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女騎士は誇り高き

ワイアットは仁義とか人てして最低限は守る物は守るけど基本はクズです、若干性癖暴露します





鉱山町での一件から数日。

再び旅を続けるワイアットとミレイナは、森を抜け、ある小さな町へと入った。


「……流石に、金使いすぎたな。鉱山買収と整備で、報酬ほとんど吹っ飛んだし」

馬上のワイアットがぼやく。


「ギルドに短期登録してはどうです?簡単な依頼であれば、あなたでも対処できるでしょう」

ミレイナが現実的な提案をする。


「お、ナイス!俺にもできる“簡単で楽して感謝される”仕事、探してくるか!」


──というわけで、最寄りの冒険者ギルドへ。



---


【依頼その1:主婦の買い物サポート】


依頼主:30歳主婦

依頼内容:買い物と荷物運びの手伝い

(備考:旦那さんは現在兵役中)


「へぇ、娘さんのお祝いの品ですか!」

ワイアットが笑顔で言う。


「ええ、もうすぐ七歳で……。でも私ひとりじゃ荷物が重くて……本当に助かります」


「いやいや、お若いのにお子さんまでいて頑張ってるんだ、偉いですよ」


「も、もうっ……!こんなおばさんに、そんな……//」


ミレイナは少し離れた位置で、表情を固くしたまま、

買い物袋を黙って持っていた。


(なんですか、あの距離の詰め方は……)



---


【依頼その2:女子学生のストーカー対策】


依頼主:18歳学生

依頼内容:ストーカーの撃退


路地裏で張り込んでいたワイアットは、

ボロボロの男を壁に押し付けていた。


「ずみばぜんでしたぁ!!もう二度と近づきません!!」

震えながら逃げ出す男。


「帰れよ。でも次があったら、“何を失うか”は覚悟しとけ」


依頼主の少女は顔を真っ赤にして、感謝の言葉をかける。


「ありがとうございました……すごく、かっこよかったです//」


「俺は暫くこの町にいるから、なんかあったらまた来なよ。その時はタダでいいよ」


彼女はさらに顔を赤らめて去っていく。


──そして。


「…………」

沈黙したまま、腕を組んで見つめるミレイナ。


「次はこれにしましょう」


【依頼その3:花を探して】

依頼主:10才少女


「え⋯これはやらないよ⋯」

ワイアットはミレイナの意見を却下する


「なぜです?こんな小さな少女が少ないお小遣いでギルドに頼ってるんですよ?」


「俺ロリコンじゃないからそんなメスガキ興味ないわ」

「どクズが⋯」

星空の下、森の外れで焚き火の炎がパチパチと音を立てる。

ワイアットとミレイナは、木陰に作った簡易テントの傍で夕食のスープを啜っていた。


ミレイナが、ふと火を見つめながら口を開く。


「……ある程度、資金も貯まりましたね」

「そうだな、そろそろでっかい勝負もできそうだ」


ワイアットは気楽に答えながら、ピストルの手入れを続ける。

その動作はどこか手慣れていて、静かな夜に金属音だけが響く。


ミレイナは少し溜めて、ぽつりと呟いた。


「それにしても……あなたの女癖の悪さも、大概ですね」


「おや、そんなこと言われるとは心外だね。

俺は困ってる女性には、全力で優しくしてるだけだぜ?」


「“優しく”じゃなくて、“馴れ馴れしく”でしょう」

ミレイナがじと目で睨む。


「いやいや、あれは好意の返報ってやつだよ?

