35,失敗と挑戦
その日の午後。
俺は久しぶりに混沌の森の奥まで来ていた。
というのも、少し実験がしたかったからだ。
街に近すぎると、どうやら魔法使いにダメージが言ってしまうようなので……。
俺が今確かめようとしていること。
それは、《無銘ノ剣》の宝玉のようなものを、自作できないかということだ。
あの宝玉は、何故か鑑定が出来なかったのだが、どことなく魔石に近い雰囲気がしたので、純魔力の析出で作れるのではないかという浅い考えのもと、俺は被害の出なさそうな混沌の森まで来たわけだ。
絶望の森だと、流石に無防備に立っていると殺されかねないから、混沌の森にしている。
絶望の森の奴らは、俺の結界も貫通しうる攻撃力があるからなぁ……。
意識を、体内の魔力に向ける。
純魔力を、そのまま体外に出す様に析出する。
サファイアをつくったのと同じように魔石が出来ていく。
そこに、イメージを加える。
何も考えずに作ったあの時とは違い、明確な方向性を持たせる。
段々と透明になっていく魔石は、方向性を与えられて変質し――――。
「―――――ッ!」
何かに耐え切れず、破裂した。
咄嗟に結界を展開したが、貫かれた。
俺に純粋な魔力がぶつけられる。
物凄い勢いで吹き飛ばされた俺は、木々を貫通しながら50メートルほど進んだところでようやく止まった。
「―――――カハッ」
背中を強かに打ち付けたことで肺の空気が漏れ出る。くそ、いってぇ……。
強すぎるだろ威力。
「失敗、か……」
何がいけなかったのだろうか。
なぎ倒された木々を見ないようにして、考察に入る。
耐え切れずに破裂する寸前、俺が感じた感触は、「無理」というものだった。
何というか、この方法では無理だ、と。
《直感》が、そう囁いている。
何が駄目だったのか。
宝玉がどうやって作られているのか分からないと、どうも無理そうだ。
鑑定を進化させるのは、割と必須かもしれない。
***
「ベル!」
宿に帰ってきた俺が、食堂でのんびりと果実水を飲んでいると、覚えのある声が聞こえた。
「ガルム」
「今暇か?ちょっと依頼を受けているんだが、お前さんも来ないかと思ってな」
「なんでまた俺に」
「強い奴がいたほうが安心だろ?」
どうもガルムは俺を買い被っているような気がする。
その信頼の目線が痛い。
「……内容による」
「グレシアルの魔核を集める依頼だ。まあグレシアルの討伐依頼だと思ってくれていい」
「―――絶望の森に行くつもりか?」
「ん?いや、あんな魔境、行くわけないだろうが。行くのはアカディア洞窟だ」
なんだ、他のところにもグレシアル居たのか。
アカディア洞窟……。<ギャザール>の西にある大きい洞窟のことだ。
この洞窟で現れる魔物は、体内に鉱石を蓄えていることが多い。
ギャザールの西区に鍛冶屋が多いのは、鉱石が採れるアカディア洞窟が西にあるかららしい。
「あそこに出るグレシアルはな、鉱石の中に魔核を持ってるんだ。だから、魔核を集めるついでに鉱石も集められて、一石二鳥ってな」
「……」
「……だが、出てくる魔物が軒並み硬くてな……。まともに鉱石として入手できるかは、技量次第ってとこか」
メリットばかり話していて、どうにも怪しかったので無言で見つめると、勝手に慌てて情報を追加した。
「――分かった、行こう」
特に断る理由もないので、俺はついていくことにしたのだった。
***
「紹介しよう、俺がリーダーを務めるパーティ【踊る炎】のメンバーだ」
「前衛魔術師のラーよ」
「僧侶のメネです!」
「僕は後衛魔術師のエル」
「シーフとタンクを兼任している、ベラルツです」
「……ベルだ。一応、剣士とシーフが出来る」
