中東の夜空に
今回はボーナスステージ、競馬回です
白い蒸気を吐きながら、巨大な鉄の塊がホームに滑り込む。轟音と共に止まったそれは、この国が誇る最新鋭の鉄道機関──列車だった。
旅を続けるワイアットたちは、次なる目的地へと向かうため、この列車に乗ることとなった。
「これが列車か……」
ホームに立ち、ワイアットは鉄の車体に手を添える。硬質な感触と、どこか油の匂いのする金属臭。それは、彼にとってまるで未知の獣のようだった。
「最新鋭の鉄道機関ですね」
隣でミレイナが感心したように呟く。騎士でありながら教養もある彼女は、こうした文明の利器にも興味を抱いているようだ。
駅員が近づいてくる。
「馬は後方の貨物車両にお願いします」
「ああ、わかった」
ワイアットは手綱を引いて、ノワールジェネシスを貨物車両へと導いた。すでにレオノールの姿もあり、ふたりの名馬は鼻を擦り合わせ、まるで出発の合図を心待ちにしているようだった。
それを見ていたカレンが、手をひらひらと振りながら駆け寄ってくる。
「は〜い♡ じゃあアタシ達も乗っちゃいましょーっ!」
「……私も、列車に乗るのは初めてです」
エトラが不安げに、それでもどこか期待に胸を躍らせるような瞳でワイアットたちを見つめる。
「大丈夫だ。俺たちがついてる」
ワイアットはそう言ってエトラの背を軽く押し、4人は揃って客車の入り口へと足を進めた。
初めての鉄の道を走る旅。それが、新たな出会いと波乱を呼び寄せることなど、まだ誰も知らなかった。
揺れる車窓の外に広がるのは、遥か彼方まで続く金色の麦畑と、たまに見える風車。
ワイアットとカレンは先頭車両のラウンジで騒いでいて、今、この客室には女の子二人きり。
列車が鉄の軌道を軽やかに駆けていく。車窓の外には、風に揺れる草原と遠く連なる山脈が広がっていた。
エトラはカーテンの隙間から景色を眺めながら、ぽつりと呟くように言った。
「……ミレイナさん、ちょっと聞いてもいいですか?」
同じ車両で静かに座っていたミレイナが、読んでいた本から顔を上げる。
「ん? なんでしょう?」
「不思議なんです……ワイアットさんって、いつもお金のこととか、女の子のことばっかり言ってますよね」
小さく頷きつつ、ミレイナは苦笑した。
「ええ、そうですね。いつも下らないことばかり言ってます」
エトラは視線を戻し、遠くの空を見つめた。
「アーネストさんも似たような事ばかりでした⋯⋯、でもアーネストさんとは違う⋯なんだか全然違うって思ったんです。強くて、自信もあって、女の人に囲まれてて……似てるけど、なのに感じるものが全然違いました」
ミレイナは静かに紅茶を一口飲み、カップをソーサーに戻す。その横顔はどこか優しい。
「アーネストは……自分が“選ぶ側”だと思っていました。自分に従う者が正しくて、気に入らない者は見下す。優しい言葉の裏にあるのは、支配と誇示です」
「……ワイアットさんは、違うんですか?」
ミレイナは窓の向こうに目をやる。そこには、自由に駆けていく風景があった。
「ええ、彼は……“選ばれる側”なんですよ。強くても偉そうにしないし、人を屈服させようともしない。むしろ、誰かに認められたくて、誰かを笑わせたくて、だからあんな風にふざけてるんです。時々、信じられないくらい不器用ですけど……」
ミレイナの瞳に、どこか愛しさのような光が宿る。
「でも、あの人は……戦いで一番に前に立ってくれます。痛みも苦しみも、誰より先に引き受けてくれる。だから、ついていこうと思えるんです。……女の子の話が鬱陶しくても、ね」
「彼はエトラにも仲間として認められたいんです」
エトラは目を丸くし、やがてくすりと笑った。
「わたしが認める……そっか。やっぱり、ワイアットさんって不思議な人ですね、でも……やっぱり、女の子は好きなんですよね?」
ミレイナはくすっと笑った。
「それはまあ、否定はしませんけど」
エトラは少しだけ、ワイアットを見る目が変わった気がした。
「よう!女子トーク終わったか〜?」
ワイアットがラウンジから戻ってくる
「もうすぐ次の国に着くぞ」
熱気を帯びた風が砂を巻き上げる。
列車が辿り着いた先は、広大な砂漠のただ中に築かれた一大都市──「シャザール」。
金色のドームに高層の塔、街を縫うように張り巡らされた水路とオアシス。
