俺、やっぱり弱い
「やっぱり逃げろ! ……じゃねぇよ!!」
全知全能のクソ検索結果にツッコミを入れる間もなく、ダークウルフが迫ってくる。
「くそっ、こうなったら——」
俺はその場でクルッと反転し、全力で逃げた。
「助けてください!」
「俺が助けてほしいんだけど!!!」
俺の叫びが森に響き渡る。
ダークウルフは俊敏で、俺のすぐ背後まで迫っていた。
(やばい、追いつかれる!! どうする!? どうする!?)
俺は必死に『全知全能』を発動し、「この状況から生還する方法」を検索した。
【全知全能発動】
——『この状況から生還する方法』を検索中……
——検索結果:木に登れ。
「おおっ! それならいける!!」
俺は全速力で近くの大木に駆け寄り、思い切り飛び上がった。
——バキッ!!!
「え?」
枝が折れた。
次の瞬間、俺は勢いよく地面に叩きつけられた。
「いったぁぁぁぁぁぁ!!!」
(何だよこれ! 俺、逃げるのすら下手すぎんか!?)
「大丈夫ですか!?」
少女が心配そうに近づいてきた。
「いや、全然大丈夫じゃねぇ!」
俺の背後ではダークウルフが飛びかかる準備をしていた。
「うわああああ!! 誰か助けてえええ!!!」
俺は反射的に『全知全能』を発動し、「この状況を打開する奇跡のような方法」を検索した。
【全知全能発動】
——『この状況を打開する奇跡のような方法』を検索中……
——検索結果:魔法を使え。
「俺、魔法使えねぇんだけど!!!」
「いえ、あなたならきっとできます!」
少女が意味不明な励ましをくれるが、そんな余裕はない。
(くそっ、どうする!? どうする!?)
「お、おい全知全能! 俺が今すぐ使える魔法、何でもいいから検索しろ!!」
【全知全能発動】
——『今すぐ使える魔法』を検索中……
——検索結果:『初級火球』を詠唱せよ。
「マジか!?」
俺は即座に詠唱を試みた。
「……えーっと、ファイアボール!!」
——ボフッ!
小さな火の玉が、俺の手のひらに出現した。
「おおおおおお!! 俺、魔法使えた!!」
その瞬間——
——ボフッ
火の玉が俺の手のひらで弾けた。
「ぎゃああああああああ!! 熱い熱い熱い!!!」
俺は地面を転げ回る。
(何だこれ!? 俺が燃えてどうする!?)
ダークウルフは「何だコイツ……」と言いたげに俺を見ていた。
「はぁ……はぁ……」
「だ、大丈夫ですか?」
少女が俺の手を取ってくれる。
「いや、全然大丈夫じゃねぇ!!!」
その時——
——ズバァンッ!!!
突然、ダークウルフが宙を舞った。
「え?」
気づけば、一人の男が立っていた。
長い黒髪に鋭い目つき。重厚な鎧を身にまとい、大剣を携えている。
「お、お前は……?」
男は俺を見下ろし、低い声で言った。
「通りすがりの冒険者だ。」
「かっけぇ!!!」
その後、彼は手際よくダークウルフを倒し、俺と少女を救った。
「助かった……マジで……」
俺は地面にへたり込んだ。
(俺、もしかしてスライムよりも弱いのでは……?)
こうして、俺はまたしても他人の力で生き延びるのであった。