助けてやって、好かれるのは自然の摂理ってもんだろ?」


「はあ……。それでいちいち口説いて、向こうがその気になったら、さらっと次の町へ。

貴方はどこまで不誠実なんですか」


「おいおい、それじゃあ俺がまるでプレイボーイみたいじゃねぇか」


「事実でしょう?」

ピシャリと言い放つミレイナに、ワイアットは肩をすくめた。


「じゃあ、逆に聞こうか。

あんたは騎士として、そういう色恋沙汰とは無縁ってわけ?」


「わ、私は……そういうものに興味がない訳ではありませんけど……!」

ミレイナが少し顔を赤らめながら言い返す。


「おーおー、かわいい反応するじゃん。

やっぱ女の子だなあ、ミレイナ隊長」


「黙りなさいワイアット!!///」

焚き火の火花が一段と大きく舞い上がった。


「……私と、数ヶ月も旅をして……ワイアットは、どうも思わないようですね」


焚き火の赤い光に、銀髪が柔らかく照らされる。

ミレイナの視線は、火ではなくワイアットの横顔に向けられていた。


ワイアットは少しだけ目を瞬かせたあと、妙に軽い口調で返す。


「んー? いや、そりゃあ……」


──言い淀み、気まずそうに頭をかく。


「ミレイナは実際、可愛いよ? 家事も上手いし、

なんだかんだで俺に協力してくれるしさー……まあ、女の子として“点数”は高いよ」


「…………」


ミレイナの目が一瞬、輝いたように見えた。

けれど──

そんな中、ワイアットがふと口を開いた。


「俺さー……やっぱ母さんみたいな、胸がデカい女が好みなんだよなぁ……」


「……………………」


ミレイナのまぶたがピクリと動いた。が、まだ黙っている。


「いや、ほら、母さんってなんかもう、男として理想っていうか、夢っていうか」


「………………」


火の中で薪がはぜた。ミレイナの表情は読み取れない。


だが、ワイアットは気づかない──いや、気づけない。


「だからまあ、ミレイナは……うん、性格は良いし、優しいし、家事も出来るし……すっごい“いいヤツ”だとは思ってるんだけどさ」


「……………………」


「……うん、“いいヤツ”だよ!マジで!」


──その瞬間。


ズドォンッ!!


「ぐえぇっっっ!!?」


ワイアットの顎に拳が突き刺さる


「……“いいヤツ”?」


「ま、待って!?俺なんか間違えた!?俺なにか致命的に地雷踏んだ!?」



「ぶっ殺す!!!!」

この夜、ワイアットの人生で初めて、喧嘩で敗北した


「マザコンでデリカシーの無い男なんて最低です!」



翌日、次の町へ

ミレイナはある日、ふと思い立って“私服オフ”で一人の散歩に出た。


「たまには、戦いを忘れた時間も悪くないですね……

ちょっと、気晴らししてきます、レオノールを見てて下さい」


そう言い残し、ミレイナは一人、町へ出かけていった。


鎧を脱ぎ、軽やかなワンピースに身を包み、

髪をひとまとめにして帽子をかぶった彼女は、まるで別人のような柔らかさを纏っていた。


すれ違う町人が何度も振り返るほど、その姿は美しかった。

町に到着して数日。




町の甘味屋で一息ついた帰り道――


「よぉ姉ちゃん、迷子か?」


「そんな綺麗なカッコしてよぉ」


声をかけてきた男たちは、明らかにタチの悪い連中だった。


「……退いてください。忠告はしましたよ?」


そう、彼女は“強い”。

一人でも、男数人相手に怯むような女ではない。


──バキッ!


──ガシャンッ!


剣こそ持っていないが、格闘術で返り討ちにする。

連中は予想外の反撃に動揺し、あっという間に半数が地面に沈んだ。


「こ、こいつ……ただの女じゃねえ!」


「舐めた真似を……!! 毒針だッ!!」


「……!?」


ミレイナが油断したのはその瞬間だった。


背後から飛んできた小さな針――それが、彼女の首筋に突き刺さる。


「く……ッ!」


脚がもつれ、視界が揺れ、意識が遠のいていく――


「……これだから女騎士ってのは……無理矢理が一番だな」


「へへへ、上物だぜこれは!」


「しばらく“お楽しみ”させてもらおうじゃねぇか……!」


そして、意識を失ったミレイナは、どこかの地下へと連れ去られていった。



---


【数時間後──】


ワイアットは、甘味屋からの帰りに倒れている不良の一人から話を聞き出していた。


「いってぇよぉ……! だ、誰かが攫って……あの女騎士……ッ!」


「場所は?」


「う、裏路地の先の廃屋……ギルドから追放された連中が根城にしてるって噂が……ッ!」


「……そうか」


ワイアットは静かに、しかし着実に2丁の銃を装填する。


「可愛い服で出かけてったんだ、帰り道くらい俺が迎えに行かなきゃな──」



---


【廃屋・地下室】


目を覚ましたミレイナは、手足を鎖で縛られていた。

上着も剥がされ、ワンピース一枚の姿で、背後では男たちが品定めをしている。


「おい、起きたぜ姉ちゃん」


「へへ、こっち来いよ。騎士様のくせに色っぽいな?」


ミレイナは瞳を伏せながら、口角だけを上げる。


「貴様らごときに……!」


脚に残った力で、目の前の男を蹴り飛ばす!