そのすべてが、太陽の光に照らされて黄金色に輝いていた。
「……すっげぇな、こりゃあ……」
ワイアットは口笛を吹きながら、駅の外に広がる壮麗な街並みに目を細めた。
通りには煌びやかな衣装に身を包んだ富豪たちが歩き、路上には香辛料と宝石を山のように積んだ露店が並ぶ。
一方、建設作業員や荷運びの人々も忙しなく動いているが、その表情にはどこか余裕すら漂っていた。
「この国、ほんとに砂漠の真ん中なんですか……?」
エトラがまぶしげに空を仰ぐ。
「“オイルの神が微笑んだ国”──そんな風に呼ばれているそうですよ。シャザール王の統治下にある独裁国家ですが、その経済力は他国を遥かに凌ぎます」
ミレイナが淡々と説明する。
「この国は、石油の採掘と輸出で莫大な富を築きました。そしてそれを国民に分配することで、誰もが“働けば働くほど豊かになる”という超資本主義の理想を実現しているとか」
「は〜ん、それってさ」
カレンがキラキラした目で街を見渡しながら言う。
「金さえ稼げりゃ、女だって馬だって城だって何でも手に入るってことだよね?」
「……ヤバ。好きかも、この国……♡」
両手を腰に当てて、心底嬉しそうに笑うカレン。
それを見てワイアットは、にやりと笑った。
「働いた分だけ懐が潤う……いいじゃねえか。王様ってのはアレだな、俺と気が合いそうだ」
「気が合いそうって、また妙なフラグ立てないでくださいね……」
ミレイナが呆れたようにため息をつくが、エトラは素直にうなずいた。
「でも……本当に素敵な国ですね。王様も、国のことをちゃんと考えておられるんだと思います」
灼熱の街を練り歩く
ワイアットはすっかり馴染んで観光を楽しんでいた
「いや〜、砂漠ってのも悪くねぇな。空は広いし、金は回ってるし……なぁカレン、俺たちここで一山当てるか?」
「オッケー♡ やろうワイアット!私、砂漠用のビキニも買うからね♡」
エトラは少したじろぐ
「はしゃぎすぎです……」
「あのふたり、調子に乗ると砂嵐に吹き飛ばされますよ」
砂漠の大国シャザール――
そこは、近年稀に見る“資本主義”と“善き独裁”が成立している特異な国家だった。
富を築いた者はより栄え、努力を怠った者は砂に沈む。極端とも言える仕組みはしかし、この国に繁栄と秩序をもたらしていた。
街には煌びやかな建築と列車の線路。
そして、今――ワイアットたちは、そんな“金で夢が叶う”国の夜を味わっていた。
天井には本物の金貨を敷き詰めたモザイク装飾、
壁一面には富豪や英雄の肖像画。
踊り子たちは水着で笑顔を振りまき、巨大なルーレットと金貨のダーツが景気よく回る。
この酒場……いや、“金色の社交場”は、まさに《貧乏人お断り》の世界だった。
──テーブルの上。
黄金の皿に山積みにされた高級料理。
開けた酒瓶からは、芳醇すぎて逆に酔いを覚ますような香りが立ち上る。
「よーし!この一番高いやつくれ!飲んだら明日三倍働くってことでよぉ!」
ワイアットが笑いながら杯を掲げる。すでにかなり上機嫌だ。
「ギルドの報酬が煙みた〜い♡もう、どうにでもなぁれ〜♡」
その隣では、カレンも頬を赤らめながら両手を広げて豪快に笑っていた。
投げられた金色の紙吹雪が、二人の上に降り注ぐ。
どうやらすっかり、二人とも“シャザール色”に染まってしまったようだった。
「ミレイナ!エトラ!こういう夜くらい派手にやれよ!命は一度だぜ!」
ワイアットが笑いかけると、
「ワイアットの奢りだよぉ〜♡」
カレンが彼の腕を組みながら、ちゃっかりと宣言した。
──しかし。
「……はしゃぎすぎです。こんな金があるなら、装備のメンテに回したいくらいですよ……」
ミレイナはため息混じりにグラスを揺らし、少しだけ眉を寄せていた。
「……わたし、どうしても……こういう空気、慣れなくて……」
エトラは端の席で、手元の飲み物を両手で包むように持ったまま、小さな声で言った。
陽気な音楽、笑う踊り子、弾ける紙吹雪。
誰もが金を使い、酒に酔い、夢に踊る。
──けれど、二人はその輪に入ることができなかった。
その時だった。
グラスを口に運ぼうとしていたワイアットがふと、エトラに視線を向けた。
陽気に笑うふりをしているが、その目元は少しだけ寂しげに見えた。
「……」
そっとグラスを置くと、ワイアットは静かに立ち上がる。
