54,頑張る人は救われる
お久しぶりです。無断欠席は平常運転、乙夜です。
あの……本当すみません。今回はモチベ云々というよりリアルの事情です……。
ということで気を取り直して本文の話題を。
割りと纏まった感じに終わったかのように見せかけて、実は全然ギャザール編終わってません。
結局戻りますしね……(ボソッ)
誤字脱字、感想評価など、いつもありがとうございます!これからも引き続きながーーーい目で見守ってやってくださると感無量です!では、54話どうぞ!
どこか見覚えのあるステータスボード。
飲み込まれそうな漆黒の中、白い文字が揺蕩う。
「これって……」
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技巧値:
武技-----------
‣剣技Lv3
‣短剣術Lv1
‣投擲術Lv2
体技-----------
‣身体操作Lv10
‣護身術Lv2
‣息吹Lv2
魔技-----------
属性魔技:
‣光魔法Lv1
‣闇魔法Lv4
‣影魔法Lv1
‣結界魔法Lv1
‣時空魔法Lv1
無属性魔技:
‣析出Lv1
‣魔力操作Lv5
‣気配操作Lv8
‣魔力遮蔽Lv8
ユニーク-----------
‣鑑識Lv1
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‣努力値
STR;6
ATK;6
VIT;6
DEF;6
INT;6
RES;6
DEX;6
AGI;6
LUC;6
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《特殊ステータス》
‣ハデスの寵愛
‣禁忌
‣デメテルの寵愛
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「待て待て……情報が多すぎる」
鑑定の進化した先には、こんなマスクデータがあったのか。
これは、ガルムが死ぬ間際、俺が鑑定を我武者羅に使ったときに見えたステータスボードのようだ。
とりあえず、ひとつずつ見ていくことにする。
技巧値。
大凡のところは字面で分かる。
GUIの感じからしても、数値によるドーピングの出来ない値、つまり努力によってのみ伸びる、技術の水準の高さを表すウィンドウなのだろう。
気配操作と魔力遮断が一番高いのは、やはり死にものぐるいで使っていたからか。昔とった杵柄とはこのことを言うのか、などと下らないことを考える。
幾つか進化前のスキルも見える。おそらく、白いウィンドウのステータスとこちらの黒いウィンドウは連動しておらず、別々に更新されていくのだろう。
そして、白と黒のウィンドウの表示の乖離が、今の俺のドーピング具合を示していると。
そういう、ことなのだろう。
「ああ、ここにあったのか」
習得はした筈が白いウィンドウには出てこなかった<時空魔法>の姿を認め、思わず声が漏れた。
何故こいつだけこのような扱いを受けているのかは分からないが、ドーピングの出来ないスキル、というものも存在するということがわかった。
それに。
「こんなの、やれって言ってるよな?」
日本人の血が騒ぐ。努力すればするだけ数値として還元される、それがどれほどの喜びになるのかは、言わずもがなだろう。
鍛錬に、身が入るな。
思わず、口角が上がっているのを自覚し、落ち着くために一度考えるのを止め、次のウィンドウに目をやる。
こちらは、努力値とそのまま銘打ってある。
恐らく、だが。
俺がかなり昔に仮説を立てていた、基礎値、に相当するものなのではなかろうか。
EPなどの表記もない上、一つ前のステータスもドーピングの出来ないものだった。ならばこちらも、と考えるのは自然だろう。
では何故こんな不自然な上がり方をしているのか。
俺が努力をした分上がる数値だというのなら、AGIが真っ先に上がるはずだし、こんなに均等に全てが上がるわけがない。そもそも、運とかどう努力したら上がるんだ。
そこで思い出すのが、とあるスキル。
――<淘汰>
贄を用い、何かに換算する、謎多かったスキル。
