虹を見た
死んでようが⽣きてようが――
⼈間に地震の予知なんかできんだろ
Fase1
男は今⽇も――海を観ている。
否、正確には、海の上の空を――凝と観ている。
来る⽇も来る⽇も――男は空を観続けていた。
今⽇も――空に変化は無いか。
ふと、雲が途切れた。
差し込む⽇の光が、雲を割って光芒を成している。
その、光の側に――
男は⽬を⾒張った。
空を凝視したまま、胸元のポケットからセルロイド製の分度器を取り出す。
形は――南東を指している。
⻑さは、距離を――
⾊彩は、規模を――
男の背中を冷や汗が伝っていった。
これほど、明瞭と観えたことなど――
いや、それよりも――規模が⼤きい。
男は踵を返すと、⾬橋立郵便局へと駆け始めた。
空に⽇の粉が舞う時、それは必ず起こる――
時間がない、時間が――
その⽇、景都帝国⼤学の地震研究室に奇妙な電報が届けられた。
今では既に失われたその電報には、こう記されていたという。
アス アサ ヨジ イズ ジシン アル――
Fase2
あぁら桜⽊ちゃんいらっしゃい、最近は全然来てくんないから⼼配してたのよ。
はいはい、いつものね。
どう、動画配信だっけ、上⼿くいってるの?
あらそう、そうよねえ、何だって最初っから上⼿くいくことの⽅が少ないわよねえ。
え?
もちろん観てるわよ、あたしそういうの好きでしょ。
でも怖いのって、毎回廃墟かトンネルばっかりでしょ、他にないのかとは思うわね。
ん?
まあそうよね、雰囲気が⼤事だものねえ――はい、⽔割り置いとくわね。
そうそう、それとはまた違うんだけど、聞いた?
こないだの――神倉県⻄域地震。
あれね、X のポストで予⾔してた⼈がいるんですって、もうネットで⼤騒ぎになってるわよ。
え?
地震って、⼀⽇にそんなにたくさん起こってるの?
あらやだ、じゃあ毎⽇何回も予⾔してりゃあ、そりゃいつかどれかは当たるわよねえ、なあんだ、怖がって損しちゃった。
あ、でもね、こないだお客さんから聞いたんだけど――
地震の予⾔をするお化けが出たんですって。
意味が解らないって、あたしだってそうだわよ。
あ、おかわり、はいはい。
でね、あの、⽐動岬の海岸沿いにさ、潰れたドライブインがあるじゃない、前に⼀回だけ⾏ったことのあるさ。
その側の海岸に――⽴ってたんですって。
いや、だから、おじいさんだかおじさんだかが。
でね、普通の⼈だと思ってすれ違うじゃない、それぐらい明瞭と視えるらしいのね、視える⼈からすると。
そしたら――聞こえたんですって
アス アサ クジ カミクラ シンド ロク――
え?
そうよ、そうなのよ、意味が解らないでしょう?
だって、いろんな⼈に伝えてこその予⾔じゃないの、先刻の話じゃないけどさ、広めなきゃ意味がないでしょう?
なのにその⼈――ああ、声を聞いて振り向くともう居ないらしいから、お化けかしらね。
そのお化けの⼈は――
視える⼈にだけ予⾔してるってことになるでしょ?
何でそんなことするのかしらね、よっぽど地震に恨みでもあるのかしらね。
でも恨むから予⾔するって――ちょっと⾒当違いな感じでしょ、あの、なんだっけ、お坊さんが憎いからって数珠を引きちぎるみたいな――
ああ、袈裟、それそれ。
でもさ、あたしいいこと思いついちゃった。
桜⽊ちゃんもさ、視えるだの何だの⾔うじゃない、だからさ、そこで動画撮っちゃえばいいじゃない。
でさ、予⾔の内容まで伝えれば――話題になるじゃないの。
え?
あらやだ、お相撲の褌ってアレ、貸し借りするようなもんじゃないでしょ?