騒がしい音楽の中、酔客の隙を縫ってエトラの元へ歩み寄る。
「……エトラ、ゴメンな、お前酒強くないなら無理しなくていいぞ。砂漠の夜は長いんだ」
「え……あ、はい……」
優しく告げられたその言葉に、エトラは一瞬、目を見開いた。
それから、ほんの少しだけ笑みをこぼす。
──賑やかな夜の片隅。
金に塗れたこの国でも、優しさはちゃんと息をしている。
風が揺らしたカーテンの隙間から、月明かりが差し込んでいた
ワイアットはカレンと豪快に踊り明かし、
エトラとミレイナは、やや疲れた顔で酒場を後にする。
でもその背中には、どこか温かい余韻があった。
エトラの心の声
(……あの人、どんな時もちゃんと見てくれてる)
翌朝。
夜の狂騒も醒めやらぬ中、ワイアットたちはいつものように朝の食堂でのんびりと朝食をとっていた。
焼きたてのパン、スパイスの効いた卵料理、濃厚なバター茶。さすがは富豪の国だけあって、朝から豪華だ。
──しかし。
その空気が一変したのは、一面に大きく踊った見出しを見た時だった。
《王宮競馬、開催決定! 第7回 シャザールカップ》
《1着賞金──15億ダスト》
《2着賞金──5億ダスト》
《3着賞金──2億9000万億ダスト》
登録馬募集!
「……なんだと!?」
新聞を見ていたワイアットが思わず立ち上がった。
その視線は真剣そのもので、冗談も色気もなかった。
それに勘付いたミレイナが
「王宮競馬ですか〜、私も参加しようと思っていますよ、ワイアットも出たいんですか?」
「!?」
ミレイナの雰囲気がいつもと違う、今まで1年近く共に旅をしてきた中で向けられた事の無い“闘気”
ワイアットもそれを感じとり発する
「ミレイナ、お前とはいつか決着をつけなきゃいけねぇと思ってたんだよ。ノワールとレオノールでな」
「……意外ですねぇ、我が君。私も同じことを考えておりましたよ」
ミレイナは優雅に紅茶を口にしながら、いつも通りの涼しい笑みを浮かべる。
「私、生まれてこの方──乗馬で負けたことはありませんので」
二人の視線が交錯する。
宿の窓辺では、ノワールとレオノールが草を食みながら、何かを感じ取ったように一瞬ぴたりと動きを止めた。
「よーし、決まりだな」
「ええ、全力で潰しに参ります」
かくして、恋も戦も一旦お預け。
ここに来てまさかの“決戦”が幕を開けることとなった。
カレンとエトラ
「あ〜あ⋯なんかのスイッチ入っちゃった」
「2人ともお馬さん好きなんですね」
シャザールカップ
灼熱の陽が照りつける王都ジャザールの競馬場。
真っ白な大理石と黄金の装飾が並ぶスタンドには、世界中の貴族や富豪、冒険者たちが詰めかけていた。
その華やかなコースの裏、検量室には、今まさに準備を終えたばかりの2頭の名馬と2人の騎手の姿があった。
◆ ワイアット陣営 ◆
「よし、ノワール。見せてやろうぜ……“本物の馬”ってやつをな」
ワイアットは黒光りする愛馬ノワールジェネシスの首元を軽く叩いた。
その青鹿毛の巨体は、見る者すべてを威圧する迫力を持ち、
なにより──全身の筋肉が弾けるように躍動していた。
「臀のハリも良し、反応良好……うん、ノワールちゃん今日イケてる♡」
隣ではカレンが真剣な顔でノワールの状態を確認していた、その姿は完全に調教師そのものだった。
「ワイアット!スパートかける時にズレたら命取りだよ!」
「あぁ、信じてるぜ!」
2人と1頭はまさに一心同体──
豪脚一閃、ノワールの怪物スペックが、今まさに砂を裂く刻を待っていた。
◆ ミレイナ陣営 ◆
一方、別の馬房。
そこにいたのは、女騎士とまるで王家の愛馬のような気品を放つ芦毛の名馬──レオノール。
「……準備は万端です。我が君。今日は、正々堂々と決着をつけましょう」
ミレイナは小さく愛馬のたてがみを撫で、静かに目を閉じる。
乗馬術においては、彼女こそが王国随一。その技術は、剣の冴えと同等の磨きがかかっていた。
「レオノール……誇り高く、美しく、誰よりも速く」
その後ろでは、エトラが両手を胸に添えて見守っていた。
「ミレイナさん、がんばってください……!」
緊張と不安が入り混じる中、エトラの小さな声援が、ミレイナの背をそっと押す。
――気高く、冷静に、ただ速さのみを追い求める女騎士。
