とりあえずの日常
??「あー、かおるにぃ!」
薫「コウ、サチ、今帰りか?」
??「うん、かおるにぃにただいま」
薫「おかえり」
俺が帰る途中、駆け寄ってくる小学生二人「コウとサチ」に偶然出会ってしまう、このコウとサチは双子で龍の弟と妹だ、龍とは逆に俺のことも慕ってくれている
薫「なんだ今帰りか?」
コウ「うん、にぃも今帰るところだろ?」
薫「ああ、これからやることがあるが問題ない」
サチ「それならにぃにも一緒に帰ろ?」
コウ「その前に、公園で遊ぼうぜ!」
サチ「こう、にぃにはやることがあるって言っているでしょ?」
薫「構わないさ、少しの寄り道ぐらい」
俺を挟んでコウとサチが手を繋いでくる、俺は二人の成長を改めて感じながらも二人の言い合いを見てまだまだ子供だなと思ってしまう
コウ「にぃも言っているんだし、いいだろサチ?」
サチ「だめ、にぃに達は学校や家のことでたくさん頑張って疲れているのに、私たちの体力に合わせていたらにぃに倒れちゃう」
薫(おいおい、俺はまだそんな歳じゃないぞ)
コウ「えー、でも俺どこかに行きたい!」
薫「サチ、俺の体に気を遣ってくれてありがとうな、でも俺はまだ高校生なんだし若いから大丈夫だ」
さち「だめ!」
薫「…困ったな」
確かに俺は中学の頃に夜更かししただけで倒れたことはあるが、最近は夕方の間に全部終わらせているから問題ない、真剣なサチの顔を見ていると反論できない
薫「そうだ、買い物ついでにお菓子も買ってやるぜ」
コウ「え、いいの!」
サチ「でもそれ、にぃにが頑張ってじぃじからもらったお金…」
薫「しっかり使う分を決めているから問題ない、そもそも俺はお前らが好きだからな」
コウ「やったー!」
サチ「…にぃに」
薫「心配すんな、こんぐらいの金お前達のために使える」
俺たちは家の近く(約15分)にあるスーパーにより、晩御飯の材料と切れていた日常品、コウとサチのお菓子を買って、買い物袋を左手に持っているからサチを真ん中にして手三人でを繋いで家に帰った
コウ「あ、じぃだ!」
??「おぉコウ! おかえり」
コウ「ただいま!」
俺が住む滝谷家は長い坂を上がったところにある
その坂を上がり終えると家がすぐ見える、玄関を掃除をしている人物を見てコウはサチの手を離し走り出す、コウがとびついた人物は俺の親代わりとしてお世話してくれている虎だ
薫「虎さん、ただいま帰りました」
虎「二人も一緒か、薫とサチもおかえり」
サチ「じぃじ、ただいま」
背中におぶさるコウを抱えながら、孫を見て緩み切った表情でこちらに手を振る、サチも虎さんに手を振り返す
孫が可愛いのはわかるが、がっつり現役でやっている厳格な武道の師匠とは思えない程、虎さんの表情は豊かである
虎「おぉ、買い物してきてくれたのかありがとうよ、重かっただろうにわしが持とう」
薫「大丈夫です、それよりもコウとサチの面倒をお願いします、玄関の掃除も俺がしておくので」
虎「…そうか」
虎は俺に気を遣っているのか、袋を持とうとしているのか最近腰を痛めたばかりの虎に負担をかけるのは良くないだろう
虎「けど、玄関の掃除はわしがしよう」
コウ「僕も手伝う!」
サチ「私も」
薫「わかりました、じゃあここはお願いします」
俺は虎とその二人をみて、いい家族だなと思いながらクスッと微笑む。三人に玄関の掃除をお願いする、三人は同時に右手を上げて「はい!」と声をそろえる
虎「ところで龍のやつは今どこに?」
薫「龍なら委員会の仕事ですよ、あとまた生徒会の会議に招待されたので二人とも遅くなります」
虎「そうか、まぁいいさっさと終わらすぞ」
