盤上の戦い
3.789432
「さて、どうしたもんかな?」
手元にある5枚のカードを見ながらミストさんは誰に言うのではなく言った。
「相談はなしよ」
「わかってるわよ。ミナミ無言でお願いね」
なにも言わずに縦にひとつ頷く。
たぶん今の言葉は、ミストさんではなくその後ろにいるわたしに言ったんだと思う。
ちなみにわたしは今、ミストさんの後ろに立っている。
巫女さんがゲーム開始時に立ったので、なんとなくわたしも立った。
「ゆっくりと決めていいわよ。時間はあるんだし」
「時間は有限なんでしょ」
「そうね」
「じゃあ、最初だし」
そう言ってミストさんは手にカードを添える。
「決まったの?」
「決まった」
「それじゃあ、勝負!」
魔法使いさんの宣言にミストさんと魔法使いさんは決戦の言葉を投げる。
「「リミットブレイク」」
リミットブレイクのかけ声とともに、カードが1枚場に出される。
「5と……1」
わたしのつぶやきが示したとおり、場には5と1のカード。
向きはお互いに『縦』つまりは体力への攻撃。
「リザルト」
魔法使いさんが小さい声で言う。
「幸先悪いわね」
「まぁ、最初だからね」
ミストさんは答えると、青い石ひとつとカードを壷へと送る。
「最初は肝心よ」
魔法使いさんもカードを壷へと送る。
「言っとくけど、ゲームは『結果』がすべてよ」
ミストさんは言うと山場からカードを1枚補充。
「寂しい事言うじゃない。『過程』を楽しんだら?」
魔法使いさんも続いてカードを1枚山場から補充。
「あんたとは気が合いそうもないわね」
「奇遇ね。私も同じ事を思ってたわ」
「「リミットブレイク!!」」
と、同時にふたりはカードを場に叩きつける。
「リザルトよ。赤い石を捨てなさい」
ミストさんが諭すように言う。
場には2と1のカードが1枚ずつ
2のカードは横で1のカードも横
「アルテマ狙い? あてがはずれたわね」
「まさか。捨てカードよ」
ミストさんが2で魔法使いさんが1。
「やっぱり……あなたとは合わないわ」
「お互いに相容れなさそうね。絶対に。特にそっちの赤白とはね」
魔法使いさんの後ろにいる巫女さんに大きな声でわざとらしく言った。
「……」
当の巫女さんは静観を貫いているのか反論はしなかった。でも……目が怖い……
「仲良くね。嫌いでも合わなくてもケンカはダメよ」
クギを差すように巫女さんに言い、赤い石を壷に置く。
お互いカードを補充して思考の時間。
3ターン目。
「さて、どうしたもんかな」
1ターン目と同じはじめ方をする。
「そろそろ、攻めさせてもらうわ」
「どうぞ、ご自由に」
魔法使いさんは召喚石を置く
「黒……オーディンだっけ?」
「そうよ」
魔法使いさんが置いた召喚石は黒の石。ミストさんが言うとおりにそれは『オーディン』を使用するための石。
「で、今はしない」
その黒い石の上に心ない天使のカードを置いた。
「後召?」
「言っている意味がわからないけど。言葉の意味が私の思ってるままならそうよ」
あとしょう……たぶんだけど……『後から召喚する』って意味だと思う。
ミストさんの思っていることがわかるようになったか。わたしも。
「「リミットブレイク!」」
と、浮かれている間に、ふたりのカードが場に出される。
「3枚と1枚……」
場に出されたカードは3枚
ミストさんがすべてカードで数字は5 4 横のカードが9
「……」
魔法使いさんのカードが縦カードの数字の3
「青の石ふたつに赤の石がひとつ……う~んちょっとキツいかな」
「顔がそう言ってないけど?」
確かに。ミストさんの言うとおり魔法使いさんの顔はそんなに焦りの表情じゃない
。
「3つ失うのはイヤだなぁ……」
「さっさと使えば? その黒い石」
「そうね。じゃあ、お言葉に甘えて」
そういい、魔法使いさんは黒い石の上に伏せていたカードをひっくり返す。
「フレア! 降臨せよ! すべてを斬り伏せし斬鉄の騎士よ!」
「大層な口上ね。痛々しいわ」
