」


「違うだろ、場所がこんなところだからこそどうしたら利用者を引っ張れるか考えるべきだろアルジェ」


 至極まっとうです。私が頷きますとジュニアスさんが私も手伝いますと声をかけてくれました。 

 しかし私はお断りしました。

 あまりにも彼におんぶにだっこし過ぎです。弟さんたちのお世話もありますのに……。

 するとすごくもっと悲しそうな顔になりましたですよ。

 あーう、私何かしたですか?


「お時間がある時に手伝ってくださいです」


「はい……」


 しょんぼりとするジュニアスさん、そろそろお帰りになったほうがいいのでは? と声をかけると肩を落としてとぼとぼと図書館を出て行かれました。

 私やっぱり何かしたのですか? クリスが微妙な顔をしてましたですよ。

 

「お前さ、王太子との婚約が駄目になったんだから次行こうとかかんがえねえのか?」


「次って?」


「お前、結構もてたんだぜ王都にいる時」


「はあ?」


「俺はお前は趣味じゃないけどな!」


「私もそうですが……」


「取りあえず、後で謝っておけよジュニアスさんにさ」


「え?」


「お前鈍いぞ」


 ティンカさんと同じことを言うクリスです。

 私が鈍いって何がですが、教えろといったらお茶を濁すのですよ。ティンカさんもクリスも!

 じと目でこちらを見てため息をつくクリス。

 あーう、どうしていつもこうなのですか?


「取りあえず謝っておけよ」


「はいです」


「しかしお前が恋愛って出来るのはいつの日になるのかねえ」


「彼女さんの一人もいないクリスにいわれたくないですよ!」


「そうだなぁ……」


 私達は幼馴染、彼女さんがいないのは知っています。

 クリスはふうとため息をついて図書館のカウンターに座りました。


「身分の違いがな……」


「はい?」


「俺も色々あるってことだ」


 クリスが元気がないのは久しぶりです。でもたまにこんな顔するときがありました。

 王太子殿との婚約を告げた時などもこんな感じでしたね。

 取りあえず予算の割り振りのやり直しだなと、私が見せた出納帳から見ていくかとパラパラとクリスは広げました。


「クリス元気ないですよ」


「そういう時もあるさ」


 クリスはいつも元気いっぱいです。でもたまにこんな感じの時はあまり突っ込みをいれてはいけないのです。私は横に座り、クリスが指摘をはじめるのを聞いていたのでした。

 

 

 

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