え、そういう意味じゃ無くて?
やだわあ桜⽊ちゃん、あたし国語が苦⼿だって知ってるでしょ――
Fase3
で――
撮ってきたんすか。
テーブルを挟んで座る天然パーマに、僕は呆れたように⾔った。
まだ⽇が⾼い14時のファミレスは空席が多い。
お化けだけでも眉唾だろうに――さらに予⾔までするとなると、豚カツの天ぷらみたいな話だ。
いやな、撮っては来たんだ。
桜⽊さんは頭をがしがしと掻き毟りながらそう⾔った。
ただな、何も写ってねえわ、当然なんだけどよ、明瞭と視えはしたんだがな――
視えは――したのかよ。
慣れというのは恐ろしいもので、僕は桜⽊さんが視えた、或いは視ている、といったことを抵抗なく受け⼊れるようになってきている。
半信半疑の部分もあったのだが――こないだの蔵の⼀件を鑑みるに――何かは視えているのだろう。
それが何かは――判らないのだが。
でな、肝⼼の予⾔なんだがよ、よく聞き取れなかったんだ、俺さ、視えはするけど聴くのは苦⼿なんだよな、ボソボソッとしか――聞き取れなくて。
何すかもう、今回はそこがキモじゃあないっすか、聞き返せばよかったでしょう。
いやおまえな、そんな怖ぇことできるか、だいぶ――離れてたしな。
いやそれ、聴こえなかったんじゃなくて単純に距離が遠かっただけじゃないすか、またびびって離れたところから視ただけなんでしょうが。
⾺⿅野郎、伊庭、この野郎、頑張った⽅なんだぞ、5メートルくらいまでは近づいたんだぞ。
遠っ、逆によく聴き取れましたね、何て⾔ってたんすか。
最初の⽅は聞こえなくてな、ただ――
カミクラ シンド サン――って。
それって――
3 ⽇前――神倉県⻄域を襲った震災は、今⽇も⼤きく報道されている。
気象庁の発表では震度6弱の揺れが発⽣し、各地で建物の倒壊や⼟砂崩れが起こったという。
今も被災した⽅々の避難⽣活や復旧作業が続いているはずだが――
その余震、すか。
僕の声は、⼼持ち暗くなった。
そう思えるよな――
桜⽊さんも、ほんの少しではあるが――陽気さに陰りが混じる。
いや、最初は俺もそう思ったんだがな伊庭、その――視えた男な。
あいつがやってんのって、予⾔じゃなくて――
予⾔じゃないなら――なに?
声のした⽅を向くと――⿊髪の少⼥が僕達を睨んでいた。
Fase4
椋平廣介――
それが、その男の名前らしい。
テーブルを挟んで座った⽼久保は――明らかに不機嫌そうだった。
並んで座り直した僕と桜⽊さんはひそひそと⼩声で話し合う。
お前、おい、伊庭――この娘に――何かしたのか。
⼈聞き悪いすよ、何もしてないすよ。
だってお前、すんげえ怒ってるぜ、原因があるだろ。
原因は桜⽊さんすよ、気持ち悪いとか⾔うから――
⾺⿅を⾔え、最初に⾔ったのはおまえだろうが――
かつん、と⽼久保の⽖がテーブルを鳴らしたので、僕と桜⽊さんは思わず背筋を伸ばした。
私の話――聞いてた?
