俺、天使からスキルについて聞く
目の前にいるのは、俺が転生する前に出会った天使。
彼女は美しい金色の髪を持ち、柔らかな微笑みを浮かべていた。
「ようこそ、再びこの空間へ。」
「……またお前か。」
俺は慎重に言葉を選びながら、天使リュミエールを見つめた。
「ここはどこだ?」
「神の領域の一部、と言えば分かりやすいでしょうか。あなたが私に祈ったことで、意識がこちらに飛ばされました。」
「そんな簡単に飛ばされるのかよ……」
俺はため息をつきながら、今の状況を整理する。
「つまり、俺がこの世界でお前に何か関係してるってことか?」
「ええ、その通りです。あなたに授けたスキル『全知全能』は、私が特別に選定したものですから。」
「……やっぱりな。」
転生してからずっと違和感があった。
俺の持つスキル、『全知全能(ただし使い方は自分で調べろ)』。
一見すれば最強に思えるが、実際は『検索して答えを得る』ことしかできず、しかもその内容が実用的とは限らない。
「このスキル、本当に全知全能なのか? 俺が使ってみた感じだと、ただの情報検索みたいなもんだったんだが。」
リュミエールは少しだけ考え込み、それから静かに口を開いた。
「あなたが使いこなしていないだけです。」
「……どういうことだ?」
「『全知全能』は確かに強大なスキルですが、それは単なる『答えを検索する』だけのものではありません。」
俺は眉をひそめた。
「じゃあ、どういうものなんだ?」
「このスキルの本質は、あなたが世界の真理にアクセスできる力を持っているということ。そして、あなた自身がその答えを引き出せるかどうかにかかっています。」
「つまり、俺の使い方次第ってことか?」
「ええ。今のあなたは、まだ表面的な部分しか使えていません。」
リュミエールは手を軽く振ると、俺の目の前に光の板が浮かび上がった。
「これは……?」
「あなたのスキルの構造を可視化したものです。」
光の板には、複雑な魔法陣のような模様が描かれていた。そして、中央には 『全知全能』 という文字が浮かんでいる。
「このスキルには段階があります。今、あなたが使っているのは 『検索』の機能だけ です。しかし、本来このスキルは 『予測』 『創造』 『干渉』 という段階へと発展させることができます。」
「……待てよ。」
俺はその言葉に引っかかった。
「つまり、俺がこのスキルを極めれば、ただの情報検索だけじゃなくて、未来を予測したり、何かを作り出したり、さらには世界に干渉できるようになるってことか?」
「そういうことです。」
リュミエールは微笑みながら頷いた。
「しかし、それらを使いこなすためには、あなた自身の理解力と精神力が必要不可欠です。今のあなたは、まだスキルの根本的な使い方を学ぶ段階にあります。」
俺はしばらく考え込んだ。
(確かに、今までは検索するだけで満足していた。だが、もしこのスキルをもっと深く理解できれば……)
「具体的に、どうすればこのスキルを進化させられるんだ?」
「まずは、あなたの『思考力』を鍛えることです。」
「思考力……?」
「『全知全能』は、あなたの思考が直接影響を及ぼすスキルです。考える力がなければ、適切な答えを引き出せませんし、応用することもできません。」
リュミエールはゆっくりと手をかざし、俺の額に指を当てた。
「今から、あなたに基本的な訓練を施しましょう。」
次の瞬間、俺の意識は暗転した。