黒い石の召喚獣は『オーディン』その効果は場に出してあるカードをすべて壷に送って無効化。さらに青い石である体力をふたつ削る。
「リザルトよ」
「わかってるわよ」
ミストさんは場に出していた3枚のカードを壷に送って、青い石をふたつ壷に置く。
「さあ、次のターンに行きましょう」
魔法使いさんはカードを補充して、さっきと同じように金色の召喚石を場に置いた。
「その命、ふたつ頂くわ」
「……ご勝手にどうぞ」
わたしは『バハムートだっけ……』と呟き、ミストさんはカードを補充した。
◆4/89
「ところであなたはなんでメモリだっけ? が欲しいの?」
と、魔法使いさんが疑問を口にしたところで……
「ミストよ」
「ん?」
「あたしの名前。あなたって呼ばれるのはなんか好かないのよね。名前で呼んで」
「わかった。じゃあ私も。私は『アリス』アリスでいいわ」
「わかったわ。で、アリス。そっちのムスっとした紅白は?」
目線だけを巫女さんに向けたミストさん。その視線を追うように魔法使いさん……えっと、アリスさんも目線を向ける。
「……アズサです」
ムスッとしていた巫女さんは自分の名前を名乗った。
アズサさんか……見た目も日本人っぽいけど名前も日本人っぽい。格好もだけど名前にも親近感が沸いてくるよ。
でも……あのふたりが姉妹なのか……外国のひとと日本のひとが姉妹なんて……なんか不思議な感覚。
「で、メモリを集めている理由は」
「職業の復活と職業の統一」
「はぁ?」
「と、統一!?」
魔法使いさん……アリスさんのとわたしの顔は怪訝と疑問があふれている顔になっている。
「ちょっと、ミストさん!」
たまらず、ミストさんに声をかける。
「職業のと、統一ってなんですか? わたしそんなこと言った覚えはないですよぉ!」
神父さんの所でたしかに職業と復活のことは話したけど……統一なんて話してないよぉ!?
「そうでしょう。そうでしょう。あたしが今、盛ったから」
「も、盛らないでくださいよぉ!」
「いいのよ。こうゆうタイプはおおびらに盛って言った方が効くのよ」
「そ、そうなの?」
「そうよ。信じなさい。あたしの事を」
ううっ……かっこいいですぅ~ミストさん!
「いいね、そういう壮大な感じ。私は好きよ」
「おおっ……意外と効いている」
「でしょ」
と、感心している場合ではないんだよなぁ……いま勝負の最中だし。
「ミナミおしゃべりはここでおしまい」
「うん。そうだね。あ!」
と、ここでわたしは自分だけ名乗ってないのを気づいた。
「さ、最後にこれだけ! わたしの名前ミナミですから! おふたりともよろしくね!」
急ぎ足の自己紹介を終えて、ミストさんから一歩下がり再び後方の定位置に戻る。
「全員の自己紹介が終わったところで……カードは決まったかしら」
「そうね……とりあえず」
ミストさんは赤い石を場に置いた。
「フェニックスを使うの?」
「まあね」
ミストさんは感情のこもってない返事をして、カードの見定めをしている。
「思ってたんだけど、これって壷から復活させて使うだけの効果よね。それって無意味だと思うんのよね?」
「……そう思っているなら、考えを改めたほうがいいわね」
チラッと魔法使いさん……アリスさんの方を見て、アドバイス? みたいな発言を飛ばす。
「ご忠告ありがとう。でもその台詞は私に勝ってから言ってくれる?」
「あたしが勝つから今言ってるんだけど?」
「……」
アリスさんの顔が険しくなった……あれ絶対に怒ってるよね……
「さぁカードを選びましょうか」
ミストさんは、赤い石の上に1枚カードを伏せて置いた。
○
「ずいぶんと自信があるのね」
と、アリスさんがミストさんに話しかける。
毎ターンアリスさんから、なんらかの話を持ちかけてられてるけど……
「カードは選んだの?」
「冷たいわね。おしゃべりぐらいつき合ってよ? 別に心理戦をけしかけてる訳じゃないのよ?」
「どうだかね」
「心が狭いわね? もしかして焦ってる?」
「口数が多いわね? もしかして焦ってる?」
