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43,鎮圧



「何やってやがる!」


俺が隠れ家に堂々と入るが、誰一人気付かない。

というより、まず誰もいなかった。

代わりに、下から怒鳴り声が聞こえてくる。多くの気配反応もあるし、アジトが地下にあるのは間違いないだろう。


問題は、どうやって地下に行くか、なのだが。


……まあ、力押しでいいか。


脳筋などという言葉は知りません。



「ハッ」


軽く息を吐きながら床を足で踏み抜く。


バキィッ!


豪快な音とともに木片をまき散らしながら、床の木に穴が開いた。

そこには、明らかに不自然に大きな穴がぽっかりと口を開けており、階段が下へと続いていた。


「何が起こったァ!おい、てめぇ見てこい!」


下でも大騒ぎになっているが、構わず階段を下りる。

途中、顔が腫れたやせ気味の男とすれ違ったが、当然の様に気付かれなかった。



思ったよりも長い階段を下りる。


するとそこには、乱雑におかれた武器の数々と、好き勝手に散らばって食べ散らかしている人相の悪い男たちがいた。


割と広いその石造りの空間の奥には、頑丈そうな扉が付いており、まだ奥に部屋があることを示す。



「多分あれか」


穴を見つけ、騒ぎ出す男どもを横目に見ながら、扉を目指す。

恐らく、重要な資料や溜め込んだ財宝は別の部屋で管理しているだろうという考えだ。



こんな汚部屋においておいたら一瞬のうちに紛失する気がするしな。



小走りで扉へ向かう途中、二メートルは軽くあるような筋骨隆々の男がいたが、特に気にすることなく通り過ぎる。


「さて、と」


軽く押したが、扉も開かない。

ということで、物理に頼ろう。


「ふっ」

「「「「!?」」」」



扉を拳で粉砕する。


破片が飛び散り、近くにいた男たちの皮膚に傷をつけた。

轟音に男たちが驚き振り返るが、彼らの認識に俺はいない。



そのまま扉の奥に入り、元素魔法(土)で壁をつくる。


つくった壁の後ろ、つまり俺が通ってきた汚部屋で、男たちが何やら喚いていたが、これもスルー。



扉の奥にいた神経質そうな眼付きの男の意識を秒で刈り取り、机の上に積まれた資料に目を落とす。

どうやらこれは、何処かの貴族との裏取引の証明書の様だ。


貴族が麻薬の販売に手を貸す代わりに、その利益の一部を貴族に流すという、まあありがちな悪事だ。

これも、汚職貴族を失脚させる証拠にはなるだろう。


他にも漁ってみるが、殆どは貴族関連のものだった。

というか、貴族関連以外の資料など残さないのか。


貴族相手だと、平然と契約を破られることもある。

少しでもその確率を減らそうと、契約書を作って保存しておくことが多いとはジェームズの談だ。


だから、ジェームズのことを貶めようとした貴族との資料も保存されている可能性が高い、と言っていたが……。


「……あったな」



資料の中に、一枚の紙を見つけた。

そこには、アリアの誘拐について関連している貴族の名がしっかりと記載されていた。


「ヴェルディ家……。聞いたことないな」



どうやら、ヴェルディ家当主がこの誘拐に加担しているようだ。

これは持っていった方が良いだろう。

あと、この家には近づかないようにしようと心に誓った。


他は、直接の関係はないので、ここを制圧した後に回収するので大丈夫だろう。

ちなみに、他にヴェルディ家との契約書はなかった。



こっそり土壁の強度を弱めておく。

具体的には、男たちがギリギリ壁を壊せるぐらいの強さに。

……の、つもりだったのだが。


「壊せ壊せェ!」

「むっ、無理です!硬すぎます!」

「あァ?つっかえねぇなァオイ。どけ、俺がやる」


そんな会話が聞こえてきたので、少しだけ遊びたくなった。


硬さを基に戻す。


「オッラァア!――チッ」


自信満々に名乗り出た男が何かで壁を殴りつけるが、びくともしない。


「――――俺は上を見てくる。お前らさっさと壊しておけよ」


そう捨て台詞を吐いた男に吹き出してしまった俺は悪くないだろう。


「……」


周りにいるであろう男たちも言葉が出ていない。

何というか……滑稽、というような言葉がしっくりくるような、ちょっとイタい子だったな。


面白いものが見れたので、土壁の強度を再び弱くしておく。


「なんだあいつ、壊せなかったくせに偉ぶりやがってよ」

「やめとけ止めとけ、聞かれたら殺されんぞ」

「チッ」


残された男たちのうちの一人が愚痴を零し、腹立ち紛れに壁を殴る。


「「「……あ」」」


すると、今までびくともしなかった土壁に、大きな穴が開いた。

まあ、俺が調整したんだけども。


男たちが何だか騒ぎ始めたのを無視して、穴から出る。

一応、資料を燃やされたり破られたりすると面倒なので、穴から出た後再び壁を張った。


「これくらいなら……やれるか」


部屋をぐるりと見渡す。

中にいるのは、ざっと30人。


上を見に行った奴も何人かいるだろうから、35人ぐらいと見積もっておこうか。

なんにせよ、随分と弱い。


ガルムを基準として考えているのだから当然かもしれないが、殆どがガルムの足元にも及ばないレベルの実力しか持っていなそうだ。


まあ、所詮は素人の観察眼なので、外れている可能性も大いにあるのだが。


……一応、殺さずにおいておくか。



使い道があるかもしれないので、一応殺さずに無力化させることにして、動き出す。

といっても軽く走り回りながら軽く頭を叩いて脳震盪を起こし、気絶させる単純作業。


サクッと終わらせることにしよう。


何故いかにもな書類が堂々と名前付きで置いてあるんでしょうねぇ……?

乙夜「ま、脳筋ベル君にはこの違和感は分かるm――――」


ベ「……お、なんだ、血はきちんと通ってたのか。血も涙もないものかと思ったが」

乙夜「―――――ぁぁぁああい!あっさりと作者を殺すんじゃないよ!死んだじゃん!」

ベ「死んだなら大人しく死んどけよ……」

乙夜「ねえ立場わかってる?作者乙夜なんだよ?なんでそんな尊大な態度取れるの!?」

ベ「ふぅ……眠いな」

乙夜「ッッッッッッ!!(血管の切れる音)」

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