右ゾン4
「ご、ごめん!大丈夫!?」
いくら愛着がわいてきたからって流石にあんな光景を見せられて「おお、家族が増えたんだね!」とか言えるわけがない。
まだ苗床になっているのが見慣れないゴブリンだったからマシだったがあれが人間だったら流石に精神崩壊を起こしてもおかしくないだろう。
俺に殴り飛ばされて床に落ちた魔術書がふわりとまた宙に浮いて俺の元へ帰ってくる、ブメアもあんななりをしていても痛みとかあるのだろうか。
「大丈夫です」
咄嗟の事とはいえ殴り飛ばしてしまったは悪いと思うが相手は空飛ぶ本だ、あんまり気にしなくていいだろう。
「ならいいんだけど、それより勝手に繁殖するって言っても卵からじゃかなり時間かかるんじゃないか?」
俺の魔力で作ると生まれたその時から大きい身体だが卵からとなると戦いに出れるまで時間かかりそうだ。
繁殖で増えるコグモはおまけ程度として考えて、俺は俺で今まで通りモンスターを作っておきたいと言う俺の考えを伝えるとブメアも納得してくれた。
俺達の方針が決まってから小一時間程ほどひらすら座ってコグモを作って居ると。
ドサッ ドサドサドサ!!!
「な、なんだ!?」
突然部屋の出入り口から何かがなだれ込んでくる音がしたので飛び起きて音のする方を見ると、コグモ達が部屋に入って来ていたのだ。
何事かと入って来たコグモ達へ近づくとダンジョン内の壁がぎっしりとコグモ達に埋め尽くされていた、なかなかキモイ光景だ。
どうやら今のダンジョンの大きさに比べてモンスターの量が多すぎたみたいだ、なのでモンスター作成を一時中断してダンジョンの拡張をすることにする。
今のダンジョンの状態は分かれ道が3つあり正解への道に通じているかすぐにいきどまりになるかの二つだ。
分かれ道が数個あるだけでもめんどくさいと感じて「何日かに分けて攻略するか!」となるめたに分かれ道だけを作った居たが、コグモもかなりの数を用意出来たので次は成果の道つまり次の分かれ道までの道と不正解の道も長くしよう。
敵も命を掛けてそこそこの長さの道を歩いた挙句いきどまりで成果が無かったとなると一気にやる気をそがれるだろう。
まぁ一番理想的なのは無理して奥まで進んで死んでもらう事なのだが相手もバカではない、そう簡単に・・・ん?
「なぁそう言えばさ」
「はい?」
俺はあるものをおもいだしてブメアに話かける。
「ダンジョンと言えば定番の宝箱ってないのか?」
そう俺が思いだしたものは前の世界のRPGのゲームだ、この異世界ではどうなのかは知らないが俺がよくやっていたゲームでは宝箱があった。
俺もよく新しい街の武器屋で一番いい装備を買いそろえていざ新エリアのダンジョンに行くと宝箱から同じ物またはさらにいい装備が出てきて苦い思いを下のはいい思い出だ。
しかし宝箱と言う物は魅力的でそれを確かめる為に目に見えている罠があろうとも取りにいってしまうものだ、もしこの異世界でも同じだけの魅力と言う魔力が宝箱にあるのなら設置しない手はない。
「ありますよ」
「やっぱりあるのか!?よし、早速設置しよう!すぐに設置しよう!」
目に見える餌があれば死亡率は格段とあがり敵の死亡率が上がれば俺の入手経験値も増えるだろう、それに今はまだ人間の敵は来てないがもし冒険者などが来るようになれば、宝があった方が知名度も高くなるだろう。
「ただ」
「ただ?」
「宝箱の中身は自分で調達しないといけませんし魔法のエンチャントがされた装備とかになると敵の死体の装備が時間を掛けてダンジョン内の魔力を浴びないと生まれないので今すぐに用意できるものはありません、どうしても今すぐにと言うのならコグモを殺したり先程のゴブリンの素材などを入れるのも・・・・まぁどっちも雑魚モンスターですしコグモに関しては既に敵としてそこらへんに居ますからね」
そう簡単には行かないらしい、宝を自分で買って用意とかもし持ったまま生還されたら俺は大損じゃないか。
これは敵の遺品から勝手に出来上がるのを待ってた方がいいな、今の俺には早すぎる。
俺の天才的なひらめきは無駄に終わってしまったのでダンジョンの拡張に戻る。
先程も言った通り今回することは基本的に通路の延長だ、まず地図を見ながら分かれ道を遠ざける。
それから点と点をつなぐようにぐにゃぐにゃの道を引く。
なぜぐにゃぐにゃかと言うと少しでも進みにくくするのと、弓や魔法の遠距離攻撃でコグモの攻撃距離外からやられないためだ・・・正直に言おう遠距離攻撃の事はブメアに教えてもらったので俺のひらめきではない。
気怠さが増えていく気持ちの悪い感覚に耐えながらダンジョンを拡張していくのであった。