表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遅れた救世主【聖女版】  作者: ヘロー天気
だそくの章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/106

エピローグ2




 呼葉にとって異世界帰りの先輩ともいえる都築氏に案内されたのは、学生が入るには少々勇気のいるお高そうなレストランだった。

 川岸財閥という大企業が経営するオフィスビルの展望高級レストラン。しかも個室である。


「さ、座って。好きなもの注文してね」

「ひええ……席も高いしメニューも高そう」


 (いささ)か気後れしてしまう呼葉だったが、都築氏お勧めの高級スイーツセットには興味津々で抗えない。


 都築氏と贅沢なお茶のひと時を過ごしながら、呼葉の異世界体験談やその身に宿す特殊能力について話をする。


「ふむふむ、聖女の祝福か~。対象に数や距離の制限も無いのは凄いわね」

「私の他にも、召喚されたりした人っているんですか?」


「呼葉ちゃんみたいな明確に人の意志で喚ばれたケースは、あたしの知る限りだと無いわね~」


 大抵は事故や偶然が重なって世界の壁を越えてしまった例や、異世界の創造神にあたる存在に複製召喚された人がいるという。


「複製召喚?」

「本人はこっちの世界に残ったまま、人格と身体のコピーが異世界で構成されたりね」


「え、それって召喚されたコピーと、コピー元の人に繋がりとかあるんですか?」

「一応あるみたいよ。特殊な条件が揃った時なら、眠ってる時にお互いの事を夢で見たりとかしてたみたい」


「へ~」


 呼葉や都築氏の他にも、異世界に迷い込んで帰って来た人は何人かいるらしい。


 そんなこんなと、異世界での悲喜こもごもを話題に色々とお喋りをして小一時間。親睦を深め合った都築氏から、おもむろに『問題無し』の判定を受けた。


「えっと、それってどういう?」

「呼葉ちゃんに危険性は無しって、あたしの精霊がお墨付きを出したわ」


 聞くところによると、都築氏は異世界に喚ばれた影響で精霊と契約しており、人物鑑定のような力が使えるという。


 今日声を掛けたのは、呼葉に宿る力のリスクを測る意味合いもあったそうだ。もし、力の制御が出来ない等の危険性がある場合、能力の封印も視野に入れていたらしい。


「そんな事できるんですか」

「完全な封印じゃ無く、力が外に出て行かないよう発現を阻害して抑えるって感じだけどね」


 目立たないアクセサリー類で封印具を作り、それを装着していれば無意識に力を発現させてしまう事を防げる。

 実際に、異世界から戻る時の弊害で癒し能力が常時垂れ流し状態になった人が居て、しばらく普通の生活にも難儀していたのだが、今はそういう封印具で力の暴走を抑えているのだと。


「呼葉ちゃんはその辺りも大丈夫そうだし、問題無いわね?」


 無闇に力を振るうような性格でもなさそうだしという都築氏に、呼葉はうんうん頷く。

 帰還した直後には生放送中のアイドルに祝福を送って少し騒ぎを起こしたが、あれ以来これといったトラブルは起こしていない。


 その後、スイーツセットの残りを堪能して展望高級レストランを後にした。お値段はエライ事になっていたが、都築氏の奢りである。ゴチ気分で余韻に浸る呼葉なのであった。



「それじゃあ、何か困った事があれば相談して?」

「宜しくお願いします」


 今後、呼葉の祝福の力を借りる事があるかもしれないという都築氏に、呼葉は快く承諾すると、互いに連絡先を交換して別れた。


 この現代世界に、自分と同じような境遇の味方が居た事実に、呼葉はとても勇気づけられた。

 聖女の祝福という強大な力を宿しながらも、ある意味一人で危険物(規格外の力)を抱え込んでいる状態は、思っていた以上に心細かったのだ。


「うん、やっていけそう」


 高層ビルに切り取られた都会の空を見上げた呼葉は、ようやく自分の居場所を見つけられたような気持ちを実感したのだった。





 おわり




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白かった ストーリーがちゃんとあるし、途中ブレることもなく一貫した流れがあって、読後感も爽快だった [一言] 異世界テンプレからは良い意味で外れてて、新鮮だった 余計な部分も無く、…
2024/02/27 14:34 退会済み
管理
[一言] こちら側への転載完了お疲れ様です 同じところにあるので色々見比べるのも楽になりました なんせあちらのサイト、別のとこを開くと内容が見えなくなるし
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