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ワイアットにとっての理想とは

今回は競馬するか、ヒロインとイチャつくしか無いです

ジャングルを後にした一行は、夜には宿場町へとたどり着いた。

久々にまともなベッドに身を預け、全員がぐっすりと眠りにつく。


――翌朝。

鳥のさえずりと木漏れ日が差し込む中、宿の一室で新聞を広げていたミレイナの手がふと止まった。


「……これは……!」


寝癖をつけたまま、ワイアットがもそもそと起き上がる。

「おー……なんだよミレイナ。そんな目をキラつかせて、また戦か?」


新聞をバサリと広げ、ミレイナはきっぱりと言った。

「いえ、これは──ボーナスです。我が君!」


見出しにはこう踊っていた。

《ナルニア沖・リバル王国》


「うわー♡」


カレンが新聞を覗き込み、顔を輝かせる。

「ジャザールみたいな資本主義国家でしょ? 絶対アタシ向けじゃん〜! 行く!行く〜!!」


エトラも控えめに口を開く。

「リバルって……豪奢なドレスや宝石の輸出で有名な国ですよね。行ってみたいです……」


「南の国ですか!」

アイネスはぱっと顔を上げた。

「イルカ……いますか?♡」


ワイアットはその言葉にぴくりと反応し、にやりと笑った。

「ふむ……ジャザール系か。女と金があると聞けば──行かねばなるまいな!」


「賛成〜!!」

全員の声が見事に重なった。


港へ向かう航路の途中、船のデッキで潮風を浴びながら、ミレイナがふと笑みを漏らした。


「……ふふ、リバル王国──ここなら、“あの計画”も自然に進められる……」


その横顔を、帽子をかぶったままワイアットが怪訝そうに見やる。

「何ニヤニヤしてんだ?」


ミレイナは意味深な微笑を浮かべ、静かに言った。

「ご安心ください、我が君。

あなたが私を“愛してくれた夜”の分だけ……私は、あなたに最高の恩返しを差し上げます」


南の島々に囲まれたその国は、“税金ゼロ国家”と呼ばれていた。

全ての公共サービスは富裕層からの手数料で賄われ、

労働者たちは「働けば働くほど豊かになる」という、夢のような環境で暮らしている。


だからこそ──世界中から社長、実業家、セレブたちが集まり、

国全体が“金”と“快楽”と“実力主義”の渦で回っていた。


入国審査を終え、港湾都市の中心へと足を踏み入れた瞬間──

眩いばかりの装飾と、香水と潮風が混ざった甘い空気が一行を包み込む。


ワイアットは腕を組み、まるで宝の山を見つけた子どものように目を輝かせた。

「……ふふ、いい国じゃねぇか。

税金無し! 女も高収入! ついでに金持ちの財布は緩みっぱなし……!」


その横で、カレンは高級ブランドのサングラスをかけ、街並みに目を奪われている。

「ねえワイアット♡ せっかくだから超高級宿に泊まりましょ〜?

天蓋ベッドにスパに……王族ご用達レベルのやつ!」


「よし! 高級宿とるぞ!!!」

即答するあたり、彼もまたこの国の空気に飲まれ始めていた。


エトラは街角の案内板を覗き込み、柔らかく微笑む。

「スパ付きの部屋、ありますよ。全身美容エステもついてます」


アイネスは両手を胸の前で組み、うっとりとため息をこぼす。

「……夢みたいな国ですね♡」


そしてミレイナは小さく微笑み、誰にも聞こえない声で呟いた。

「ふふ……全て予定通りです、我が君」


ワイアット争奪戦 in 超高級リゾート

──開幕である。



王族御用達のスイートルーム──


天井には金細工をふんだんにあしらった巨大なシャンデリアが輝き、

足元の大理石フロアには、宝石が散りばめられている。


まるで一歩ごとに財宝の上を歩いているような錯覚さえ覚える空間だった。


だが、もっとも眩しい輝きは──

“一夜を共にする相手”を巡り、互いに視線をぶつけ合うヒロインたちだった。


ミレイナは凛とした眼差しを保ちながらも、

ほんのりと頬を染めて一歩前に出る。

「……あなたと同じベッドにいるべきなのは、

日々そばで尽くしている“忠臣”ですわ」



その隣で、アイネスは人間の脚をそっと揃え、愛らしい微笑みを浮かべる。

「ねぇ、今日は……誰と一緒の部屋にしますか……?

