牢屋と再会
あれから数週間が経つ、魔物が壊してしまった建物や建造物の復旧が始まっていた
大きく変わったといえば、行方不明だったモビが発見されて、生えている毛が全て白く染まっていて、ふっくらとした体型からげっそり痩せてしまったそうだ
なにより、「意味がない」の言葉を何度も言い続けているらしい
俺はと言うと
薫「だーしーてーくーれー!」
牢屋の中にいた
「ダメだ、疑いが晴れるまでは牢屋にいてもらう」
薫「俺は本当に何も悪いことをしたつもりはない!」
〜三週間前〜
カナン「しかし、あの人は一体誰だったのでしょうか?」
薫「わからない、ただ放ってていい存在ではなさそうだ、あそこは厳重な警備をしているんだろ?」
カナン「そうか、それを突破されたってことか!」
わかりにくいから逃げた人をこれからコートと名づける
俺とカナンはコートの存在について考えていた
コートは魔物ではない、少なくとも法具結界の場所まで知っているこの地域に詳しい人間だ
色々、考えているうちに騎士隊員三名が俺たちところまで向かってくる、俺はてっきりコートの行方について聞いてくるのかと思っていた
薫「え?」
「島原薫だな、お前は結界を壊した共犯として逮捕する」
俺の手首には手錠が付けられた
カナン「ちょっと待ってください、彼は何もしていません!」
「離しなさい!」
薫「弁明をさせてくれ、俺は何も」
??「悪いが弁明なら『ミゲロスト』まで来てもらおうか」
聞き慣れた声、俺の目の前にいるのは俺の幼馴染にして義兄の滝谷龍が目の前にいる
薫「…龍!」
龍「久しぶりだな、島原薫」
〜現在〜
「隊長、おはようございます!」
龍「ご苦労、あなたは見回りをしてきてくれ」
「はっ!」
薫「…なあなあ、龍さんよ」
龍「何だ?」
薫「お前、前より冷たくなったんじゃないか?」
龍「これでも仕事なんでな」
今の俺は結界を壊した共犯として、騎士団2番隊の管理の下、隊長である龍に監視されている
薫「弁明どころか、一方的に入れただけじゃん!」
龍「っふん!」
薫「あー! 今俺のことを笑ったな!」
龍「笑ってなんかいない」
薫「…本当かよ?」
龍「…」
薫「……」
龍「………」
薫「…………」
龍「っふん!」
薫「確実に鼻で笑ってんだろうが!」
俺が何かしたと確信しての行動なのか、何もしていないと確信しての行動なのかはわからないが、龍は落ち着いている
「ご報告に上りました」
龍「それで?」
「一隊長の証言により、共犯は難しい結論に至りました」
龍「わかった、下がれ」
「はっ!」
龍「薫、申し訳なかった」
俺の無実が証明された
龍は俺に深々と頭を下げて謝る
薫「謝らなくていいよ、もしかしてだけどお前、俺のこと疑っていなかっただろ?」
龍「疑っていたよ」
薫「…まあいいや、ところでカナンはどうなった?」
龍「俺の家にいる」
薫「…そうか」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
〜三週間前〜
モビ「ちくしょう!」
この街にいるからには、この俺が絶対だ!
権力が俺より低いやつはどんなやつであろうと、逆らえばゴミ同然だ!
なのに、この俺に武力で逆らいやがって
モビ「特にあの無能力の男だけは許さんぞ!」
??「あなたは、孤独な人だ」
モビ「誰だお前?」
コートをつけた男が俺に声をかけてくる
裏路地にいるせいか、影で顔が全く見えない
??「あなたは、可哀想な人だ」
モビ「誰だ!」
??「失礼、今のあなたは憎悪が渦巻いている」
モビ「顔が見えないな、顔をよく見せろ!」
??「いい事を教えてあげよう」
モビ「なに?」
男はどんどん近づいてくる、そして雨が降る
一歩、また一歩と近づいてくるたびに雨の量は多くなる
??「…雨が降ってきましたね、また今度お会いしましょう」
男と俺はすれ違う
すれ違っただけなのに妙な寒気が残る
はじめての感覚に男に声を掛けてしまう
これは本能で起こした行動なのだろうか?
モビ「ま、まま、待て!」
男は俺の呼びかけに気づいたのかこちらを振り向く、街灯の光で見たものは…
『怒り』で狂った仮面をつけた、コート姿の男だった
そして俺にこう言った「次はどんな場所で会えるのか楽しみに待っています」と嬉しそうな声に心臓を掴まれたような感覚を味わう
モビ「今の奴が『空』の一員か?」
モビ(もしかして、この街の法具結界を壊したのは奴なのか!?)
これは恐怖なのだろうか?
いいや、『虚無』に近い感情だろう…
〜現在〜
「モビさん、しばらく見ない間に何があったんだよ?」
このことを伝えたとして信じてくれる保証なんてない
このことを伝えたと奴らに気づかれたら俺の命は無事とも限らない
モビ「意味ない」
「どうしちゃったんですか、モビさんらしくない!」
『空』のメンバーはいつも住民に紛れ込んでいる話を王都の人間から聞いたことがある、こいつらの中に『空』がこの場にいる可能性だってある
そうだ、奴らが何かしてくるのなら
こちらから何かすればいいんだ!
モビ「意味ない」
いいや、確信があるいつも誰かに見張れている感覚が残っている、あの日に出会ったあの冷たい目線に常に誰かに見られている
モビ「意味ない」
もう、何をしようが意味なんてないんだ




