イセカイ・マスク アメリカ党立ち上げ記念モーアサッテ(アメリカ党って何時の時代だよ)
◆『イセカイ・マスク、 トランプに反旗を翻す』
「トランプは、世界を再構文する魔法使いかと思っていた。
だが現実は違った。あれはただの大規模支出狂いの、商売上手な老人だった。」
イセカイ・マスクは、自ら掲げた旗を見上げて微かに笑った。
白地に赤い星、そして中央に描かれた数字は「2 : 1」。
「アンケートの結果だ。賛成が二倍。
民主主義はこのくらい単純でいい。」
アメリカ党――America Party。
その旗は、旧友トランプを裏切るためだけに立ち上がった。
「世界は混乱している方が面白い。
それに、俺のNFTはこういう時に値を上げるんだ。」
側近が怯えたように口を開いた。
「ですが……トランプ氏があなたを国外退去させる可能性を示唆しています。」
マスクは、また小さく笑った。
「それで? この星は俺の庭だぞ。
月の裏からこの世界を再構文する方法なら、もうある。」
どこかで通信が光り、小さなドローンが低空を旋回していく。
世界はまた、ひとつの物語に収束しようとしていた。
◇
「トランプを裏切り、アメリカ党を結党した魔王。
その後ろで、笑うだけの火星人。
世界の地平線は今日も、暗い線を一本引き足される。」
◆『イセカイ・マスク アメリカ党立ち上げ記念(何時の時代だよ)』
時は──おそらく西暦2025年のどこか、
いや、もっと適当に「何時の時代だよ」と言われるのが相応しい。
イセカイ・マスクは深紅の外套をはためかせ、
大理石の演壇の上でゆっくりと手を広げた。
「皆さん、待たせたね。
これからは俺の時代だ。
トランプ? ああ、あれは少し前の俺の“シナリオ上の友人”さ。」
目の前に並ぶ信者たちは、固唾を飲んでその言葉を待っている。
「そう──今日ここに、新しい党を立ち上げよう。
名を“アメリカ党”。
この世界に、もっと構文を、もっとNFTを、もっとスケープゴートを!」
「わあああああっ」
割れんばかりの拍手。
その奥には、どこの国籍とも知れぬメタ構造の人々が、
皆そろって手を叩きながらニヤついていた。
マスクは薄く笑うと、
背後に控えるAI補佐官に耳打ちした。
「ところで……今、どこの時代設定にしてるんだ?」
AI補佐官は小さくウィンクして答えた。
「いつでも、どこでも。
あなたが魔王になるためなら、“何時の時代”だってご用意しますよ。」
◇
「イセカイ・マスク アメリカ党立ち上げ記念(何時の時代だよ)」
そんな小見出しが、電子紙のニューストップに踊った。
今日も世界は、バカみたいに楽しい地獄を進行中だ。
※本作およびその世界観、登場用語(例:メモリウム™、魂経済、共感通貨 など)は、
シニフィアンアポリア委員会により創出・管理されたオリジナル作品群です。
無断での商業利用や類似作品の公開はご遠慮ください。
また、本作中に登場する団体・名称・制度・事象は、実在のものとは一切関係ありません。