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チーズ!チーズ! 

作者: おれんじ
掲載日:2015/01/12

ぼくの名前はたっくん。

春になったら、ぼくもお隣のさくらちゃんと同じ、ひまわり幼稚園のタンポポ組に入るんだよ。

なんて言ったって、もうすぐぼくは四歳、年中さんになるんだ。

だからね、ぼくはおかあさんに言ったんだ。


「ぼくもなにかお手伝いをしたいって」


でもひどいんだよ、それを聞いたおにいちゃんったらね「チビ助にできるわけないだろ」だって笑うんだよ。

いばりんぼうのおにいちゃんは、いつもぼくに意地悪だ。


「チービチービ。チビだから任務なんて出来ないんだよ」


朝からいつもこんな意地悪ばっかり言うんだもん。

たっくんお姉ちゃんの後ろに隠れた。

お姉ちゃんはそんなおにいちゃんを見て、「たっくんのことが心配なくせになに言ってんの?」そう笑ってお兄ちゃんのおでこをでこぴんする。

フクロウ便で働いてるお父さんにぼくもお父さんのにんむを手伝いたいって言ったら、お父さんは「うーむ。それは難しいなぁ」だって。

お姉ちゃんが言うには、お父さんのはお仕事って言う大切な任務で、おおきくならないとダメなんだって。

だからきいたんだ。


「どのくらいおおきくなったら、おしごとができるようになるの?」


だって、どのくらいおおきくなったらいいのかわからないもん。

おにいちゃんぐらいなのかな?

それともお姉ちゃんぐらいなのかな?

ぼくのお姉ちゃんはせが高いんだよ。

お父さんと同じくらいに高いんだ。

そのお姉ちゃんよりも大きくならないとおしごとって言う任務はできないのかな?

もしかして、てんじょうにとどくくらいなのかな?