ドゴォッ!!


一瞬で吹っ飛ぶ男。

だが鎖が邪魔で本調子は出せない。


「くっ……あと数秒、毒が抜けきれば……!」


その時だった。


──バン!

──バンバン!!


銃声。

続けざまに倒れていく男たち。


「そいつ俺の友達なんだよ?俺はイジメは好きだがされるのは⋯死ぬ程嫌いでさ〜」


銃口をこちらに向けながら、ゆっくりと現れたのは――ワイアット。


「ワ、ワイアット……!」


「どーも、いいヤツです」


救出後

「面目ありません⋯」


「毒は大丈夫か?」


2人は急いで町を抜け出し、この日は予定変更

廃屋での騒動から逃れた2人は、人気のない森の外れで野営をすることにした。

焚き火の火がパチパチと音を立ててはじける。

空には満天の星。


ミレイナは、焚き火の向こうで黙々と缶詰を温めるワイアットを見つめた。


「ワイアット……」


「ん?」


「……なぜ、私を助けたのですか?」


「は?」


ミレイナの表情は真剣だった。


「私は、あなたの旅に“監視役”として同行していたはず……

それを貴方は、危険を冒してまで──見捨てずに、救ってくれた」


ワイアットはしばし黙り、炎を見つめる。


「……そりゃあお前……」


一拍置いて、ふっと笑う。


「お前はもう“仲間”だからな」


ミレイナの目が揺れる。


「俺はよ、父さんみたいな偉大な勇者じゃねぇし、

旅の目的も立派なもんじゃねぇ。

金と女が欲しくて、好き勝手やってるクズだ」


火の粉がふわりと宙を舞った。


「でもな──

“仲間”は、死んでも守る。

たとえそいつが、俺のこと嫌ってようが、睨んでようがな」


ミレイナは言葉を失った。


思い返せばこの数ヶ月、確かに彼は女たらしで、金にがめつくて、粗野な男だった。

だが、その心の芯にあるものは、確かに「騎士よりも誇り高いもの」だった。


「……ふふ」


「ん?」


「やっぱり貴方は……最低の男です。でも──

ほんの少しだけ、見直しました」


「ありがたいな」


⋯そして早朝、霧が立ち込める森の中。

昨夜の会話の余韻がまだ残る静寂の時間。


ワイアットは焚き火の残り香を見下ろしながら、いつも通り荷物をまとめていた。


「さて、そろそろ行くか……」


その時だった。


「ワイアット⋯」


静かな、けれど凛とした声が背後から響く。


振り向けば、そこにいたのはミレイナ。

彼女は愛馬レオノールから下馬し、ワイアットの前に進み出る。


そして──


「?」


片膝をついた。


深々と頭を垂れ、まるで王宮の謁見のように、彼女は騎士としての最も厳粛な姿勢を取っていた。


「ミレイナ・クロシュノレーヌ、この命、この魂、この誇りこれより全てを、貴方に捧げます」


「は……?」


ワイアットが思わず引く。だが、ミレイナの声は澄み渡っていた。


「私は貴方を、主と仰ぎましょう」


「え、ちょ、ま──」


「貴方が神に逆らえば私は神を斬り捨てましょう」


「お前⋯それ」


「ミレイナ・クロシュノレーヌは、これより貴殿の騎士として──

貴方の剣となり、盾となります。

この身、この心、ただ主ワイアット・クレインに」


ワイアット「…………」


ミレイナが顔を上げた。


「これより私は、貴方の騎士です」


その表情には、これまでに見せたことのない清々しさと、微笑みがあった。


「……まじかよ」


呆れたように笑いながらも、ワイアットは手を差し出す。


「じゃあ……よろしく頼むぜ、ミレイナ。

騎士様がついてりゃ、俺も安心してナンパも悪巧みもできるぜ」


「貴方の進む道ならば、喜んで悪にでもなりましょう、我が君」


「ははっ、それでこそ俺の騎士だ!」


握り合った手に、ほんの少し、熱が宿った。

この辺りからミレイナがメインヒロインらしくなります

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