お、おぉん、と桜⽊さんは頷いた。
はい聴いてますと、僕は答えた。
――怖い。
⽖でガリガリとテーブルを梳った後――⽼久保は溜息と共に困ったような表情で⾔った。
んもう――先⽣の依頼じゃなかったら、私だって来たくなかったわよ――
その海岸に⽴つ男――椋平は、かつて地震予知の分野で⽿⽬を集めたらしい。
1903年⽣まれというから――盟治から祥和にかけての話だ。
虹を⾒た、らしいの。
⽼久保の話によると、それはとても科学的な地震予知とは⾔えない代物だったという。
椋平の地震予知は、主に――虹を⾒ることで⾏われた。
後に椋平虹と名付けられたその虹は、椋平本⼈以外には観測が難しかったという。
だが、その虹の形や⾊で――
椋平廣介は、数多くの地震を予知したと⾔われているわ、少なくとも――トリックが暴かれるまではね。
なんだ、インチキだったのかよ、と桜⽊さんは気が抜けたように⾔った。
ええ――晩年の椋平の予知は、地震研究者あてに予知の内容を記載した葉書を送ることで成り⽴っていたらしいの。
葉書の消印の⽇付から、それが地震発⽣前に投函されたものである事が判るんだけど――
なるほど、先に投函だけしとくんだな――
こういう話になると、天然パーマは妙に頭の回転が速い。
そう、先に⾃分あてに葉書を投函して、消印が押された状態のそれをストックしておく。
もちろん、住所なんかは後で書き直せるように鉛筆で書いといてね。
そういった葉書を⼤量に作成しておいて、実際に地震が起こったら――
近い⽇付の消印がある葉書に、起こった地震の情報を記載して直接ポストにぽい、か――
昔も今も、ポストしまくりだなおい――
桜⽊さんは天井を向いたままそう⾔った。
そりゃ当たるわな――
そうね、だけど――⽼久保はそう⾔って⼼持ち⽬を伏せる。
睫が⻑いなあ、と、僕は如何でもいいことを思った。
最初の頃の予知は――説明できない。
例えば1930年に起きた、北伊頭地震。
この地震の予知は葉書じゃなくて――電報だったらしいのよ。
電報なら――葉書と同じトリックは使えない。
それじゃ――その予知は。
椋平が⾒た虹は。
そう思った時、スマホが震動した。
緊急速報の通知だ。
画⾯を⾒た僕は――⾎の気が引くのを感じた。
緊急地震速報 神倉県⻄域 推定震度3――
Fase5
ああ、桜⽊ちゃん?
ごめんねえ、急に電話しちゃって。
いやあの、⼤したことじゃないんだけどね、こないだ話したお化けの話覚えてる?
昨⽇ね、お客さんがね、また聴いちゃったんだって、それがね――
アス ゴゴ ヨジ トウキョウトシン シンド ナナ――
ねえ、⼤丈夫よねえ桜⽊ちゃん、あたし――怖くって。
もしもし?
桜⽊ちゃん、もしもし?
Fase6
じゃあ何すか、そいつが――椋平の霊がやってるのは予知じゃなくて――
地震の発動だ。
桜⽊さんは短く答えて、⾞のエンジンをかけた。
最初に話を聞いたときから――おかしいとは思ってたんだよ。
ギアをバックに⼊れながら、桜⽊さんは呟くように⾔った。
死んでようが⽣きてようが――⼈間に地震の予知なんかできんだろ。
それは――確かにそう思う。
さんざん幽霊だの化け物だの斬っておいて何だが、そういったモノとは――また領分が違うような気がするのは確かだ。
やれ動物が騒いだだの、妙な雲が出ただの、鴉が変な鳴き声をあげただの――
宏観異常現象だってな、ノイズが多すぎて使いもんにならんだろアレ。
鴉はいつだって変な声で鳴いてるさと⾔いながら、桜⽊さんは⾞のスピードを上げた。
時刻と場所に、震度まで――それほどピンポイントの予知なんて誰にもできねえよ。
できねえはずなのに、その通りに地震が起きるってんなら、答えはひとつしかねえ――
そいつが地震を起こしてるんだ。
後部座席では、⽼久保が誰かと電話で話している。
おそらく、彼⼥が先⽣と呼ぶ⼈だろう。
はい、私も向かっています――はい、岩筒⼥も――でも、弾丸が――