そうなっちゃうと、ぼく…お母さんたちをふんじゃうかも。


「違う違う。その大きいじゃなくて、大人になったらなのよ」


下をむいたぼくを見て慌ててお姉ちゃんがぼくに駆け寄った。

お姉ちゃんがいうには、ぼくはまだ幼稚園も行ってないから、大人じゃないんだって。


「お姉ちゃんはおとなじゃないの?」

「違うよ。まだあたしは高校生。聡は中学生よ」


忙しそうにおべんとうをつくっているお姉ちゃんは、いつもピンクのエプロンをつけている。

ちょっぴりえらそうでいばりんぼだけど、いじわるなお兄ちゃんはいつもかみのけをきにしてる。

そんなお兄ちゃんのかみは、らいおんみたいだ。


「たくみ。なら、たくみしか出来ない任務をつくれば良いんだよ」

「たっくんしか出来ない任務? あら、いいわね」


お父さんの提案にお母さんは笑ってた。


「じゃあ、たっくんには特別任務をたのもうかしら」

「とくべつにんむ?」


たっくんが首をかしげると、おかあさんはにっこりほほえんだ。


「そう、特別任務。たっくんにしかたのめないことね」


とくべつにんむ。

なんかとっても不思議な言葉。

お母さんがぼくにしか出来ないことっていうんだよ。それをきいたぼくは目をキラキラさせた。

だって、ぼくだけのとくべつにんむだよ。


お母さんがくれたぼくの特別任務っていうのは、

それはねみんなを起こして、宝物を探すことなんだ。

朝、ぼくはね起きるとおはようの次に合い言葉を言うんだ。

だって、誰が宝物を狙ってるか分からないからね。

まずは白いうさぎさんに。


「おはよう。チーズは?」

「おはよう。探検家さん」


白いうさぎさんは笑いながらたっくんを見送るとどこかへ駆けて行った。


二階にあがったたっくんは、いばりんぼうのらいおんの部屋に行って「おはよう!!」っていったよ。

そしたら、いばりんぼうらいおんが「うー」ってうなってた。

次にキリンさんの部屋に入ろうってしたら、ほかの部屋からモクモク煙と一緒にキリンさんが出て来たよ。

だから、ピンクのタオルをあたまからすっぽりとかぶったキリンさんの顔を見て言ったよ。


「おはよう!」

「おはよう。たっくん。えらいね」


キリンさんはぼくのあたまを大きな手でなでなでしてくれた。


「だって、ぼくのにんむだもん」

「はいはい。そうだったね。じゃあ、もう一つの任務は?」

「いまからだよ」


キリンさんにそう言うとぼくは歩き出す。

今からぼくのたいせつなにんむがはじまるんだ。

ぼくのにんむはね、このジャングルの奥にねむる宝物をさがすことなんだよ。

その宝物はね、みらくるみらくる金のチーズ。

たっくんはチーズがだいすき。

だってね。だってね。チーズを食べると…。


一口食べるとおいしくって目がとろけるの。

二口食べるとしあわせでほっぺたが落ちるの。

三口食べると体がぽかぽかしてくるの。


だけどね。

ぼくの大好きなチーズがないんだ。

落ち込んでなんかいられないよ。

だって、ぼくは探検家なんだもん。


きっとこの上にあるんだよね。

今、たっくんの目の前に見えるのは空まで届きそうなくらいに大きな椅子とサンサンのお日様。

それをジャングルジムを上る感じで、ぼくは椅子の上によじ上るんだ。

上っても上っても、まだまだ上にはつかない。

とうとう空まで見えて来たよ。

やったー! 椅子の上に立ち上がったたっくんは、空色のテーブルを上から見下ろした。


空の上にはフクロウがお皿の上のギョロ目お化けをつつきながら、ぼくを見てた。


「ねえねえ、ぼくのチーズしらない?」

「しらないなぁ」


大きな太鼓みたいな声が返って来た。

ぼくは手を広げると、お空から飛び降りたんだ。

今度はぼくは宝物がたくさん眠っているジャングルに向かったんだ。

きっとそこに宝が眠っているからね。


ここには眼鏡をかけたピンクのキリンとえらそうでいばりんぼのらいおんが宝箱を守ってるんだ。

その中にぼくの宝物はきっとある。

ピンクのキリンや偉そうなでいばりんぼらいおん達に見つからないように、ぼくはそっと宝箱に近づいた。


この宝箱はとっても大きいんだ。

ゾウも入るんだよ。

重くて大きい宝箱の扉を開けると、中には緑怪獣ベジーや四角いウシがうようよ。

ぼくはちょっぴり怖かったけど、泣かなかったよ。

だって、探検家だもん。

たっくんはごくりと唾を飲み込むと怪獣達をやっつけたんだ。

いつもは怪獣達が宝物を隠しているけど、ここにはぼくの宝物はなかった。


「ぼくのチーズしらない?」


フクロウもピンクのキリンも、えらそうないばりんぼらいおんも声を合わせて言った。


「しらないなぁ」

「しらないよ」

「しらん」


泣きそうになったぼくの目の前に、白いうさぎさんが現れた。

このうさぎさんは魔法の袋を出すと、そこからぼくの大好きなみらくるみらくる金のチーズが出て来たよ。


「はい。たっくん、宝物よ」


白いうさぎさんはそう言ってぼくの手に宝物を乗せてくれた。

ぼくがその宝物を頬張ると、さっきまでぼくの目の前に広がっていたジャングルも、空までのびる階段も何処かに行ってしまってた。

あるのは、いつものテーブルとイス、それにフクロウ柄のTシャツを着たお父さんがコーヒーを飲んでいた。


「たくみ、座って食べるんだぞ」


フクロウのTシャツを着たお父さんがぼくをよんだ。

おねえちゃんと髪をキレイにセットしたおにいちゃんが「いってきます」と手を振っていく。

白いコートを脱いだおかあさんがたっくんを抱き上げると椅子の上に座らせる。


「冒険はどうだったの?探検家さん?」


おかあさんに今日探検したことを話したんだ。


「まあ、フクロウとライオンにキリンにあったの?」


するとおかあさんはちらりとコーヒーを飲んでいるおとうさんの方を見て笑ってた。


ぼくの冒険は終わらないよ。

だって、ぼくは探検家だもん。

次の冒険がぼくを待っているんだ。

だからぼくは唱えるの。

不思議な世界へぼくを連れてく呪文を。


「いただきます」



一口食べると目がとろけるの。

二口食べるとほっぺたが落ちるの。

三口たべると体がポカポカするの。


ぼくはね、この宝物の金のチーズがある限り、今日もぼくの冒険は続く。


子供の目線で見ると普通の風景でも、とても大きな物になります。

家族がフクロウやオシャレなキリン、偉そうなライオンに白い魔法使いになって子供の前に出てきます。

家の中の日常が子供にとっては、大冒険になる。

そんな話を書いてみました。

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