王国の格式と技術の粋を集めたその姿は、誰よりも美しかった。
こうして、運命のレースはまもなく開幕を迎える。
勝つのは、怪物の如き青鹿毛か──
それとも、誇り高き芦毛の名馬か。
熱狂と興奮が渦巻く王都シャザール
15億ダストを賭けた、世界最高峰の競馬が、今始まろうとしていた。
砂嵐が巻き上がる巨大競馬場。
王国ジャザール最大の歓楽都市、その中心に構える神殿めいたスタンドに、観客たちの狂熱が渦を巻いていた。
「さあ諸君ッ!! 本日! 我が王国が誇る夢の祭典――!」
場内に轟くのは、金色のマイクを握った名物実況アナウンサーの絶叫だ。
「栄誉も富も! 愛も名声も! この瞬間に詰まっていると言っても過言ではない! その名もシャザールカップッッ!!」
「優勝賞金は15億ダスト! 世界のどこを探しても、これほど破格な一戦は存在しないッ!」
「今まさに、スタートゲートが開かれようとしている!!」
出走表には錚々たる名が並ぶ。 伝説の種牡馬を祖に持つ貴族馬。 闘技場帰りの戦馬。 名門厩舎のエリートサラブレッド。
そんな中に混ざって異彩を放つのは──
「さあ、今年は注目の国外から参戦が二組!」
「まずは青鹿毛の魔獣級牝馬、ノワールジェネシスを駆る冒険者ッ!」
「ワイアット・クレイン!!」
「うおおおおおおおおおお!!」
観客席が割れんばかりの声援に包まれる。
粗野な格好ながらも、鋭く研がれた眼光と精悍な笑み。ノワールの鼓動とシンクロし、騎手と馬が一体化していた。
そしてもう一人――
「王国より来た麗しき女騎士!」
「誇り高き銀槍!ミレイナ・クロシュノレーヌッ!!」
「ミレイナ様ああああああ!!」「うおおおっ!!女騎士ーッ!!」
芦毛のレオノールと並んでスタートラインへ進むその姿は、まさに戦場へ赴く騎士
二人は互いに目を合わせることはない。
すでに勝負は始まっていたからだ。
「まもなくッ! ファンファーレの合図とともに、夢のゲートが開く――!」
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観客席・VIPスタンドにて
白い日除けの下、金の双眼鏡を片手にド派手な衣装で決め込むカレンと、
緊張でそわそわしてるエトラ。
砂塵を巻き上げて走るノワールとレオノールの姿!!
「来たわ来たわ~~ッ!!ノワール一着、レオノール二着の馬単で5万突っ込んだのよ!当たったら明日から別荘暮らしよ!!」
「そんなに!? だ、大丈夫ですかカレンさん!? あ、わたしは……あの……」
(ポケットから取り出す、ひっそり買った馬券)
エトラ「ワイアットさんとミレイナさんの馬連にしました……ふたりとも、頑張ってください……!」
「うわ~~エトラ、完全に恋する顔♡“どっちかが勝てばいい”って願い方、マジでピュアだわぁ~♡」
「ち、ちがっ……そういうわけじゃっ……!」
王都の歓声が最高潮に達した。
そして場内に響く、壮麗なるファンファーレ!
巨大競馬場に響き渡るゲートが開く轟音。
その瞬間、砂漠の大地を蹴って各馬が一斉に飛び出した!
「ダート2000m!世界最高賞金!
シャザールカップ、いよいよスタートッ!!」
「各馬揃ったスタート!内から逃げたのは──1番、アラバスタークロー!!快速の逃げ馬!!」
砂を蹴り上げて、先頭を奪う。
しかし、そのすぐ横を──
「続いて2番手追走!注目馬!青鹿毛の馬体のノワールジェネシス!!」
「ワイアット!愛馬との一体感!!」
「ぐんぐん加速していくッ!!逃げ馬のアラバスタークローに続く!!」
「最初のコーナー手前!各馬が観客の前を通過!」
観客が沸き立つ
「依然先頭はアラバスタークロー!!」
「怪物牝馬ノワールジェネシスは2番手!!」
そして
「対するレオノールは現在──中団ッ! 7~8番手あたりを追走しています!」
「だが焦りはない!完璧な手綱さばき!ミレイナ、冷静にペースを読んでいる!!」
芦毛の気高き馬体が、美しいフォームで集団をすり抜ける。
「これは中団待機策か!? レオノールは末脚勝負に賭けているッ!!」
「前半1000m通過!!早いペースで行っている!!おっと!?ノワール動いた!!まさかここで先頭に立つのか!?早くもノワールジェネシスがアラバスタークローを捕まえた!!」
(来いよ!ミレイナ!)