「何が一応、だ」
茶々を入れるんじゃない、ガルム。
「というか、パーティか」
「おう、そうだが?」
「いや、何でもない」
そう言えばそうか。ガルム単体の訳がなかった。
思ったよりいて吃驚したが。
ちなみに、遅まきながらだが、自己紹介などで言われる「前衛魔術師」「後衛魔術師」「剣士」などは、あくまでロールであり、ジョブの話ではない。
命綱である自分の情報を簡単に他人に教えられるわけがない。
剣士……実際は剣を使うものに定義されず、近接武器を扱うもの全般を指す。ダメージテイラーとしての側面を持つ。アタッカーとも呼ばれる。
壁……敵のヘイトを稼ぎ、味方への攻撃を代わりに受けるロール。主に回避型と耐久型に分かれる。タンクとも呼ばれる。
前衛魔術師……攻撃魔法を操る魔術師。ダメージテイラー。ウィザードとも呼ばれる。
後衛魔術師……支援魔法を操る魔術師。バフ、デバフを主に請け負う。あまり派手な活躍はできないものの、とても重要な役割。バッファー・デバッファーなどと呼ばれることもある。
盗賊……主に斥候としての役割を持つ。特にダンジョンなどでは必須であり、多くのパーティが欲している。剣士などが正面から敵と戦っている間に、背後に回り込むなど、戦場をかき乱すような役割を担うこともある。シーフと呼ばれることが多い。
弓士……弓などの遠距離攻撃を主とするロール。スナイパーなどと呼ばれることもある。
僧侶……ダメージを受けた仲間を回復させる、パーティの要。ヒーラーとも呼ばれる。
などなど。
大体がこのロールの中に居て、パーティを回していくのだ。
俺は、剣士、魔術師、盗賊のロールができるわけだ。
壁も、回避型として考えれば出来る。自分の回復だけで言うならできるわけだしな。
弓士は、まあできないこともないが、DEX頼みの力押しなので、自分から出来ると言うことはないだろう。
「ガルムが言ってたやばい奴ってその子よね?」
ラーが口を開いた。ラーは、動きやすそうな軽装に身を包んでいる、背の高い美人だ。
長い赤髪は結わえられ、戦闘時の邪魔にならないようにされている。
「ああ」
「おい、ヤバい奴ってなんだ」
「混沌の森の奴らが片っ端からワンパンの時点で可笑しいだろうが」
「えぇー……ワンパン」
「……別にガルムでもできるんじゃないのか?」
ガルムが言った、ワンパン、に反応して顔を若干引きつらせたラーに疑問がわき、ガルムに訊く。
「うーむ……出来ないことも無いかもしれないな」
「ほら見ろ、別に俺が可笑しいわけじゃない」
「これでも俺は一応Aランク冒険者なんだが……。それに、お前さんみたいにスパスパ斬りながら走るなんて芸当は無理だ」
「ふーん……まあ剣が良いからかもな」
装備のせいにしておく。
ガルムの疑う視線が刺さるが、無視する。ポーカーフェイスは得意だ。
「それより、ベル君のロールは何処にするんですか?」
と話を戻したのがベラルツ。ベラルツは、これまた長身の美男子。ライトブルーの髪は、チーム名にはあまりあっていないようにも思うが。
「正直、あれだけの隠密が出来るのなら、シーフをやって貰いたいと俺は思っている」
「へぇ……ガルムがそう言う程なんですね」
すぅ……とベラルツの深い蒼の瞳が細まった。
「同じシーフとしては、ベル君に本当にシーフを任さられるのか確かめないわけにはいかないですね」
はてさて、何がいけないのでしょうか……。
ベル君が頑張って作ろうとしている宝玉は、今のベル君のやり方では作れなさそうです。
ベル君と他の人がつるむシーンが書きたかったので、捩じ込みました!!
何話か、パーティと行動する予定です!
では、また次回!




