勝敗
三人して階段の上・・・本殿の方を見上げる。
そこでは奈々が手を振っていた。
それに優希が手を振り返す。
すると奈々は手を振るのを止め高く手を上げた。
「あの手が降り下ろされたらスタートだぜ!」
優希がそう聞こえるように呟く。
そして奈々の手が動いた。
真っ先にスタートしたのは優希だ。
智也と海音はそれに続くようにスタートする。
「クッソ!!ずりーぞゆうき」
智也が走りながら優希を避難する。
「バカ、ズルなんてしてねーだろーが!」
それに優希が振り向いて反論する。
今は、一番前を優希、次いで海音、最後を智也が走っている。
「よぉ海音!おまえもすこしまてよ!」
「いやだよ」
海音も笑いながら智也に言う。
ただ後ろは振り向かない。
そんなときチャンスがきた。
「うわっ!?!?」
優希がこけた。
「優希!!」
「チャーンス!」
トラブルで海音と智也が前に出る。
智也はそのまま走り抜けていった。
だが海音は立ち止まる、そして戻ろうとした。
「バカ、競争だ!さっさと走れ!!!」
優希に叱咤され海音もまた走り始める。
少しすると後ろから足音が聞こえ始める。
優希も走り出したのだろう。
走り続けて残りが3分の1ほどになった。
ただどうしても智也まで届きそうにない。
(智也はどんな願いを言うんだろう?)
そんな考えが頭にうかんだ。
もう海音には勝つ気がなかった。
この遊びが楽しかったから。
「だっーーー!!」
そんな事を考えていると横を優希が追い越していった。ものすごい速さで。
そしてあっという間に智也に追い付く。
「なっ!?ありえねーよ」
智也も驚き、抜かれないよう走る。
そして海音の目にはほぼ同着で登りきったように見えた。
海音が着いた時には二人は寝転がって息をしていた。
奈々と瑠璃は二人して呆れかえっている。
「どっちが勝ったの?」
海音は奈々に目を向け聞いた。
「んー?勝ったのはね」
「おれだよな?」
智也が飛び起きる。そのまま奈々に詰めよっていった。おれだよな、と繰り返して。
その様子を見ていると横から服を引っ張られる。
そこにいたのは瑠璃だった。
「?」
「・・・優希」
一言だけ瑠璃が話す。
「?」
海音は何を言っているのか分からなくて返事をできないでいると続けて瑠璃が口を開いた。
「・・・勝ったのは優希」
それを聞いて優希の方に目を向ける。
「スゴいよ!優希!すごいぎゃくてんだよ!」
優希に駆け寄る。
「へへっ!どうだ」
寝転んだまま優希は笑ってこちらを見た。