「まさか。まだ序盤よ? そういうミストはどうなの?」
「まさか」
「そうよね」
「ところで、この不毛な会話は必要なの?」
「ミストとの仲を深めたいだけよ」
「そう。ならさっさとカードを選んだら?」
「ミストはどうなの?」
「とっくに」
「あらそう。じゃあ私は……」
と、なんか堂々巡りっぽい会話が続いている。
ミストさんじゃないけど……ホントに不毛な会話だなと思う……
「興味本位で聞きたいんだけど」
と、ミストさんがアリスさんに切り出した。
あんなに会話を拒否してたのに……まったく勝手なんだから。
「おや? おしゃべりにつき合ってくれるのかしら?」
「茶化さないで」
「はいはい。で、なに? 聞きたい事って」
「魔法ってなに?」
「マナを行使して事象をねじ曲げて、道理を通す事」
「わかりやすく。意味不明なんだけど?」
「ものすごく簡単に言うと、上から下に流れる水を下から上に流すのが魔法」
「『非常識』をひっくり返して反転、そして『常識』に固定するのね」
「へぇ~これで正解を導くなんてびっくりね」
「「リミットブレイク!」」
「えっ!? いきなり!」
いきなり事態が動いたのでびっくりして声がでちゃった……というかツッコんだっていった方がいいかも。
「……」
「命を削りなさい」
「言われなくても」
ミストさんは赤い石をひとつ壷に送る。
カードはそれぞれ1枚。数字は縦の5と横の7
「まだ終わらないわよ」
「……バハムートか」
「ミストさん……ちょっとまずいかも」
ミストさんには聞こえていないと思うけど呟かずにはいられない。
場においてある金色の石はバハムート。石の上には召還カードが1枚。
「フレア! 降臨せよ、竜の王! その神炎の息吹で全てを灼き尽くせ!」
「……その口上、必要なの?」
「必要よ。とてもね」
「そうとは思えないけどね……」
あきれた声で呟いて、赤い石を追加で壷にふたつ送る。
「そろそろ決着がつきそうね」
「ごたくはいいから、石を壷に送ってよ」
冷たく言い放つミストさん。
「いいね。その強がり」
「……」
アリスさんは金色の石を壷に送り『沈黙? 図星かしら』と捨てぜりふを吐いた。
○
「どうやら私の勝ちみたいね」
「なんで? 勝負はまだついてないでしょ」
カードを補充し、選んでいるときにアリスさんが告げているけど、ミストさんの口振りからはまだ勝負を捨てていない。
「がんばって」
わたしからはこれしか言えないけど……ミストさん、がんばって!
「命の石がふたつ。私は四つ。これでひっくり返せるの?」
「……ひっくり返す」
「無意味。無駄なあがきよ」
「最後まで、その強気が持つといいわね」
「言ってくれるわね」
「リミットブレイク」
ミストさんが先に宣言。
穏やかだけど、ちょっと怒ってる感じの声でカードを3枚、場に出した。
「さっさと、リミットブレイクしてよ。時間は有限なんでしょ?」
「カードを伏せて出したのは賢明ね。ミスト。あんた怒っているようで『冷静』ね」
ミストさんを睨みながらアリスさんは同じくカードを3枚出した。
「さぁ、逆転劇をはじめましょう」
ミストさんは睨み返しながら、カードをひっくり返した。
○
「言った割にはあっけないわね。逆転劇はどうしたの?」
「ミストさん……」
カードは8・9そして横の5、対してアリスさんのカードは4・6横の7
ミストさんは赤い石をひとつ削られて、アリスさんは青い石をふたつ失った。
「あらあら。命があとひとつしかないけど? 冷静だと思ってたけど、ただあきらめてただけだったかしら?」
「……」
「おやおや? 無言? 沈黙? もしかして動揺してるのかしら?」
「そ、そんな事……」
「まぁいいわ。リザルトよ。さっさと石を壷に送りなさい」
「ミストさん……」
ミストさんは言い返さずに赤い石を壷に置いた。
「さぁ、決着の時よ」
勝利を確信したかのような顔で勝利宣言をするアリスさん。その顔はすでに勝利者のそれだ。
ホントにこれで……決まるの?