わたし、人間になって……頑張ったんですよ……?」



カレンはしなやかに腕を絡め、猫のような甘い声を響かせる。

「ハーイ♡ 当然アタシでしょ〜♡ね〜ワイアット♡いつも一番に尽くしてるじゃな〜い♡」



エトラは顔を真っ赤にし、震える唇から必死に言葉を絞り出す。

「が、がんばって……いっぱいご奉仕しますっ……!

今夜は、ぜ、全部わたしに任せてくださいっ……♡」



その光景を目にしたワイアットは、ニヤリと口角を上げた。

「……おいおい……こりゃあ……最高の国だな……!!」


しかしその後夕暮れ時。

豪奢なシャンデリアの光が差し込むスイートルームで、

ワイアットはソファに体を預け、だらりと寛いでいた。


そこへ、ノックの音。

扉を開けると──ミレイナが、どこか誇らしげな笑みを浮かべて立っていた。


彼女は部屋に入るなり、煌びやかなテーブルの上へ分厚い書類を置く。

「我が君! これをご覧ください!」


ワイアットは気怠げに視線を落とす。

「んあ〜……なんだよ、色気ないなぁ……」

と、次の瞬間、目に飛び込んできた文字に息を呑んだ。


――“リバル競馬”


「……競馬……? …………競馬!?!!」


バンッ、とテーブルが鳴り、ワイアットの瞳が完全に覚醒する。


ミレイナは優雅な微笑みを浮かべたまま、書類の一枚を指でなぞる。

「はい。“リバルターフ”──賞金4億8510万ダストから始まり……

“リバルシーマクラシック”は5億4642万ダスト。

そして、“リバルワールドカップ”に至っては──一着賞金、10億9285万ダスト」


「……!」


これこそミレイナの狙い、騎士ではなく騎手としての誇りを掛けた宣戦布告


「今度は負けません、我が君!」


ワイアットは椅子を蹴るように立ち上がり、拳を握りしめた。

「ミレイナ……やっぱお前、最高だわ……!」


そしてその日の夜

リバル王国、最初の夜。

――人魚姫の恋は、ついに夜へと進む。


スイートルーム。

白い月が差し込むバルコニーから、静かな波音が届いていた。

ワイアットはベッドに腰掛け、グラスを揺らしている。


ノック音が響き、扉が静かに開いた。

そこから現れたのは、透き通るような白銀の髪。

ローブの隙間からこぼれるその輝きは、夜の月光すら霞ませる。


「……こんばんは、ワイアットさん……」

恥じらいを帯びた声と共に、アイネスが歩み寄る。


「お、おう……今日は君が来るとはな……」

少し驚きつつも、ワイアットは目を細めた。


リバル式のナイトドレスに身を包んだアイネス。

肩を露わにした薄布は真珠のように光り、

腰には深いスリットが入り、歩くたびに白い脚がちらりと覗く。


「わたし……どうしても、今日一緒に過ごしたくて……

“あの夜”の海を思い出すたび、胸が痛くなるんです……」

潤んだ瞳で見上げる彼女に、ワイアットはグラスを置いて立ち上がった。


「だから……わたし、今日は人間として──

あなたに“恋する女の子”として、ちゃんと愛されたい……!」


「来いよ」

広げられた腕に、アイネスはそっと飛び込む。

潮風のような甘い香りが、彼の胸元に満ちた。

人魚姫の心は、今夜ようやく“本物の恋”に触れる。


――深夜。


ベッドサイドで、アイネスはワイアットの腕の中にいた。

頬は紅潮し、目元には涙が残っている。

けれど、その顔は満ち足りた笑みで輝いていた。


「……夢みたい……。

あなたの声も、手も、あたたかくて、全部……全部好き……♡」


「お前はな、人魚姫じゃねぇ」

そっと頭を撫でながら、ワイアットは囁く。

「立派な“女”だ。俺が証明した……」



夜が明けた。


波音は少し遠ざかり、港町に静かな朝の気配が広がっていく。

リバル王国の海は碧く光り、金色の街並みが朝日を受けて輝いていた。

財と美の都を、ワイアットとアイネスは肩を並べて歩いていく。


ブランド街。

道の両脇には宝石店や高級服飾店が並び、ショーウィンドウが陽光を反射してきらめいていた。

アイネスはワイアットの腕にそっと絡み、目を輝かせる。


