プロローグ~桜の花が咲く頃に~
小説初投稿でいろいろ至らない部分もあると思いますがよろしくお願いします。
更新は不定期です。誤字脱字等ありましたら報告してください。
―あれは1ヶ月前の事―
「転…校…?」
ふと、父親の口から耳にした言葉だった。彼、"小池優樹"は普段からあまり感情を表に出すタイプではないが、この時ばかりは流石の優樹も動揺した素振りを見せた。
季節は冬、優樹はどうにかして家の近くの高校に受かろうと受験勉強で勉強漬けの日々を送っていた。
そんな時に転校なんて…
いろいろと不安はあったものの、通う高校は今の優樹の学力でもなんとかなりそうだった。試験にも無事受かり、やっと平穏な学校生活が送れる……っと思っていた。
優樹達は学校近くの祖父母の家に住ませてもらっているためもちろん家の事は問題は無い。学校までの距離も長くはなく徒歩でも十分始業時間には間に合うほど、しかし問題は今、目の前に居る人物だ。
「優樹?優樹、だよな!?」
そう、目の前に居たのは2年前に転校してしまった優樹の幼馴染みであり、初恋の人……。"糸井真希"だった……。
「い、糸井サン!?どうしてここに!?」
その言葉を聞いて真希はクスリと笑った
その顔を見て一気に顔に熱が上るのがわかる。今の自分の顔は真っ赤になっているだろうと思い慌てて優樹は顔を隠す。
真希は不思議そうな顔をしたあとこう言葉を続けた。
「それはあたしのセリフだって、本当に変わってないね『糸井サン』って呼ぶあたりが特に。」
真希はそう言ってクスクスと笑った。
久しぶりに会って言いたいことは沢山あるはずなのに、こんなところでまた会えた驚きや、また一緒に過ごせる喜びで言葉が出てこなかった。
真希は今までの出来事を話しているがそんなこと頭に入って来なかった。
「なんだか……。」
「ん?どうした?」
優樹はふっと笑ってこう続けた。
「また会えて良かったです。」
優樹がそう言うと真希は一瞬驚いたような顔をしてまたクスリと笑い
「じゃぁ、改めてよろしく!!」
そう、花が咲いたような笑顔で笑った。
「ズルいです……。」
そう優樹が呟いた声は真希には聞こえていなかったらしい。
「こちらこそよろしくお願いします。」
そう言って優樹は歩き始めた、高鳴った胸の鼓動を隠して少しニヤケそうになる顔を引き締めた。
これからの高校生活に期待しながら。
―桜が咲き乱れる通学路をあの時と同じように―