「ミストさん……大丈夫ですか?」
消沈してるミストさんが心配になって声をかけてみる。
「ううっ……ミナっち……どうしょう」
「ミナ……っ? えっ?」
どうやら予感は的中したかもしれない。
ミストさんもかなり動揺してる? なんだか呼ばれたことのないあだ名で呼ばれた気がするけど……
「ど、どうしょう……どうしょう……ミナっち、あたし……負けちゃうかも……」
ミストさんがわたしに初めてみせる弱気のミストさん。
……これは本格的にやばいかも。
「だ、大丈夫ですよ……イケます! イケますって!」
「ううん、イケない、イケないよ!」
なんとか励ましてみるけど……効果なし。弱気のまま。
弱気になったミストさんってなんだか……すごく頼りない……さっきまであんなに強気だったのになぁ……ちょっとショック。
「ちょっと、部外者との話はルール違反よ」
「あ、すいません! ミストさん……ごめん。わたしからはがんばってしか言えない。だから負けてもいいからね。メモリは地道に探そ」
「ミナミ……」
「ん?」
あれ……ミナミに、戻ってる?
「種は蒔いた……勝ってくるね」
「ミ、ミストさん?」
ミストさんはそれだけを告げて、カードに視線を戻した。
□
「来るわよ。終焉の時が」
「……」
反応しないミストさん。さっきのミストさんならチャチのひとつもいれてたはず。
「無視。無反応。無対応。つまらないわね。あなた」
そして、アリスさんがカードを2枚場に出す。向きは『横』と『縦』
「徹底的に完膚なきまで、確実で必殺で勝たせてもらうわ」
「……」
「なにも言わないのね。もういいわ。これで終わりよ。さぁカードを出しなさい」
「……」
ミストさんはカードとにらめっこして、カードを出そうとしない。
「もう一度言うわ。カードを場に出しなさい」
「……」
アリスさんの圧に押されたのかミストさんがカードを出す、向きは『横』
「回避狙い? 賢明な判断ね。もしかしら同数かもしれないしね」
確かに横のカードが同数ならお互いのカードが『回避』になってワンチャンあるかもしれないけど……
「リミットブレイク」
「えっ、うそ……ホントに……ホントなの……」
アリスさんが場に出したカードはすべて数字の『10』
「カードをめくって。あなたの負け犬の遠吠えというファンファーレを聞かせなさい」
「ピーピーうるさいわね。ファンファーレならあんたの涙と泣き声よ」
「は?」
「リミットブレイク」
「は……?」
「ミ、ミストさぁああぁああぁあああぁあぁぁぁぁああぁぁあああん!!」
叫んでしまった。あまりにも衝撃の数字で。言っておくけどこれは絶望の叫びではない。
ミストさんのめくったカードは1枚は数字の『1』叫びは歓喜の叫びだ。
「い……1? なんで……」
「アルテマよ。まずは命を削ってもらいましょうか?」
「ど、どうしてここで……?」
「ごたくいいから命を壷に送って」
アリスさんは呆然としたまま言われた通りに赤い石を壷に送る。
「で、次に『リフレク』の効果だから赤と青をひとつづつ壷に送って」
「リ……リフレク……」
アリスさんは明らかに焦っている。それが手によるようにわかる。顔にでている。
「はやく。壷へ」
アリスさんは壷に赤い石と青い石を送る。
「まだよ……まだ、終わってない。次で……」
「次? 次なんてないわよ」
「えっ……?」
「フレア」
「あ……」
アリスさんは気づいた。ミストさんが場に置いた伏せたカードの存在を。
「フェニックスでふ、復活させたカードでも……えっ……」
「えっ……?」
わたしとアリスさんは言葉を失う。めくられたカードは……
「道化師? 召還カードじゃ……」
そう、ミストさんがめくったカードは『道化師』のカード。
「それは、ル、ルール違反よ! フレアできるのは……」
「待った! ルール説明の時に石の上に置けるのは召還カードだけなんて事は言ってなかったでしょ?」
「言ったわよ……」
「ったく、もう。ミナミ。あたしが覚えておいてって言ったこと。覚えてるよね?」
「覚えておいて……あっ!」
急いでスマホを復帰させてメモアプリを立ち上げる。
「ミストさんの言うとおり……石の上に置けるのは召還カードのみって事は言ってないよ」
スマホを睨めっこしながら、答える。アリスさんはそんな事言ってない事を!