「こんなに綺麗な街……見たことありません♡

あの宝石のお店も、服も、全部キラキラしてて……」


「似合いそうなもんがあったら、何でも買ってやるよ」

気軽にそう告げるワイアットに、アイネスは頬を染めた。


「そ、それって……恋人にするセリフじゃ……♡」


ふたりはそのまま海辺のカフェへ。

アイネスは濃い紅茶と果物のパフェを注文し、幸せそうに微笑む。

ワイアットはその笑顔を眺めながら、ふと心の中でつぶやいた。


(――こいつ、最初は逃げてたのに。

今じゃすっかり、俺の女って顔してやがるな)



その日の午後。

黄金色の陽が差し込むスイートルームで、ワイアットとミレイナが向かい合って座っていた。

テーブルの上には、リバル競馬協会が発行した分厚いエントリー冊子。

各レースの賞金額と過去の栄光が、艶やかな印刷で並んでいる。


「ワイアット、どれに参加しますか?」

ミレイナの瞳は真剣そのものだ。


「そりゃあ……リバルワールドカップだろ」

迷いなく言い切るワイアットの口元には、挑む者の笑みがあった。


「シャザールとほぼ同じ条件ですね。いいでしょう……レオノールもワールドカップにエントリーしましょう!」

ミレイナの声にも熱がこもる。


二人の視線が交わった瞬間、空気が一変する。

あのシャザールカップを制した時と同じ、獲物を前にした猛獣のような昂ぶりが、室内に満ちた。


その時──

バンッ!と扉が開き、見知らぬ男が駆け込んできた。


「ワイアット様! ミレイナ様!」

息を切らせた男は、スーツ姿に金の腕時計を輝かせている。


「……誰だよ?」

訝しむワイアットに、男は深々と頭を下げた。


「お二人に……リバルターフの騎乗依頼を!」


その一言に、二人の目が同時に見開かれる。


「なに……?」


「シャザールカップをワン・ツーフィニッシュしたジョッキーが滞在していると聞きまして!

ぜひ……ぜひ我が陣営で手綱を取っていただきたい!」


部屋の空気が一瞬、張り詰めた。

ワイアットは椅子からゆっくり立ち上がり、口の端を吊り上げる。


「……面白ぇ。こっちは王様レースのつもりで来たが……もう一丁、遊んでやるか」


ミレイナも微笑む。

「では、二冠制覇といきましょう。我が君」


リバルターフG1(1600m)──開幕!!


✦実況ブース

実況アナ(声高らかに)

「さあ!!世界中の競馬ファンの皆さま、お待たせいたしました!

本日は、リバル王国が誇る最高峰ターフの祭典──

《リバルターフ G1》、いよいよ発走の時です!!」


✦解説席

「今回の注目は、なんと言ってもシャザールカップで

ノワールジェネシスとレオノールをワン・ツーフィニッシュに導いた名手、ワイアットとミレイナ!

本日はオーナー直々の依頼を受け、それぞれ別の馬で参戦しています!」


✦パドック

ワイアットが跨るのは漆黒のサラブレッド《ミラージュブレード》。

一方ミレイナは銀灰の名牝シルヴェリオ

互いに視線を交わし、勝負師の笑みを浮かべる。


――ゲートイン完了。

一瞬の静寂。


✦実況アナ

「スタートしました! 揃った! 揃った! 16頭、一斉に飛び出していきます!」


前半600m──

「先頭に立ったのは地元の快速馬サザンクロウ

外から2番手にミレイナのシルヴェリオ、さらに後方の外々をワイアットのミラージュブレードが悠然と追走!」


✦解説者

「ワイアットはいつも通り、ギリギリまで脚を溜める構えですね」


第3コーナー突入──

「さあ残り600! 依然サザンクロウが先頭! 

外からミレイナのシルヴェリオが並びかける! さらに大外──大外から黒い影だ!

ワイアットのミラージュブレード、来たぁぁ!!!」


残り400m!

「ワイアット、全く鞭を使っていない! 手綱だけで馬を押し上げる! 前は二頭並んで──一気に三頭広がった!」


残り200m!!

「抜けた!抜けた!ミラージュブレード、爆発的な末脚! 

ミレイナも必死に食い下がるが、ワイアットの黒い弾丸が完全に前へ!」


ゴール前!!

「ワイアットだ!!ワイアットが先頭でゴールイン!! 

