愛情と憎悪
アーサー「家族だと、なら、お前も殺してやる」
龍「そんなことはどうでもいいんだよ」
アーサー「…」
龍「何故お前がここにいる、任務はどうしたんだよ?」
アーサー「カナンが魔物に襲われたとルル先生から手紙が届いてな、任務を部下に任せてここまで来たんだよ」
龍「お前わかっているのか、お前の一番隊は国の重要な任務を担っているんだぞ!?」
アーサー「それこそどうでもいいことだ、これは家族の問題だ」
いつもこうだ、こいつは暴走すると話がズレて反応に困るんだよ、初めて会った時から面倒臭い奴だった
俺は正直、仇なんてどうでもいいんだよ
龍「確かにお前の家族の問題に、割り込むのは野暮だ」
アーサー「ならどけ、俺は家族を殺したあいつを殺す」
龍「家族の問題って言うのなら二人だけで話し合え、俺の家族を殺そうとするならお前を潰す!」
俺はアーサーに刀を向ける、アーサーはさらに険しい表情を浮かべ怖い顔になる
薫「やめろ、龍!」
薫が壊れた壁から焦った様子で顔を出している
その隣にいるカナンは薫を部屋の中に避難させようとしている
アーサー「どけ、悪魔と契約したあの魔女を一人でも残せばこの世に平和は来ないぞ」
龍「何度も言わせるなあいつは俺の家族なんだぞ、武器を下ろせ!」
アーサー「…お前は魔女を庇うのか?」
龍「話を聞かないやつだな、そもそもあいつは男だ!」
アーサーは俺と戦う気になったのかこちらに剣を向ける
確かに俺は薫のことが嫌いだ
それよりもアーサーは家族と仇の話となると感情的になって話を聞かない馬鹿だ
龍(薫よりもお前のそういうところが苦手だよ)
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薫(くそっ!)
今すぐにでも龍達のところにまで止めに行きたい
俺が今動けるのなら、アーサーの目的を果たせばなんとか事は収まるはずだ
薫「なんとか二人を止めないと…」
カナン「薫さん、あなたは兄さんに命を狙われているのですよ!」
薫「だけど、あの二人は争っちゃいけない、武器を向けるなら俺にだ」
カナン(薫さんは見た目の割には結構力が強いけど、今の彼なら私でも移動させることができる、引きずってでも隣の部屋に移動させないと!)
薫「やめろ離すんだカナン、俺はあの二人を!」
カナン「自分から死のうとする人を止めないわけないじゃないですか!」
カナン(顔が真っ青になっている、それだけ自分が止めなきゃいけないと心の底から思っているからだ…)
カナン「とにかく、あの二人は必ず私が止めます!」
薫「君があの二人を止めるだって?」
カナン「そうです、薫さんは悪い人ではないと証明するためです」
薫「君は何もわかってな…!」
首元に強い痛みが走る
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薫は気を失っている、薫からあの二人を止めてと頼まれたのだ、ここで立ち止まっているわけにもいかない
カナン「あの二人は必ず私が止めます」
大きな穴が空いた壁の方へ近づく度に、鈍い金属音が強く大きく響いてくる
カナン「二人ともやめて!」
アーサー「カナン下がっていろ、これは俺達の問題なんだ!」
私の声はこれでもかというくらい大きな声を出していた、しかし、二人の戦いは止まるどころか更に加速する
「なんだ?」
「誰かが、争っているぞ!」
「騎士団を呼べ!」
薫さんを移動している間に人だかりができていた、ここは街の中で大きな出来事が起きれば人が集まるのは当たり前だ
カナン「やめてってば!」
アーサー「!」
二人の動きは止まる
呼びかけで二人の争いは止まらないのなら
私自身が争っている中心部分まで動けばいいことだ
龍「…それで、どうする大人しく話を聞くか?」
アーサー「何を言っている、奴がいる限り俺は…」
カナン「やめて!」
アーサーは私が孤児院に入らない様にルル先生に頼んで仕送りをしてくれる尊敬できる兄だった
けど、今となっては復讐心に燃える兄の姿なんて尊敬はしたくない
アーサー「お前が赤ん坊だったから分からなかっただろうけどな、あいつは…!」
カナン「龍さんから真実を聞いているよ、私たちの母さんを殺したって!」
龍「…」
アーサー「なら、何故お前は俺を止めようとする?」
カナン「あの人は人を殺す様な人間ではないからです!」
アーサー「お前までそんなことを言うのか?」
アーサーは二、三歩後退りをする
彼の目を見て気づいた怯えている、薫の何かに怯えているのだ
アーサー「俺は母が死んだあの時を今でも覚えている、死に対して泣きもせず手についた血を強く握り締めていた時のことを!」
龍「それで、お前は何が言いたい?」
アーサー「俺に笑顔で『俺が殺した』って言ったんだよ」
龍「嘘だろ…」
アーサー「…今日のところは諦めてやる」
龍「…」
カナン「家に帰るぞ、カナン」
アーサーは私の腕を掴む、けど、なぜか今のアーサーにはついて行きたくない
カナン「嫌だ!」
アーサー「何を言っているお前は俺の妹だ、奴のそばに置いてはおけない」
カナン「久しぶりに会ったけどあなたに対して違和感しかありませんでした、あなたは一体誰ですか?」