コウ・サチ「はーい」
俺はそのまま家に入りご飯の準備と家の洗濯を済ませる、俺が学校に行っている間に虎が家の掃除とお風呂の準備をしてくれたおかげでスムーズにすんだ
晩ご飯の献立は3ヶ月ぶりのシチューだ、コウとサチにも好評だった、ご飯を食べ終えたあとは二人に皿の片付けを手伝ってもらいながら皿を洗い片付ける、その後は風呂に入って寝る準備をするだけだ
コウ・サチ「おやすみなさーい」
薫・虎「おやすみなさい」
コウとサチが寝る前の挨拶を済ませ、俺は乾燥機にかけた服をたたむ、すると虎が俺に愚痴る
虎「全く、お前も龍もアイツらに似ていない様で無茶ばかりするところは妙に似つきおって」
薫「虎さんが俺に愚痴るなんて珍しいですね」
最近ストレスでも溜まっていたのだろうか、虎の小言に付き合うことにする
薫「父さんの話ですか?」
虎「守もそうだが、お前らは鯉と水木にも似ているのじゃ!」
薫「龍はそうでも、俺が二人ともに似ているなんてないですよ」
虎「そこじゃ、そこばかり似るな真似するな!」
虎は相当疲れが溜まっている様だ、無茶苦茶な言い分に「えー」と心の声を漏らしてしまう
虎「ったく、わしのところから頑固者ばかり育ちよって…」
薫「…虎さん?」
振り返ると虎は俺を抱きしめた、俺は戸惑いながらも肩と声を震わせている様子を見て表情は見えないが、泣いているんだとわかった
虎「お前達はあいつらの様な奴にはなるな、お前たちはわしのところから離れるなどこにも行くな」
薫「…大丈夫、大丈夫ですよ、俺と龍はどこにも行きませんから」
俺は虎に優しく背中をトントンとしながらそう諭すと虎は突然抱きしめた状態からいきなり立ち上がり振り返ることなく「寝る」と言って襖をゆっくり閉め自室に向かう
龍「あのジジイ大丈夫か?」
薫「龍、帰っていたのかおかえり」
龍「ただいま」
薫(成程、虎さんは俺に対して愚痴っていたのに龍に見られただけじゃなくて、泣いているところも見られて恥ずかしくて急いで戻ったのか)
薫「つーか、なんでそこから?」
龍「あー、今日は鍵忘れたから玄関開けられなくて裏側のキッチンの窓なら問題ないよなって思って開けたら、お前を抱きしめるジジが見えたんだよ」
薫「…虎さんもなにかと俺たちの知らない所で苦労して疲れが溜まっているんだよ」
龍は「ふーん」と靴を持ってはいってきた所の窓に鍵をかける
俺はキッチンに行き冷めてしまったシチューを再び温める
薫「それで会議はいつになった?」
龍「明日だ」
薫「また、随分と早いなぁ…」
龍「問題はないだろ?」
薫「はいはい、なるべく早めが良かったしちょうど良かったよ」
この時の俺は明日もいつも通りの高校生活を送り放課後は七時まで会議が行われ、内容を聞きながら時が過ぎるんだろうなと思っていた、生活が一転する出来事が起きるなんてあり得るはずないから
薫(なんで、俺がこんなことに…)
空から落ちて体が動かなくなるほど体を痛めて大量の血を流すなんてことが起こるはずないから
キャラNo.2【滝谷 龍】
性別:男
年齢:17歳
血液型:A型
身長:168.9
体重:57.1
性格:真面目
観察記録:
彼は幼い頃に両親が他界し、双子の兄妹の面倒を薫と虎の三人で面倒を見てきた
龍は、よりいい職業に就く為に勉強を常にしているらしい、俺とは絶対に分かり合えないタイプだね
しかし、家族のことを強く想える人物なんて俺の家族にはいなかった、余計に気に食わ…
…いいや、実に羨ましい。
とにかく、これ以上彼の観察はもう不要だ、つまらない人間を観察しても俺の成長につながらないからな