リバルターフG1、勝利はミラージュブレードと──

ワイアットォォ!!!」


✦解説者

「恐ろしい末脚……あれがシャザールを制した男の騎乗です!」


✦ウイニングラン

ミラージュブレードの鬣が陽光を浴びてきらめく。

ワイアットは片手を高く掲げ、観客席からは地鳴りのような歓声が沸き起こった。



ミレイナも馬上から拍手を送る

「流石ですね我が君⋯明日は負けません」




2日目の夜──

リバル王国のスイートルームは、キャンドルの灯りに包まれていた。

窓辺には波の音。潮の香りが、静かに漂う。


そこへ、バスローブ姿で髪を下ろしたカレンが現れる。

普段は元気いっぱいの彼女だが、今夜の瞳はまるで獲物を狙う猫のよう。


「アタシの番、待ちくたびれちゃったわ♡

ワイアット……今夜は覚悟してね?」


腰をくねらせ、挑発的に近づく。

ワイアットは口元を吊り上げ、低く笑った。


「おう。お前が“本気”で来るなら、俺も全力で迎え撃つぜ」


──ベッドサイド。

カレンは情熱と奔放さを隠さず、しかしその奥にある“誰よりも深い想い”を滲ませる。

身体を重ねるたび、普段見せない素直で甘える一面が顔を出した。


「ワイアット……好きにされるのも悪くないかも♡

だって、アタシも──本気でワイアットが好きなんだもん♡」


耳元で甘く囁く声に、ワイアットは彼女の髪を撫でながら答える。


「お前の全部、俺が責任もって受け止めてやるよ」


深夜──

燃えるような夜が終わり、カレンはワイアットの胸の上で安らかな寝息を立てていた。

キャンドルが小さく揺れ、潮騒だけが二人の世界を包み込んでいた。




そしてまた戦う

実況アナ(スタート直前の緊張感)

「さあ!世界最高峰の長距離王決定戦──《リバルシーマクラシック G1》!

芝2410mの戦いが、いよいよ幕を開けます!」


ゲート入り完了──静寂。


✦実況

「スタートしました!!各馬そろったスタート!

おっと……オータムメテオがじわっと、逃げました!ミレイナ騎手、逃げの手です!」


✦解説(驚き気味)

「これは意外!ミレイナ騎手、控えると思いきや、果敢に先手を取っていきましたね。

この馬の持久力を信じての判断でしょう」


――1コーナー。

ミレイナは手綱をやや絞り、無駄に飛ばさず淡々と刻む。

2番手にイーストオーバーのワイアット、3番手以下は団子状態。


✦実況

「1000m通過──ペースは平均的!ミレイナ騎手、落ち着いています!

ワイアット騎手は真後ろで虎視眈々と機をうかがう!」


――向こう正面。

陽光を浴びたオータムメテオの黒鹿毛がきらめく。

ミレイナの姿勢は崩れず、リズムは完全に一定。


✦解説

「このペースなら、後半もしっかり脚を使えます。

ワイアット騎手としては早めに仕掛けたいところですが……」


――第4コーナー手前。

ついにワイアットが外に出し、イーストオーバーが並びかける。


✦実況(熱を帯びて)

「さあ直線!二頭のマッチレースだ!

イーストオーバーが外から迫る!しかしオータムメテオ、まだ余裕がある!」


――残り200m。

ミレイナは馬の首を軽く叩き、合図を送る。

オータムメテオがもう一段階ギアを上げた。


✦実況

「オータムメテオ、突き放した!!

イーストオーバー必死に食らいつくが、もう独走!

オータムメテオこれは逃げ切った──

ゴールイン!!!」


観客は大歓声


✦実況

「ミレイナ騎手、会心の逃げ切り勝ち!

