女の子?
「おかぁさーん!!さいふー!!」
家の玄関に入って海音は叫ぶ。
するとすぐに足音が聞こえてきた。
「はいはい、どーしたの?」
ただ出てきたのはおばぁちゃんだった。
「おまつりいくのにさいふわすれてた」
「そうかい、それじゃあ少し待ってなさい」
そう言うとおばぁちゃんは居間の方に入っていく。
ほんの数秒でおばあちゃんが出てきた。
「はい、お財布ね」
「ありがと!」
海音は財布を受けとると直ぐに出ていこうとする。
「これ、海音!持って行きなさい」
呼ばれて振り返るとお小遣いを渡される。
「あんまり無駄遣いしたらあかんよ?」
「うん!ありがとう!いってきます!!」
海音は元気に駆け出して行った。
海音は神社に向かって走っていた。
距離的には優希の家より短いから海音の方が先に到着するだろう。
海の方に目を向けると辺りをオレンジ色に照らしていた夕日が沈もうとしていた。
そんな光景の中に一人の影が入る。
その影は他の場所より海に突き出た灯台の元に座っていた。
去年優希たちと釣りをして遊んだ場所だ。
距離はそれなりにあるものの大声で話せば聞こえるくらいの距離だ。
海音は声をかけるか悩む。
なんとなく声をかけてみようかな・・・と思ってしまったから。
少し考えて一歩、近づく。
「おーい海音ー!」
と、背後から・・・神社の方から声がする。
振り向くと優希が走ってきていた。
「おせーよ!ほらいくぞ!!」
そんな風に言って手を引っ張ってくる。
「う・・・うん」
その手に導かれるまま歩きだして少し振り返る。
視線の先・・・灯台の元にはさっきまでいた影はいなくなっていた。