3,目覚めと
迷走していますが、大体2000~3000字を目安にしています。
おすすめがあったら、是非コメントにて。
誤字、脱字等報告もありましたらコメントにてお教えください。
何かの叫び声で、目が、覚めた。
「生きてんのか……」
最悪な目覚めではあるが、目覚めがあったことに心の中で喝采して、立ち上がる。
「体が……治ってる……!?」
流石に有り得んだろ。
あんな状態の体を、傷ひとつ無い状態に戻すとか、現代地球の技術でも不可能では?
まぁ、流石に服はどうしようもなかった。
立ち上がった拍子に、細かい破片のようなものが全身からぽろぽろと落ちる。服、だったものだ。
「ま、儲けものってことか」
正直細かいところに拘っていられない。いや、細かくないんだが。
とりあえず、今は歩ける。その事実が大事だ。
「どっかにセーフティエリアでもないかなー……」
ぼやき、足を踏み出そうとすると、ふと何かが引っかかった。
「……こっち、か?」
足を逆方向に向けると、違和感が消える。
再び足を戻すと、違和感が生じる。
「……呼ばれてんのか……?」
何故だかはわからない。だけど、今のこの状況は、そう呼ぶのが正しい気がした。
「行ってみるか」
どのみち、行く当てもない。止まってて生きていられる自信もない。
ならば、進むのみだ。
「あ、ていうか動いてても気配隠蔽つかえるっぽいな?」
途中で襲われるのではないかという懸念が少しだけ和らいだ。
そもそも通用するのかという根本的な疑問は置いといて。
***
歩き続けて3時間ほど。
そろそろ足が疲れてきた。
と、そんなどうでもいい報告は置いておくとして、朗報。
どうやら、俺の気配隠蔽は十分ここの連中に対して有効らしい。
歩いている途中に、何体か見たこともないモンスターどもと何回か遭遇したが、一度も気づかれることはなかった。これで俺の死期は少し遠のいたとみていいだろう。
まあ、近くにいるたびに俺が足を止めて息をひそめていたのもあるのかもしれないが。
まあ、用心は引き続きしておくとして。
問題は、着々と強くなるこの感覚だ。
‘導かれている感じ’と言えばいいのか。
それが、だんだんと強くなる。
目的地は、近いようだ。
***
周囲に敵がいないか、必死に意識を張り巡らせながら歩いていると、唐突に開けた場所に出た。
「うわぁ………!」
思わず声が出てしまった。
しかし、本当に、それほど綺麗な、幻想的な風景が、そこに広がっていた。
小さな公園ほどの面積の、開けた台地。
中央には、滾々と湧き続ける澄んだ泉。
周りの背の高い木々が伸ばす枝葉が遮り切らない木漏れ日が、綺麗な泉の水を輝かす。
泉の周りに生える背の低い青草も、穏やかな風に揺れている。
こんな死地にあるとは思えないほど、長閑な場所だった。
「―――なッ」
そんな場所に、導かれるままに足を踏み入れた瞬間。
ぐにゃり、と。視界が歪む。飛び退ろうとするも、体は、言うことを聞かない。
次の瞬間。
先程までは間違いなく無かった、古ぼけた剣が一本、木漏れ日の中地面に突き刺さっていた。
忘れられた地。
そんな言葉が、ふと浮かんだ。
それと同時に、はっきりと理解した。
俺を導いていたのは、この剣だ。
「引いて……良いのか……?」
流石にこの幻想的な雰囲気を壊すのは気が引けてしまう。
だが、先程から俺を呼んでいる声はどんどんと強くなる一方だ。
抜けということなのだろう。
俺は剣に歩み寄り、柄に手を置いた。
「―――――ッぐ、ぉぉぉおお………!」
出来るだけ声を出さないようにしつつ、本気で引っ張る。
「っはぁ、はぁ、はぁ…………無理」
絶対無理。
ステータス上げるしかない。
―――――――――――――――――――
EP:2
基礎値-------
STR;5(↑3)
ATK;0
VIT;0
DEF;0
INT;1
RES;1
DEX;2
AGI;5
LUC;2
―――――――――――――――――――
STRを3つも上げて再挑戦。
結論から言おう。
無理☆
硬すぎる。
まるでびくともしない。
