1-5 ローズと団員
襲われているのは
チルテス聖教会の仕業なのは明らかだが、
バックには大国のチルテス聖国がおり、
正面切って戦うのは得策ではない。
今は火の粉を払う程度でいい。
さすがにチルテス聖教会として大っぴらに
軍勢を率いて
無償で民を助ける教会を叩き潰すわけにもいかない。
どうしても理不尽になり、
大義名分をたてることも
難しいだろう。
故に刺客を送り込むしかないが、
返り討ちにされている。
「まぁ
僕は僕で色々やっとくから
ま、一応ここが第一の拠点だし
いつでも戻ってきたらいいから
あとこの魔道具で連絡とれるから何かあったら
これで
とりあえず各々できることやろう
あ、あんまり無理しなくていいから
ほどほどで
じゃ」
渡した魔道具は複数人と通話ができる魔道具だ。
現代の通話アプリのように複数人同時通話も
出来るし、それぞれ持っているもの同士
全員に連絡が取れる。
マリーも作れたが、できたのはA地点とB地点を繋げて通話するだけの魔道具である。
世間的にはローズ教団は
魔力欠乏症の人たちを助けられる集団
親に捨てられた孤児を世界中から集めて助けている。
それ以外に街の人たちも助けている
孤児たちは一旦は教会の孤児院で暮らし
シャドウローズ
ローズマリー商会
ローズ教団に分けられる
特に縛りはなく、成長すれば
ローズ教団関係以外のどこへ行こうが
自由なのだが、恩義からか、
行くあてがないからか、
去るものはほとんどいない。
刺激を求めるものは、
シャドウローズに入り、腕を磨く。
表では冒険者として活動するものもいる。
安定を求めるものは、
ローズマリー商会へ。
人を助けることに生き甲斐を感じるものは、
ローズ教団で活動する。
大まかにはこんな感じのようだ。
ローズマリー商会は大きくなってきており、
どんどん新たな商品を生み出し、
将来性もあるように見えるだろう。
そんな商会が選択肢としてある時点で、
他に大きな夢や目的がでもなければ、
下手に働くより安定が見込める可能性は高く、
他の選択肢は必要ないのかもしれない。
ローズマリー商会は賃金も高く、
多くても週1しか休めないのが当たり前の
この世界においては異例の週休2日制である。
シャドウローズは諜報部隊でもあり、
方々に散らばっている。
ローズ教団がいつ襲われても
分かっていたかのように駆け付けてくるのは、
本当に分かっているからだ。
常に連携を取り合っている。
また、シャドウローズは
ローズ教団との関与を匂わせているが、
ローズマリー商会はそうではない。
しかしシャドウローズの諜報部隊は、
集めた情報をローズマリー商会に流し、
ローズマリー商会は、
それにしたがって儲けることもあれば
危険を回避することもある。
またローズマリー商会が雇う護衛の冒険者は
全てシャドウローズの腕利きである。
3つの組織は助け合いの関係にある。
助け合って生きていくこと。
比較的自由ではあるが、
教団全体のトップであるローズとして、
唯一掲げたルールである。
もちろん細かいルールは他にもあるが、
ローズとして、
共同生活の中で伝えた唯一のルールだ。
共同生活の中で共に修行に励み、
強くなったのが
幹部のリリーとマリーとヴァイオレットだ。
直接の弟子と言ってもいい。
その中で、盗賊狩りや奴隷商狩りを続け、
数を増やしていった。
一人で行った回数が一番多いが、
自分たちだけでもできるように何度か同行し、
3人全員に盗賊、奴隷商狩り研修をした。
ローズ教団として、活動し勢力を拡大して
2年経った頃、ついに王女がわが家に査察に来ることになった。