以前も数回使ってきたが、体が軽くなった感覚はあれど、ステータスに反映されていなかったんだよな。
実は、こっちの努力値の方に加算されていたんじゃないだろうか。
いや、ドーピングできないステータスをドーピングできるって字面からして矛盾しているわけだが。
まあ、仮説は仮説、頭の中にとどめておこう。
――そうだ、今はジェームズを探しに来ているんだ。
最後のウィンドウからは目を背け、俺は目下の探しものであるブルーフェニックスを求めて、奴の巣出会った場所を目指すのだった。
***
「ッ……やっぱり、居る……よな。何が起きてるんだ?」
疾走を続けること暫し、気配察知にやたらと大きい点を感知した俺は、そうひとりごちた。
これだけの大きな気配は、ブルーフェニックスのもので間違いないと思う。
だが、問題なのは、そのブルーフェニックスは既に死んでいる筈だ、ということと。
ブルーフェニックスの側に、――比べてしまえば風前の灯のような――小さな反応がある、ということだ。
一体、何が起きている。
とりあえず、今までは速度重視のために木の上を飛び移って走っていたが、念を入れて地面から行くことにする。
流石に、地面のほうが体の重心が安定するし、気配も消しやすい。
加えて、久しぶりに本気で気配を隠すことにする。
気配操作、魔力遮断、護身術・極、そしてダメ押しの影魔法。
自然に、世界に溶け込む。そこに存在していながら、それと気づかせないような、完璧な隠蔽を。
以前にヤツと相まみえたときよりは、俺も強くなっている。負けることは無い、筈だ。
――戦うこと前提か。
思わず自分の思考の偏りっぷりに苦笑した、その時。
「――約通り、私が――」
研ぎ澄まされた感覚が、声を拾った。落ち着いた、よく通るバリトンボイス。
この世界の住民が誰一人として近づかない筈の、絶望の森。その最深部には、酷く場違いな音だった。
「……ジェームズ、だよな」
ぽつり、と。小さく呟いてから、慎重に近づいていく。
見えた。
そこにいたのは、およそありえない組み合わせ。
何かを訴えているかのように見上げるジェームズと、それを睥睨するブルーフェニックスだった。
非現実に過ぎる組み合わせに、一瞬混乱する。
――――ゥゥルルルルゥゥゥ……
ふと、ブルーフェニックスが鳴き声を上げた。俺には、ただの遠吠えにしか聞こえない、威圧的なボイス。
だが、その鳴き声を聞いた瞬間、ジェームズの態度がはっきりと変わった。
「……何故だ!?元来契約では当主のみの筈だろう!そもそも私に家族などいない!」
――何だ?何の話をしている?
「断じて嘘などつくものか!そも、貴殿も先程飛んで確認してきたのであろう!?」
今まで俺が見たこともないような必死の形相で、ジェームズがまくし立てる。
話がよく見えてこない俺とは対象的に、ブルーフェニックスは一声。そう、まるでジェームズを嘲るかのように鳴いたあと、その羽根を力強く振り下ろした。
「くっ……また確認にでも行くつもりか!?どこまでも執念深い……!」
瞬く間にその巨体を消したブルーフェニックスの方向を向いて、憎悪を隠そうともせず毒づくジェームズ。
そして、今だ状況を理解できない俺だけが、その場に残された。
――どうする。
今とる選択肢はふたつ。
ひとつ、帰ってくる可能性が高そうなブルーフェニックスを待つ。
ひとつ、今姿を表し、ジェームズを問い詰める。
どうやら、ジェームズにも何らかの事情があるようだ。何一つとして言わせぬまま暗殺、では流石に目覚めが悪すぎる。
家族がいない、という発言も気になる。ジェームズには妻も娘もいたはずだ。なぜそんな嘘をつく必要があったのか。それに、契約とは何なのか。
――まあ、結局、な。
選択肢を出してみたは良いものの、ほとんど最初から腹の中は決まっていた。
ジェームズに向かって一歩、足を踏み出した。
あったかもしれないこんな会話――――
俺は、王都とは逆の方向を目指して走り始めた。
目指すのは、絶望の森。
いざ、ゆかん――――。
「……なあ、あいつ少しずつ道それていってるような気がするんだが気のせいか?」
「……奇遇だねギルマス、私もそう思ってたところ」
「もしかして、さ」
「「方向音痴?」」