レオノールも早仕掛け
ノワールジェネシスを追う
「レオノール猛追!レオノール猛追!2番手に付けた!最終直線に入った!ノワールジェネシス逃げる!ワイアットの鞭が飛ぶ!!リード半馬身!!レオノール捕らえるか!?凄い脚ッ!異次元の末脚ッ!!残り100ッー!!」
「先頭は依然──ノワールジェネシス!!青鹿毛のが砂煙を切り裂く!!」
「逃げるッ! 逃げるッ! ワイアットとノワール! このまま逃げ切るのかァァッ!!?」
脚色は衰えない。むしろ加速している。
ノワールの筋肉が波打ち、地を蹴るたびに、馬場に衝撃が走る。
「ノワールかァァ!?レオノールかァァァァ!?」
勝負は最終局面。
ノワールの脚が一瞬だけ揺らいだ──かに見えた、その刹那──!
「ラストスパート!! 異次元の逃げ切り脚ッッ!!!」
「真横まで迫ったレオノールのハナ差──ノワールが、振り払った!!」
「ゴォォォォォォォォォールッ!!!」
「勝ったのはァァァァ!! ノワールジェネシス!!ワイアット・クレインだァァァァッ!!!」
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場内は熱狂の渦に包まれた。
ノワールジェネシス一着、レオノール二着
勝者と敗者──だがそこに悔しさも怒りもない。
ミレイナは風のように駆け抜け、ゴール後にゆっくりと馬を止めた。
「……やられましたね、我が君。
でも――素晴らしい走りでした。あっぱれです」
VIP席ではカレンとエトラが肩を組み歓喜する
「っしゃああああああ!!大金ゲットォォォ!!10倍馬単ォォォ!!人生バブルううう♡」
「ふふ……おめでとうございます、ワイアットさん」
優勝賞金20億ダスト+カレンとエトラの馬券を得たワイアット一行!次の日まで遊び尽くした!
しかし途中2人は店を抜け出し、外で余韻に浸る
「お見事でしたワイアット⋯流石我が主!」
「ミレイナ⋯」
ワイアットがミレイナを抱きしめる
「ワイアット!?」
「いや〜、やっぱりお前最高だわ⋯、こんなに楽しい事はねぇよ」
ミレイナも腕を回し微笑み返す
「⋯ふふ、お褒めに預り光栄です、では我が君⋯褒美を頂戴してもよろしいですか?」
「勿論、なんでもいいぞ」
ミレイナは少し照れながらワイアットを見つめる
「今夜は朝まで私だけを愛して貰っていいですか?」
ワイアットは、一瞬言葉を失い、
それから静かにうなずいた。
「……ああ。今日はお前しか見たくない」
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二人の手が重なり、
月明かりの下、そっと唇が交わされる。
騎士としても相棒としてでも無く
この夜、ミレイナは初めて“女としての報酬”を手に入れた。
そして朝が来るまで、
彼女の騎乗技術とは別の意味で、最高の競演が繰り広げられたという。
薄いカーテン越しに、黄金の朝日が差し込む。
窓の外では噴水が踊り、遠くでファンファーレの音。
ベッドの上、静かにまどろむ二人。
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「……ワイアット、おはようございます」
薄紅に染まった頬で、少し照れたように。
「おう、おはよう。昨日は……めちゃくちゃ可愛かったな」
「ば、馬鹿……!」
そこにノックもせず突撃してきたのは――
ドアバァン!
カレンがニヤニヤ顔で乱入
「あ〜〜〜〜〜!? 昨日全然戻ってこないと思ったら!ちょっとぉ〜!アタシも混ぜろってのォォ!!」
カレンがベッドに降ってくる
「ちょ、やめなさ――ッ!グェ」
その後ろからそっと顔を出すエトラ、表情は苦笑い
「あの……わたしは、ちょっと怖いので……えっと、遠慮しておきます……」
「朝から騒がしいな!でも、なんかそれが一番嬉しいわ!」
詳しい人は気付くかもしれないですがノワールのモデルはクロノジェネシスです




