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1-6 家族と追放

家族総出で挨拶に行かなければならず、

僕も駆り出された。

当然のように父は、

兄を自慢の息子として紹介する。


姫は魔力の波長を感じ取ってサーチをする魔法を使っていた。


鑑定とはまた別で僕は勝手にサーチと名付けている。


サーチまで覚えているとは思わなかったが、

逸らすことはできる。


一見僕の魔力を感じ取っているようだが、 実際は他の人の魔力を僕の魔力として感じ取らせている。 サーチした本人は気付かない。


姫は分からないが 何か感じ取ったことがあるらしく、 考え込むような仕草をしていた。


第六感か何かで感じ取ったのかもしれない。

………想定外だ。


その後 兄弟で模擬戦をやってほしいと言われた。


周りは反対した。 グラン兄様が強すぎるからだ。


レイフィールド家としては、 僕では相手にならないから そこそこ戦える相手でグラン兄様の実力を見てもらいたいだろう。


「本気で戦っていただかなくてもいいのです。

お二人のお力をお見せいただきたいのです。」


………そう言われてはお父様も逆らえまい


試合は適当な魔法を一発もらい 吹っ飛ばされて グラン兄様の圧勝となった。





魔法をもらった際に、分からないように

こちらも魔法を放ってうまく迎撃した。

衝撃は魔法で殺してあり、ほとんど痛みはない。


「二人とも、ありがとう。もう戻っていいわ」


 王女の声が落ち着いていた。けれどその目には、揺るぎない意思があった。


「私がこの方の治療をするわ」


「そ、そんな……!」


「いいえ。私が言い出したことよ。

だから、私のせいで怪我をしたんだもの。

放っておくなんてできないわ」


 従者たちは顔を見合わせ、迷いながらも一礼して引き下がった。王女はそっと手をかざし、回復魔法を使う。治癒の光が肌に沁みて、ほんの少し、熱を感じた。


「すぐ終わるわ。

……だから、少しだけ二人きりにさせて」


僕は黙って頷いた。どうしてだろう。

言葉が出てこなかった。


そして、彼女はぽつりとつぶやいた。


「あなたが……ローズね」


「……え? 何のことですか?」


とぼけるしかなかった。

表情を崩さず、ゆっくりと返す。


「目立ちたくないタイプでしょう? 

“神童”と呼ばれる兄じゃない。

あのファイアアローで吹き飛ばされたのに、

服に焦げ目がついていない。

レイフィールド家は炎系魔法が強い家系だもの。

あれほどの魔法で、焦げ目がつかないことは

考えにくいわ。

それに私の直感があなただって言ってるの

はじめてあったあの時からずっと

探していたもの

ローズのことなら間違えない自信があるわ。

ほとんど直感だけどね」


彼女は最後に少しおどけながらそう言った。


そこまで見られていたのか。

うかつだった。

やはり――思った以上に“視える”人間だ。


 魔力欠乏症ではあるが……

なるほど。これがその眼か。

魔力を目に集中させたとき

目に見えないことがわかることもある。

その能力が少し表れているのだろう。


「……さっきから、

何をおっしゃってるのか……私なんかには、さっぱり分かりませんね。

ともあれ、治療ありがとうございました。

これにて、失礼します」


くるりと踵を返す。


しかし、なぜだろう。

口が勝手に、余計なことを口走った。


「あ、そういえば。

ローズマリー商会の酒場に、

フードを被った男がよく来るらしいですよ。

……そいつが“ローズ”なんじゃないかって、

噂を聞いたことがあります」


 彼女の瞳が、すっと細められた。


「会いたければ、そこに行かれたらいかがですか。それでは――失礼」


足音を立てずにその場を離れながら、

俺は心の中で自分を問いただした。


なぜ、あんなことを言ったのか。


どうして、王女と……あの人と、

会ってしまえと言わんばかりのことを口走ったのか。


……わからない。ただ、何かが胸の奥で、

ざわついていた。


---


ローズマリー商会の酒場の灯りは、

いつもどこか控えめで、居心地がいい。

僕はフードを深くかぶって、

カウンターの端に座っていた。

誰とも話すつもりはなかった。

ただ、静かに酒を飲んで、

時間をやりすごすだけ……


そんな中で、彼女は現れた。

俺と同じようにフードをかぶっていて、

姿勢も声も控えめだった。

でも、何となく、

彼女がここに来る気配は感じていた。


「……あの、そこのフードの方。これは独り言なので、気にしなくて大丈夫です」


そう言って、俺の隣に立つ。俺は何も言わず、グラスを揺らした。


「ごめんなさい。目立ちたくないって、

分かってる。でも、本当に感謝してるの。

私なんかに構ってる暇なんてないのも、

住む世界が違うのも、分かってるのに……」


震える声だった。でも、その中にちゃんとした意思があった。言葉を選びながら、それでも彼女は言い切った。


「それでも……迷惑じゃなければ、少しでも近くにいられたらって、そう思ってるの」


 俺は、少しだけ笑った。自然に、

というより、ついこぼれた感じだった。


「まあ……確かに、君を助けたのは俺だし。

俺が“ローズ”かもしれないね」


「……え? 今、ほんとに……?」


驚いたように俺を見上げるその目を、

まっすぐに見返す。


「大丈夫。ここは身内の店だから。……

それに、君には会ってもいいと思った」


「……ありがとう。嬉しい」


彼女は小さく息を吐いて、肩の力を抜いた。


「私はあなたが、ローズでもミールでも構わない。どんな名前でもいい。ただ、あなたのそばにいたいの。……だめかな?」


そんなことを言われたのは初めてだった。

僕は少しの間、黙って考える。


「……迷ってるんだ。君は、今のままの方が幸せなんじゃないかって思う。家族もいて、立場もあって……」


「それでもいいの。私はもう、自分の生きる目的を見つけたから」


彼女の言葉は、まっすぐだった。

真剣で、重みがあった。


「魔力欠乏症の子どもなんて、誰にも必要とされなかった。家にいても、私の居場所なんてなかった。死んでいくものだと、ずっと思ってた。そんな私に、生きる意味をくれたのは、あなただったの」


「……そんな、立派な人間じゃないよ。俺は」


「それでも、私はそう思ってる」


 俺は思わずうつむいて、小さく笑った。


「……なんか、君のこと、放っておけないんだよね。初めて会ったときから、

惹かれてたのかもしれない」


 そして、彼女の目を見て、静かに言った。


「もうすぐ、俺はたぶん……追放されると思う。だから、もしよかったら。一緒に来てくれないか?」


 彼女は迷わず、ゆっくりとうなずいた。瞳の奥に、強い決意が光っていた。


「うん。嬉しい。私、きっと役に立つわ」


 その言葉に、俺は思わず肩の力が抜けて、少し笑った。


「ありがとう

まあ……自由にしてくれたらいいよ」



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