怪物と囮
火事が起きて、身を低くしながら少女が教えてくれた裏道を通る
少女が言うには出る時は必ず門からしか、脱出は難しい
あの二人がどこにいるのか特定するまでは、安全に避難は難しいだろう、あの二人が死角になるところに身を隠しながら動く
家の火が消えて数分ほど経過、犯人だと睨んでいる二人は西門からはいなくなっていた
薫「もう来てもいいよ、さっきの人達はもういないみたいだ」
??「ありがとうございます、そういえば私の名前を言い忘れていましたね、私の名前は…」
「おーい、こそこそしていないで出てきやがれ!」
あの二人がこちらに戻ってくる事に気づき近くにあった大きな井戸の影に隠れる
??「気付かれた!」
俺はなんとか井戸の影から犯人の正体を見ようとするが服装しか見れなかった、おそらく二人とも男だ
そのうちの一人がこちら側に歩いてくる
井戸以外に隠れるところもなく、ひたすら声を出さないように口を手で抑える
男が近づいてくる間にだんだん後ろを見ることもできず、力拳を作る
「本当にどこにいるんだよ!」
ドガンッ!
後ろで何か強い衝撃で壊れる音がする
薫(この音は井戸を破壊した音だ!)
もうダメだと覚悟を決める
「おーい、こっちにも見当たらないぞ」
「仕方がない、もう一度東門のあたりを探すしかない」
??「運が良かったですね、井戸が全壊していたら見つかっていたどころじゃない話ですよ」
男たちはどこかに行った様だ
薫(あんな大きな井戸を壊せるあの男達は一体何者なのだろうか?)
疑問が深まるばかりだ
西門からようやく脱出できた俺たちは先が見えない森林に入り込む
薫「今俺たちはどこに向かっているんだ?」
??「この森を抜けたら『サンマウス』って場所があります、その場所にお世話になっている先生がいるのでもしかしたら何か知っているかもしれません」
薫「そうか、じゃあそこに行けば…」
「クソ、どこに行ったー!」
後ろから大きな声が響く、さっきの男二人組が俺たちを追いかけてきている
薫「もうこっちまで追ってきているのかよ」
??「あいつらなら当然なんです」
俺は先ほどから色んな事が起きすぎて混乱し始めている、そのせいで心臓の音がきつい
薫「それはどう言うことなんだ?」
??「あなたの世界はどのような世界なのか分かりませんが、この世界では…」
「そこか!」
少女が話している途中で男達は何をしたのかはわからないが、大きな木に隠れていた木が倒れる
薫「危ねえ!」
??「薫さん!」
俺は少女の体を突き飛ばし、木の下敷きにならない様に木を避けた
その結果、俺は男達…化物達に遭遇する
「おうおう、随分と手間取らせたな!
薫「あんたらその姿は一体…」
運が良かったのは少女はまだ声も姿も見られていない
「それじゃあ、サイモン様のために奴隷になってくれや」
薫「あんたら一体何者なんだ?」
「人間風情が俺たちに話しかけるなぁ!」
角の生えた化物は穏やかな性格ではないらしい
もう一人のギョロギョロした六つ目化物は何を考えているのか、ずっと黙っている
薫(とりあえずあの女の子だけでも逃すことを考えろ!)
薫「勘弁してください、俺はまだ自由に生きたいです!」
「おうおう、自由に生きたいだと?」
化物は大きな顔を俺に近づけて「嫌だね」
怖い笑みを浮かべながらそう答える
薫「…そんな!」
角の化物は俺が絶望したと思ったのか、更に「ぎゃひゃひゃひゃ」と笑い出す
薫(角の怪物が気を緩んだ)
薫「今だ!」
俺は角の生えた怪物の巨大な目玉に思いっきり拳で叩く
角の生えた怪物が目を押さえて悶えている間に俺は全力で走って逃げる
薫「目を傷つけてしまってすみません、俺はまだ捕まるわけにはいかないんです!」
「クソがぁ、ふざけるなあいつ!」
「…」
俺はしばらくの間走りつづけてようやく隠れられるぐらい大きな木を見つけ一息をつけることにした
薫「角の怪物はともかく、ギョロ目の怪物は何を考えているのか見定めないと…」
「みつけたぞ、猿がぁ!」
目の前に怪物が落ちてくる
薫「ここまでか…」
「そろそろ、諦めたら…なんだその構えは?」
薫「ここで死ぬくらいなら最後まで争ってみるさ」
「クソくたばれ、くそったれ!」
薫『明月流武闘術・陰』
「なんで奴に俺の攻撃が当たらねえ?」
俺は8歳から虎さんに習っていた武術の戦術を利用して、相手の攻撃の軌道を逸らす柔らか拳『陰』を使う
薫『明月流武闘術・飛沫』
今度は相手よりも先手を打つ『飛沫』を相手の胸から腹部に目掛けて6回拳を打ち付ける
「!?」
薫(効いているのか?)
角の生えた怪物は俺の突きに対してまた腹部を抱えて悶えている
怪物も人間と同じ生身である事と、怪物相手にも明月流も有効であると言う事だ
薫「まだ 体力あるのかよ」
「クソがぁ、調子に乗るなよ!」
薫「もうやめてください、素人相手に本気で攻撃はしたくない!」
「諦めるのはそっちだ、この女がどうなってもいいのか?」
??「薫さん!」
薫「!」
俺が声をかけられ見た先には、ギョロ目の怪物が少女を人質に喉元に剣を突き立てていた
優勢の立場から逆転し不利な状況になる
そんなことはどうでもいい、何より許せないのは俺の目の前め女の子を人質にしていることだ
おれは…