はい――先⽣、万⼀の時は⼋⾊雷公を――⼤丈夫です、咲雷なら私でも。
それに――蟷螂も居ますから――はい、では後ほど。
電話を切った⽼久保は、⼤きく息を吐いた。
蟷螂って僕のことだろうか。
でも桜⽊さん、その、椋平って⼈は的中させてるんすよ、少なくとも最初は――
⽼久保の話だと、北伊頭の地震は――当てている。
それな、こないだゲンさんにも⾔ったんだがな。
ゲンさんて誰だ。
さっき⽼久保さんが⾔ってたろ、椋平って男は――⽣涯ほとんどの期間で地震予知をしていた。
それだけ予知しまくれば――当たるんだよ、当たっちまうんだ。
たまには――特⼤のホームラン打つこともあるさ。
でもですね、なんでまた――地震起こすんすか、しかも⾸都直下型の。
意味わからんじゃないすか。
僕はスマホの時計を⾒ながら⾔った。
――今は午後3時35分。
予知の――否、地震発動の時間まであと25分しかない。
椋平が地震予知を始めた動機は――地震の被害から⼈を守るためだったらしいわ。
⽼久保は、呟くようにそう⾔った。
だから多分、最初に北伊頭の地震を的中させた時は――
嬉しかったんじゃないかしら。
これで⼈々を守れる、って――
葉書のトリックが暴かれ、⼈々が⾃分の予知に関⼼を持たなくなっても――
椋平は虹の観測を続けたという。
それこそ、⾃分の命が消えるその⽇まで――
なあ伊庭、これからお前が――俺達が斬ろうとしてる奴な、元は椋平廣介って名前の⼈間だよ。
名前のある奴斬る事なんて、そうそうないからよ――その――
ハンドルを握った桜⽊さんは、⻭切れ悪くそう⾔った。
これまで斬ってきたモノたちは――みな名前など知る由も無かった。
有無を⾔わさず襲いかかってきたり、呪い殺そうとしたり、蔵に巣喰ったり――
禄でもないモノばかりだった。
椋平は、ずっと地震を予知し続けた、それこそ⽣涯をかけてな。
それが――何処かで歪んじまった。
当てる事が⽬的になって、地震はその⼿段になっちまった。
今回のは――特⼤の予知ってわけだ。
だからな伊庭、俺達が斬るのは椋平本⼈じゃねえ。
予知で⼈を救いたいっていう、椋平の執着そのものだ。
随分と迂遠な⾔い⽅だが――桜⽊さんなりに僕を気遣ってくれているのだろう。
斬るのは椋平その⼈ではなく――椋平が遺していった妄念そのものである、と。
よお、⽼久保さん、「先⽣」は――何て?
ルームミラー越しに桜⽊さんが問うと、⽼久保は溜息交じりに答えた。
被害を起こさないよう――よろしくお願いするとのことだったわ。
でも――
あなたができないのなら――私がやる。
後部座席から、銃に弾を込める⾳が聞こえた。
⽐動岬に向かう⾞窓から⾒える景⾊を眺めながら、僕は鎌の持ち⼿を握り締める。
いや、僕がやるよ――つうか桜⽊さん、⾶ばしすぎじゃないすか。
⾺⿅野郎おまえ、気のせいだよ――ほぼ制限速度だろ。
いや越えてますって絶対、捕まったらアウトっすよ、国が。
斬った後に捕まってやるよ、お前が運転してたことにする。
無免許じゃないすか、僕、原付しか乗れないんすよ――
後部座席から――⻭軋りの⾳が聞こえた。
Fase7
砂浜にはちらほらと⼈影が⾒えたが、それほど多いというわけではない。
3⼈分の⾜跡を砂に刻みながら、僕達はゆっくりと海岸線に向かっていった。
時刻は午後3時55分――ぎりぎりだが間に合った。
そこだな――波打ち際に、でかくて⽩い⾙殻あるだろ、そこに――⽴ってるぜ。
地震予知に⽣涯を捧げた男の妄念が――今もそこに⽴っているのだ。
僕の⽬には何も視えないが――僕はゆっくりとその男の前に⽴った。
後ろから斬りつけるのは――なんだか忍びなかった。
⽼久保はスマートフォン越しにこちらを⾒ている。
多少とは⾔え⼈⽬があるから、さすがに銃を取り出すわけにはいかないのだろう。
あと――3分、⽼久保はそう呟いた。
⿊髪が海⾵に靡いている。
⾵の⾳が、やけに⼤きいと感じた。
ええと――ですね、僕のこと――視えて、ます?
