1-1 転生と魔力欠乏症
僕はレイフィールド伯爵家の息子
ミール・レイフィールドとして生まれた
日本人として一生を終えた後、
その記憶を持ったままこの世界に生まれた
この世界は文化レベルでいえば
中世ヨーロッパぐらいだろうか
そして魔物や亜人、魔法が存在する。
僕が生まれたレイフィールド家は
完全な脳筋貴族だ。
強さこそが正義だと信じ、
強くないものは認められなかった。
それが僕は気に食わなかった。
通常この世界では男であろうが女であろうが、
長子が家督を継ぐことが多い。
レイフィールド家は僕が次男で
僕より2つ上のグラン兄様と
5つ上のフィーネ姉様がいる。
通常の家であればフィーネ姉様が継ぐが、
レイフィールド家はグラン兄様を次の伯爵にするつもりだった。
理由は簡単でうちは脳筋貴族であり、
強さこそが全てだからである。
グラン兄様は騎士としての才能だけは、
フィーネ姉様より上だった。
しかしこのグラン兄様の性格は最悪だった。
小さな頃から天才ともてはやされ、
完全に増長していた。
領民を人とも思っていないような男で、
グラン兄様の代でレイフィールド家が終わるのは火を見るより明らかだった。
一方フィーネお姉様は人格者であり、
優しさと、人徳を持ち合わせていた。
母は僕が幼い頃に病気で亡くなったが、
小さな時から一緒に遊んだり、
この世界のことなど色々なことを教えてくれた。
僕にとっては母のような存在だ。
まぁ僕がフィーネ姉様を尊敬していようが
いまいがグラン兄様を後継者に選ぶような家は継ぎたくないし、早く離れたい。
現在10才になるが
魔法は出来損ないのフリをして、
模擬戦はいつもわざと負けていた。
そんな中、第三王女の誕生会に参加させられるはめになった。
僕としてはごめん被りたかったが、
王族のパーティーは威厳を示すために、
僕らのような落ちこぼれも含めて、貴族であれば参加させられるものらしい。
そんな中、適当にやり過ごそうと、
会場付近の廊下をふらふらしていたら、
少女が頭を押さえて苦しそうに、
座り込んでいた。
気づかれる前に、魔法で作った仮面を装着し、
その少女に近づいた。
普段はこんな面倒ごとは放置するのだが、
なぜか直感的にこの少女は僕が守らなければならないと思った。
そして、魔力を目に集めてその少女を診察すると、彼女が魔力欠乏症であることがわかった。
魔力欠乏症とは、
体内で魔力が固まり、循環経路を妨害し、
徐々にたまっていくことで魔力が滞留し、
自らの魔力が内蔵を悪化させ、死にいたる病だ
先程、目に魔力を集めて彼女を診察した。
この技術を僕は鑑定と呼んでいる。
鑑定が一般的にないこの世界では、
魔法がうまく使えない人間が
そのまま衰弱して死んでいくので、
生まれつき魔力がないものが、
日常生活に耐えきれずそのまま死ぬ病気
だと考えられており、
魔力がある程度ないと生活できない、
魔力もからだを動かすエネルギーの一部だと思われている。
実際はむしろ逆で、魔力が無いのではなく、
ありすぎて、その膨大過ぎる魔力を
子供のうちからうまく制御することができず、
体内で固まることで起きる病気である。
僕は幼い頃から魔力を練りにねって、
その精度は僕の知る限りでは、
この世界で最強クラスだと思う。
自意識過剰ではないと思いたい。
いわゆる転生特典ってやつかもしれない。
魔力量も馬鹿みたいにあるけど、
魔力操作で抑えている。
この世界に鑑定の概念はないようだが、
目に魔力を込めたらいけた。
しかし、鑑定には繊細な魔力操作が必要なようだ。
あらかじめ、鑑定は使えたし、
魔力欠乏症は治療できると考えていた。
そして、片っ端から治していくつもりだった。
この世界で悪の組織を立ち上げるためである。
別にやたらと犯罪をしたいわけではないが、
なんとなく悪の組織の方がかっこいいからである。
また、むやみに人を傷つけたりすることは
趣味ではないのでしないが、
せっかくの異世界だ。
何ものにも縛られず、
自由に好き勝手して生きたいのだ。
魔力欠乏症に目をつけていたのは、
膨大な魔力を持っているからである。
魔力が多いと戦闘も強いし出来ることが多い。
そして、子供が多いからなにものにも染まっておらず、うまく育てればいい。
むしろ、魔力欠乏症の子供は衰弱して死んでいく未来にあるので、捨てられるか、売られる子供も多い。
そこをたすけるのだから、普通は僕になついて、言うことを聞いてくれるだろうと言う打算があった。
でも、善良な一般市民である僕は、
そもそも人を助けると言う行為自体にやりがいも感じていた。
まぁ助けられる命は助けた方が目覚めがいい。