オータムメテオ、見事にリバルシーマクラシックを制しました!」


――ウィナーズサークル。

馬上からミレイナは、戦友のような笑みでワイアットを見下ろす。

ワイアットは笑いながら帽子を掲げ、静かにその勝利を称えた。


夜へ移行する

リバル王国 高級スイート 夜


今日も外は星が煌めく。

ワイアットは広々としたバスルームで、夕食後の一服を済ませ、くつろいでいた。


そこに、ドアをノックする小さな音。


「ワイアットさん……あの……入ってもいいですか?」


ワイアットは少し驚き

「お、おう。どうした?何かあったか?」


入ってきたエトラの姿に、ワイアットは息を呑む。

いつもより少し大胆な、白のネグリジェ──

上品で透けるような薄布、でもエトラの恥じらいが勝って、胸元をぎゅっと押さえている。


エトラは俯きながら

「その……わたし、ずっと我慢してたんです。

ミレイナさんやカレンさんやアイネスさんみたいに……大胆になれなくて……」


「……我慢なんてすんな。来いよ」


ワイアットが手を差し出すと、

エトラは震える手でそれを握り、そっと彼の胸元に顔をうずめた。


「あなたが……わたしを見てくれるだけで、幸せだったのに……

でも、欲張りになってきて……

もっと……触れてほしくなっちゃったんです……」


「お前は可愛い。誰より、いじらしくて可愛いよ──

今夜は、お前の全部を愛してやる」


夜が深まり──

2人はそっとベッドへ。


エトラは何度も恥ずかしがりながら、

でも勇気を振り絞ってワイアットに応えた。


「ワイアットさん……好き、好き……大好きです……♡」

「こんなに幸せでいいのかなって思うくらい……好き……♡」


「今夜は幸せにしてやる。朝になるまで、俺だけを感じてろ──エトラ」


深夜──

ワイアットの胸に腕を回して眠るエトラは、まるで天使のように穏やかだった。






実況ブース

「さあ!世界中が注目するリバル王国の頂上決戦──

《リバルワールドカップ》ダート2000m、いよいよスタートです!」


ゲートが開く。

各馬一斉に飛び出す中、先手を取ったのは海外馬の強豪・デザートブレイザー。

ワイアットのノワールジェネシスは中団外目、ミレイナのレオノールはそのすぐ内側で追走。


「前半1000m通過──59秒台!淀みない流れ!」


向こう正面、ノワールジェネシスが徐々に進出を開始。

その動きに反応するかのように、レオノールもスッと外へ持ち出して並びかける。


「おっとここで──!

ノワールジェネシスとレオノール、ワイアットとミレイナが早くも肩を並べた!」


第4コーナー、2頭がほぼ同時にスパート!

観客席からは大歓声が響き渡る。


「直線に向いた!先頭はデザートブレイザー──しかし外からノワールジェネシス!さらにその外、レオノールも来た!!」


残り200m。

ノワールジェネシスが前に出る!だがレオノールも必死に食い下がる!


「2頭のマッチレースだ!!

ワイアットか!?ミレイナか!?

ノワールジェネシスか!?レオノールか!?!」


残り50m──

鼻面が並び、脚色はほぼ互角。

しかし、ゴール寸前でノワールジェネシスがわずかに前へ!


「ゴーーールイン!!

ノワールジェネシス、ワイアット!!

レオノールとの壮絶な叩き合いをハナ差凌ぎ切った!!」


観客席は割れんばかりの拍手と歓声。

砂煙の向こうで、勝者と惜敗者が互いに笑い合い、軽く手を上げて称え合った。



レース後、満員のスタンドがまだ熱気を残す中、勝利ジョッキーインタビューが始まった。

大歓声に迎えられ、ワイアットは笑みを浮かべながらマイクを受け取る。


「──ありがとうございます!

