海宝祭2
「さぁー行くぞー!!」
先頭で優希が叫ぶ。
優希の後ろには智也と瑠璃が並んで歩き、その後ろを海音と奈々が歩くという順番で祭りに向かっていた。
「ったく・・・調子いいんだから・・・」
さっきの出来事など忘れたかの様な優希に呆れ顔で呟く奈々。しかし奈々も少し笑っていた。
海音は奈々のそんな顔を見ながら何となく笑ってしまう。
「おい!!奈々!海音!」
いきなり呼ばれ顔をあげると、先頭を歩いていたはずの優希が目の前に仁王立ちで立っていた。
その視線は一点・・・海音と奈々の手に注がれている。
「お前たちはいつまで手を繋いでるつもりだよ!!」
そう言って優希は海音の服を掴んで先頭の方に連れていく。
海音はそれに付いていこうとして奈々と手を離した。
「あ~ぁ、残念」
笑いながらそんな事を呟いて奈々は瑠璃に抱きつく。
そんな光景を横目に海音と優希はまた一番前に戻った。
だんだんと神社が近づいてきたのだろう。浴衣を来た人や家族連れの人たちが増え始め、お客を呼び込むための声も聞こえ始める。
「よーし!全員準備はいいな?」
優希が立ち止まって振り向き呼び掛ける。
「ちょっ、優希!こんなど真ん中で止まんないで!端に寄るよ!!」
立ち止まった優希に慌てて声をかけて優希以外のメンバーを道端に連れていく奈々。
気合い満々だった優希はしぶしぶ後についてきた。
「んじゃあ気を取り直して・・・準備はいいな?」
変わらず大きな声で聞いてくる優希!
周りもそれなりに騒がしいから目立つことはないものの近くの人たちにはしっかり聞こえているのだろう、笑われたりしてしまう。
それでも皆そんなことは気にしない。
「優希!はやくいこーぜ!!」
智也が急かす。
「分かった分かった!全員で花火まで見るんだからはぐれるなよ!」
そう言って優希が前を向き歩きだした・・・かと思うとすぐに立ち止まった。
「うぐっ・・・」
いきなり止まった優希の背中に智也がぶつかり面白い声をあげてうずくまる。
「どうしたの?」
奈々が聞くも優希は反応せず一生懸命にポケットに手を突っ込んだり叩いたりしていた。
そんな優希の行動を見て奈々が口を開く。
「もしかしてだけど優希・・・あんた、財布、忘れたの・・・?」
その言葉に反応して優希がロボットのように重い動きで振り向いた。
「忘れた・・・」
優希の言葉に奈々がため息をつく。
「ちょっと取り帰っくる!」
そう言って走りだそうとする優希を海音が止めた。
「ん?どーした海音?」
「ごめん・・・ぼくも忘れたの・・・」
海音の言葉を聞いた優希はまたフリーズするといきなり笑い出して皆の方を向いた。
「分かった!じゃあ奈々!智也と瑠璃のこと頼むわ!!んで俺と海音は財布取って来てここで待ち合わせしよう!んで奈々たちとは上の本殿で待ち合わせしようぜ!」
それだけ言うと優希は来た道を引き返して走り出した。
「あっ!!優希っ!!」
奈々が呼び止めようとするもさっさと走っていってしまう。
「ったく・・・それじゃあそうしよっか?」
奈々が優希を諦め、海音に向き直る。
「私は待ってていいんだけど・・・」
そこまで言って奈々が少し振り替える。
その先には早く行きたくてウズウズしている智也がいた。
「あんな状態だから先に行ってるね」
「うん!それじゃああとで優希といっしょにいくね!」
そう言って海音も家に走り出した。