狼さんとずきんちゃん
どうしても書きたくなってしまいました。
良かったらハロウィンをお楽しみください。
友人につれられてやって来たのはハロウィンパーティー。
私は赤ずきんちゃんのコスプレをさせられている。
少しでかい公園にみんなで集まって持ち寄りで行っている。
って言ってたわりに業者が入っているらしい。
なんでも、某レストランがオードブルを出していたり某ケーキ屋さんがケーキを出していたりするんだって。
美味しければ何でもいいけど。
某ケーキ屋さんは私が週一ぐらい通うケーキ屋さんだと聞いて来る気になったのは内緒だ。
みんなとお菓子をあげたり貰ったりして、はしゃぎ回って疲れてしまった。
私はこの公園によく散歩にくるからベンチがどこにあるかはよくわかっているのでそこに向かった。
某ケーキ屋さんがこの公園の真横にあるから良く来るのも内緒だ。
目的のベンチは少し奥まった所にある。
ベンチが見えたその時ベンチには人影が見えた。
先客がいる。
よくよく見れば、そこにはリアルな狼の被り物を被った男の人が座っていた。
狼の被り物を被った男の人は私を見ると動かなくなった。
そして暫くすると慌てて立ち上がり私に言った。
「あ、あの、よろしければ隣に座りませんか?」
狼の被り物を被った男の人があまりに慌てていたのが可愛く見えて私は彼の横に座った。
「………自分はかなり不審者のように思うのですか、警戒しなくてよろしいのですか?」
狼の被り物を被った男の人は困惑している。
「貴方は私を殺しますか?」
「め、滅相もない。」
「なら大丈夫です。」
彼は少し黙ってそして言った。
「自分はオオガミと言います。」
「オオカミ?」
「いえ。大きい神と書いて大神です。まあ、名前が狼に似ているのでこんな格好をしているんですけど…狼と呼んでいただいても良いです。今日はハロウィンですから。」
「私もです。私、名前が月って言うんです。つきって響きが頭巾に似てるからって無理矢理赤ずきんちゃんです。」
私が苦笑いを浮かべると狼さんは躊躇いがちに言った。
「あの、ずきんちゃんとお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「はい。良いですよ。狼さん。」
私は思わずクスクス笑った。
狼さんは知識人です。
狼さんの話はとっても面白くて私は時間も忘れて狼さんと話をしました。
「ずきんちゃん、自分は少したべものと飲み物を持って来ようかと思っているのですが………自分はもう少し貴女とお話をしたいので待っていてくれませんか?」
「私も狼さんとお話したいです。」
私が笑うと狼さんは安心したように息を吐いた。
狼さんが席を立つと何だか寂しくなった。
暫く待っていると狼さんが戻ってきた。
手には少し大きめなトレイを持っている。
見ると綺麗にケーキ達が並び、さらにシャンパングラスにオレンジジュースが入ったものがおかれている。
「食べるのがもったいないぐらい綺麗!」
思わずうっとりすると狼さんにクスクス笑われた。
「幸せそうな顔をしていましたよ。はい、どうぞ。」
狼さんはそのままベンチにトレイを置いた。
「狼さんの分は?」
「自分は大丈夫です。ずきんちゃんに食べてほしかったんです。」
私はスプーンにケーキをのせると狼さんにむけた。
「狼さん、あーん。」
「!自分は被り物をしているので。」
「とれば良いですよね?」
私はスプーンをトレイにおくと、狼さんに向き合った。
「………自分は呪いにかかっているんですよ。被り物をとりたければずきんちゃんにキスしてもらわなければ…」
私は躊躇わずに被り物の口にキスをした。
狼さんは狼狽えた形で固まった。
「被り物にキスするぐらいなんて事ないですよ。」
私がそう言うと狼さんは深くため息をついて被り物に手をかけた。
「…俺が物凄く我慢してんのにあんたは………本当に………」
今までとはぜんぜん違う言葉遣いでそう呟くと狼さんは被り物をとった。
狼さんの中はビックリするほどのイケメンが入っていた。
「狼さんが王子様になってしまった。」
私の言葉に王子様になった狼さんは口元を上げた。
「ねえ、ずきんちゃん。キスで呪いを解くと呪いを解いた人と結婚しなくてはいけない呪いがかかるって知らないのかな?」
イケメンの狼さんはそれだけ言うと私の唇に噛みついた。
そこで私は気が付いた。
狼さんは王子様の皮を被った男と言う名の狼なのだと。
狼さんがスッゴク好きです。