「そ、そんな事……」
「ううん、言ってない。これはルール説明の時にすぐに打ったものだから。アリスさんは絶対に言ってない。確信と自信を持って言える」
「うっ……」
わたしの反論にアリスさんはたじろむ。
「そういうわけだから……ゲームは続行ね」
「くっ……いいわ、続けなさい」
「どうも。お言葉に甘えさせてもらうわ」
そしてミストさんは秩序の召還カードを出し、こう切り出した。
「斬鉄の騎士に竜の王……」
「……な、なによ」
「騎士に竜。それぞれモチーフがあるんだったらフェニックスってなにかしら?」
「さぁ、なにかしらね?」
フェニックスか……わたしの世界なら……
「フェニックスのモチーフは不死鳥、あなたにわかりやすく言うなら鳥です」
「トゲのある言い方ね……あんた」
「ア、アズサ……あんた……」
いままで黙っていたアズサさんがこのタイミングで口を開いた? でも、あいかわらずミストさんには厳しい感じ。
「転生の炎にて死者の命を灯すと言われています」
でも、なんだかんだ言って、ちゃんと教えてくれるからしっかりと、いいひとしている。
「ちなみにわたしのせか……故郷でもフェニックスは不死鳥ですよ」
アズサさんの解説のあとにわたしが口添えを加える。
「そう、なら鳥でいかせてもらうわ」
ミストさんは呼吸を整えて口火を切る。
「降臨せよ、不死なる神鳥よ! 転生の炎をもって死者に命の灯せ!」
伏せていた道化師の効果を使って、ミストさんは『秩序』の召還カードを場に叩き出す。
「蘇れ、斬鉄の騎士よ! その剣にてすべてを切り伏せよ!」
復活させたのは壷に置かれていたオーディンの召還石。
これでアリスさんのカードがすべて無効化されて壷に送られる。さらに青い石をふたつ削る。
「これで体力はゼロね。ま・る・は・だ・か」
「くっ……まだ」
「言ったはずよね? 次なんてないって」
「そっちこそなに言ってるの? もうフェニックスは使ったでしょ?」
「……あんた、ルールを教えたわりにはルールを理解してないのね?」
「はぁ?」
「あたしが出したのは『道化師』のカードよ」
「それが、あ……」
「気づいた? 気づいたよね? わかったよね? 理解したはずだよね?」
そうか、ミストさんが出したのは『道化師』その効果は『カードを2枚追加』
フェニックスとオーディンを使ったけど実際に使った『カードは1枚』のみ。
と、言うことはまだ『あと1枚』残っている。
「これで最後よ」
ミストさんは『心ない天使』の召還カードを場に出して……
「降臨せよ、竜の王! その神炎の息吹で全てを灼き尽くせ!」
金色の召還石を場に叩きつけて……
これで勝敗が決まる!
「あんたの言うとおり『口上』は大事ね」
バハムートの召還効果は……赤い石を『ふたつ』削る。
と、言うことは……
「勝った……?」
わたしはとても細い声でぼそっと口を開く。
「切り札は、最後まで残しておくものね」
道化師のカードを眺めてミストさんがわたしの言うのだった。
盤上の戦い 完