この勝利は、俺一人じゃなくて……ノワールジェネシス、最高の相棒と掴んだ勝利です!」


観客から「ノワール!」の声援が飛ぶ。

ワイアットは相棒の首を優しく叩き、続けた。


「それから……今日、一番意識した相手がいました」


一瞬、会場が静まる。

視線の先──すぐ隣でレオノールの手綱を持つミレイナが立っている。


「ミレイナ。お前がいたから、俺は全力を出せた。

もしお前がいなかったら、このゴール前の激戦はなかっただろうな」


ミレイナは凛とした笑みを浮かべ、軽く頷く。

「我が君こそ……やはり最高のライバルです」


次の瞬間、二人は観客の前で力強く抱き合った。

騎士としての誇り、仲間としての信頼、そして互いの腕の中に感じる尊敬と友情。


観客席から大きな拍手と歓声が湧き上がる。

その音の中で、ワイアットは静かに耳元で囁いた。


「──お前とは、まだまだ競り合いてぇな」


ミレイナも小さく笑い、答える。

「ええ、何度でも」


二人の影は夕陽に伸び、砂の上で交わったまま、いつまでも離れなかった。

そしてホテルに戻り



「……我が君、入っても?」


「お前から来るなんてな。今日は……勝者の夜だな」


ミレイナの視線は、いつもの騎士のそれではなかった。

強さの奥にある、女の熱──ずっと奥に仕舞っていた欲望。


「ワイアット……もう、我慢できそうにありません。

今夜だけは……誇りも名誉も、全部置いてきました。

ただの“女”として、あなたに抱かれたい──」



「……いいだろ。お前を壊れるくらい愛してやる。

今夜は“騎士”じゃなくて……俺だけのミレイナでいろ」


灯りの落ちた寝室──


重なる唇、ほどけていく衣。

ワイアットの手がミレイナの背中を撫でるたびに、

凛としたその体がびくっと震え、

やがて、ふわりと吐息が漏れた。


ミレイナがいつに無く甘えるように

「あなたの手……熱い……もっと、強く……壊して……私を、あなたのものにして……」


ワイアットは答えず、

ただ全身全霊で彼女を愛した。

何度も、何度も、

理性の境界線を越えながら。


ミレイナは、シーツの中で静かに目を覚ます。

ワイアットの腕の中、ぐったりと体を預けたまま──

けれどその表情は、まるで恋に落ちた少女のように穏やかだった。


「……私、夢を見ていたのかもしれません。

ずっと冷たくて、重い鎧を着ていた私が、

あなたの腕の中で、すべてを脱ぎ捨てて──

ようやく、“女”になれた……そんな夜でした」


ワイアットはミレイナの額にキスをする

「夢じゃねぇよ。お前は今も……最高に綺麗だ」


「……ありがとう。我が君。

いいえ──ワイアット。

あなたの女でいられて……幸せです♡」



リバルワールドカップ優勝から一夜──

港町の朝日が、海面と金の街並みに反射して眩しく輝く。


ミレイナは、まだワイアットのベッドの中にいた。

昨夜の余韻を抱えたまま、鎧ではなく素肌にシーツを纏い、静かにその寝顔を見つめている。


(──勝利も、名誉も、この人の腕の中では霞んでしまう)


ワイアットが目を開けると、ミレイナはそっと唇を寄せた。

騎士としての口付けではなく、一人の女としての、柔らかい朝の口付けだった。


「おはようございます、我が君……

いいえ、ワイアット。昨夜の私を、忘れないでください」


ワイアットは寝起きの笑みで、彼女の頬を撫でる。

「忘れるわけねぇだろ。お前は、俺の中で一番誇り高くて……そして一番、女らしい騎士だ」


ミレイナは、ほんの一瞬だけ照れたように笑い、再びワイアットの胸に顔を埋めた。

その表情は、勝者の誇りと、恋する女の幸せを同時に湛えていた。

そして冷たくも温かい朝が来る


リバル王国


朝日が海を黄金色に染め、白い帆船がゆっくりと波間を進む。

岸壁には、ワイアットと4人のヒロインたちが並んでいた。


この数日間で──金も、名誉も、そしてそれ以上のものも手に入れた。

戦いも、笑いも、夜も、すべてが眩しいくらいに濃かった。


(ああ……最高だったぜ、リバル王国。

 競馬も祭りも、女たちも……全部俺の人生の宝だ)



---


ミレイナは、騎士の顔を取り戻しつつも、視線だけは熱を帯びている。

「……次はどこへ行くのですか。我が君」

ワイアットは口の端を上げ、「さあな」とだけ答える。


アイネスは、潮風に髪をなびかせながら控えめに微笑む。

「……また、海を一緒に見られますか?」

「いつでもだ」──そう言われ、ほんの少し頬を赤らめた。


カレンは、いつもの軽口で肘を突く。

「アンタ、またアタシを口説くつもりでしょ〜?」

「もう口説いたろ」

一瞬黙った後、照れ隠しに「……バカ」と呟いた。


エトラは荷物を抱えてモジモジしている。

「また……わたしも、ついて行っていいですか?」

「お前はもう、俺の仲間だ」

その一言に、彼女は満面の笑みを浮かべた。



---


船のタラップを上がる直前、ワイアットは振り返る。

朝日を浴びた彼女たちの姿は、どこか名残惜しくも、確かに彼の隣に在る。


「……行くぞ。次の楽園を探しにな」


激戦を戦い抜いた疲れも見せず、

ノワールとレオノールは走り出す

理想へ向けて

次回は節目

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