AGIの上り幅からして、恐らくこの世界でステータスが1違うのでは相当変化があると思ったのだが、それでも駄目らしい。
取りあえず、どうしようもないから放置で。
***
「なんかなぁ……食料あったし、水もあるし……レベル上げたい」
サバイバルの基本中の基本、食料と水。
なんだが、この森には結構色々と食べれる果物とかが自生していることが、鑑定で分かっていて、いくつかはもう採ってきている。
水は言わずもがな此処の泉の水だ。
滅茶苦茶美味しかった。
果物も水も。
で、とりあえずモンスターを考えなければ生きる目途が立ったところで、自分の状況を再確認してみて思ったわけだ。
レベルを上げたい。
勿論、バトルジャンキーとかそういうわけではない。
レベルホリックでもない。ないったらない。
単純に、この森で暮らすためには、ある程度自衛ができないとどうしようもないのではないかという不安が常に纏わりつくからだ。
あとは、単純に強くなってこの剣を抜きたい。
今も剣が自分を抜くように俺に働きかけているような気がする。
集中するのに少し邪魔だが、それを逆手にとって、此処に帰る目印に出来るから良しとする。
あとは、ずっと気を張り巡らせていたからか、新しいスキルを手に入れていた。
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SP:15
武器スキル:
武具-----------
‣暗器Lv1
魔法スキル:
回復-----------
‣二重息吹Lv2(↑1)
特殊スキル:
自衛-----------
‣暗殺Lv1
‣護身術Lv1
技能-----------
‣気配隠蔽 Lv7(↑1)
‣気配察知 Lv1(new!)
‣魔力遮蔽 Lv2
ユニークスキル:
‣貪欲ナル異端者 La 1
‣鑑定 La 1
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気配察知。効果は名前の通り、周囲の生体に対して反応して俺に居場所を教えてくれるスキルだ。
もしかしたら、ずっと俺が周囲に気を遣いながら歩いていたのが効いたのかもしれない。
ともあれ、俺がこの森で生きるためには、必須といえるであろうスキルを獲得できたのは大きい。
あとは、気配隠蔽もレベルが上がっている。また少し安心できる要素だ。
一緒に使っているのに魔力遮蔽のレベルが上がらないのが気になるが、まぁしょうがない。
二重息吹は、パッシブスキルのようで、とても助かっている。
というかこれがなかったら、何の訓練も受けていない俺が3時間も足場の悪い森を歩き続けられるわけがない。
ご都合主義様様だ。
読む側は白けても、自分で生きるのにはそんなこと言っていられない。むしろ大歓迎だ。
「取り合えず、方針か」
この聖地を穢すことにならないか躊躇しながら、腰を下ろし、方針を考える。
念のため、気配察知は続けながらだが。
1,モンスターを狩れるようになって、レベルを上げる。
2,剣を抜く。
3,この森で簡単に死なないようになったら、この森から出る目途を立てる。
こんな感じだ。
今すぐにでも森を出ていきたいのは確かだが、何処に行けば森を抜けれるのかもわからない。
それに、場所によってモンスターの強さが変わることはゲームじゃお約束だ。
それが弱くなるのであればいいが、強くなっていき、俺の気配隠蔽が通用しなくなったなら……。
その時が、俺の死に時となる。
まだ死にたくない。
強くなる算段だが、あの猿を殺せた。ならば、あの猿の同族は殺せる、筈だ。
殺せたという事実。
それが大きい。
味を占めたとは違う、と思う。
自信というか。
運がよかった。偶々だった。
それでも、この森のやつらに対抗できた。
そんな自信が、あった。
俺はこの森で、生きていく―――――。
別にハートの器を集めないと抜けないわけじゃないですよ?
「面白い」「続き早よ」と思ってしまったそこのあなたは、大人しく舌打ちをしながら星を五つつけるのです!!