表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

チートスキルの使い方がわからない

「……とりあえず、落ち着け俺」


深呼吸をしながら、自分の状況を整理する。


現状


1. 異世界に転生した



2. チートスキル「全知全能」を持っている



3. しかし、スキルの使い方が分からない



4. 説明してくれる人がいない



5. 異世界とはいえ、見渡す限り草原で町らしきものはない



6. 腹が減った




「……うん、わりと詰んでない?」


チートスキルがあるとはいえ、使えなければただの凡人。いや、むしろチートが使えない分、普通の人よりタチが悪い。


「とりあえず、スキルの発動方法を試してみるか……」


俺は両手を広げて、それっぽいことを言ってみた。


「スキル発動!」


……何も起こらない。


「じゃあ、『全知全能、発動!』」


……沈黙。


「スキル……オン?」


無反応。


「おいぃぃぃぃ!!! どうやって使うんだよこれ!!!!」


その瞬間、俺の頭の中に機械的な声が響いた。


『スキルの発動方法を知りません』


「知れよ!!!!」


『スキル『全知全能』を使えば発動方法を知ることができます』


「じゃあスキルを使わせろよ!!!」


『スキルの発動方法を知りません』


「いや、無限ループやめろやぁぁぁぁぁ!!!!」


まさかの詰み案件。


「……もしかして、このスキル、無能なのでは?」


全知全能とか言いながら、俺が知りたいことを何も教えてくれないんだが!?


「え、俺、転生する時にスキル選択ミスった?」


もはやチートどころか、ただの不具合スキルじゃないかコレ。


「くそっ、こうなったら物理的に動くしかないな……」


俺はとりあえず、適当に歩き始めた。


しばらく歩くと、小さな青色のスライムが跳ねているのを見つけた。


「お、モンスターか?」


スライムといえば、初心者向けの雑魚モンスターって相場が決まっている。ゲームで言えば、まず最初に戦う相手だ。


「よし、チートスキルがダメなら、まずは物理戦闘だ!」


俺は意気込んでスライムに向かって走り出し――


「くらえ! 正拳突き!!!」


ポヨンッ


「やわらかッ!?」


拳を振るった瞬間、スライムのプルプルボディが衝撃を吸収し、俺の拳はむしろ逆に弾かれた。


痛くはないが、全くダメージを与えられた感じがしない。


「え、こいつどうやって倒せばいいの?」


その瞬間、頭の中にまたあの機械的な声が響いた。


『スライムの弱点を知りません』


「お前何のためにいるんだよ!!!!」


スライムはそのまま俺の腕に飛びつき、じわじわと絡みついてきた。


「え、ちょっ……おまっ……離れろ!? って、熱い熱い熱い!!!」


『スライムの胃液は約75℃です』


「情報だけ教えるなぁぁぁぁ!!!!」


俺は必死にスライムを振りほどこうとしたが、プルプルしてるくせに意外と粘着力が強い。


「くそっ、こうなったら……!」


俺は地面に転がっていた枝を手に取り、スライムをグサッと突いた。


ズボッ


「お、おおお!? なんか効いてる!?」


スライムはプルプルと震えながら、俺の腕を離して逃げていった。


「え、俺、まさかの物理武器頼り???」


スキルが使えないので、どうやら俺の異世界生活は棒切れ片手に始まるらしい。


「……転生って、もっとこう、楽しいものじゃなかったの?」


絶望のまま、俺の異世界生活は幕を開けた。


(続く)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