斬る相⼿に、しかもこんな⾄近距離で話しかけるなんて初めてだ。
当然、視えもしないし声も聞こえないから、桜⽊さんに⽬で問うた。
空を⾒てるな――桜⽊さんはそう⾔った。
ああ、じゃ、まだ⾒てるんすねえ、あのですね、それ――その――
凄いことだと、思います――
成否は別として――地震を予知するために、椋平は空を⾒上げ続けた。
誰からも相⼿にされなくなっても。
地震予知の絡繰を暴かれた後も。
それでも、⼀⼈――⾒上げ続けた。
椋平が地震予知を始めた動機は――地震の被害から⼈を守るためだったらしいわ。
⽼久保の⾔葉を思い出しながら、僕は椋平の遺した妄念に語りかける。
僕には、あなたのような真似はとてもできないです――
あなたほどの――信念は。
でも――
あなたのやってる事――都合が悪いんすよ、その、⽣きてる僕らにとっては。
伊庭、お前を――⾒てるぞ。
桜⽊さんの声を聞きながら、僕はゆっくりと鎌を振り上げた。
だからもう――⼤丈夫すよ、⼀⼈で⾒なくても。
⽣きてる側が――何とかしますよ、これまでどおり、これからも。
ですんで、ええと――
こんな時、何て⾔えばいいのか、⾔葉を持ち合わせていないことが恨めしかった。
だから、間抜けな台詞だとは思いながら――
その⾔葉と共に鎌を振り下ろした。
おやすみなさい――
58分45秒――
⽼久保の声が、やけに遠く感じられた。
Fase8
冨塚駅で⾞を降りると、⽼久保は桜⽊さんに⾔った。
いつまで――続けるつもりなの。
いつまでって、そりゃお前――
桜⽊さんは少しだけ⾔い淀んだあと、ハンドルに顎を乗せて応えた。
溜まるまで、さ。
それから、どうするの。
悪いようにはしねえよ、先⽣にもそう伝えといてくれ。
⽼久保は少しだけ唇を噛んだ後――駅に向かって去っていった。
先⽣に依頼料の話、しといてくれよなあ――
桜⽊さんの声が聞こえたのか、⽼久保は――少しだけ歩みを早めた。
桜⽊さん、この鎌――これ、ほんとは何なんすか、⼀体何処から――
僕の問いかけに、桜⽊さんは気にすんな、と答えた。
時期が来たら――話してやるよ。
⼿にした鎌が、ひんやりとした冷たさを増した――気がした。
さてと、腹ぁ減ったな、昼⾷ってねえしな、メシ⾏こうぜ、伊庭。
⾞を発進させながら、桜⽊さんはいつもの⼝調でそう⾔った。
しかしあれだな、⽼久保さんいっつも怒ってんな、⼿伝ってくれたんだからメシぐらい奢ってやるのによ。
純粋に厭なんじゃないすか、僕らと絡むの。
ひでえな、少しくらい愛想よくしてくれてもいいだろ、ゲンさんを⾒習えよな。
だからゲンさんって誰なんすか。
それか汐⾒さんとかさあ。
汐⾒さんも厭だと思いますよ。
お前な、俺だって挫けるぞ――
桜⽊さんの叩く軽⼝を聞きながら、
僕は少しだけだが――安⼼した。