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31、妖刀と少女

剣を取られてから一週間、俺はのんびりと暮らした。

ギルドの依頼を受けたり、街を探索したり。


あの串焼きを売ってる男と話して、ずっと北の方に王都があることを教えて貰ったり、アルルと名乗った彼が、元冒険者だと聞いたりした。

なんで引退したのかは聞かなかったが。踏み込んでいい領域と、そうでない領域というものがある。


***


ミーナやギアとも、中々に仲良くなれたと思う。

ガルムともたまにギルドや宿であっては話す仲だし、



一週間後。

俺は再びあの変人ドワーフのところに赴いた。


勿論、剣を取り返しに行くためだ。


「おーい、居るか?」

「おう、来たな坊主!」


店に入ると、腕組みしたドワーフが待っていた。

その目の前の机に置かれているのは……抜き身の刀。


漆黒に光る刀剣に浮かび上がる流麗な乱れ刀文(はもん)

見事なまでに肌がつみ、光を柔らかく反射するその様は、ある種の迫力を醸し出している。

柄や目貫に彫られた繊細な(こしらえ)が、刀そのものをひとつの芸術品として完成させる。


息を呑む俺を、満足げに見たドワーフが口を開いた。


「会心の出来だ。お前が銘を決めろ」

「……俺でいいのか?」

「ああ」


刀身を、じっと見つめる。



「―――――――――夜桜」


そんな言葉が、ふっと浮かんだ。


黒い刀身の中に光る銀の刃先が、夜に咲き誇る桜の様で。




「夜桜かぁ……いいじゃねぇか。この刀にぴったりだ」


そういうと、ドワーフは(なかご)に銘を刻んでいく。

やがて、名を刻み終えると、一瞬銘が光り、そして何事もなかったかのように沈黙した。



「……ほらよ、お前さんのものだ」


そういうとドワーフは、《夜桜》と、《無銘ノ剣》を持って俺に渡してきた。



「……良いのか?」

「ああ、勿論。そのために作ったんだからよ、しっかりと使えよ?」

「―――有り難う」

「そうだ。まあねぇとは思うが、もしこの剣に嵌まっている宝玉みたいなのを見つけたら、俺のところにもってこい。その刀に仕込んでやる」


そう言って彼が指さしたのは、《無銘ノ剣》の柄に嵌まった紅い宝玉。


「その宝玉に、何かあるのか?」

「オイオイ、知らないで使ってたのかよ……。大有りだ馬鹿野郎。その剣、色々と特殊能力がついてるだろ?その能力は、宝玉の効果なんだよ」


成程。その説明を聞いて、少し俺は思いついたことがあった。


「ああ、見つけたら必ず持ってくる」

「そうしろ。あと、ほら。鞘もやる」


そう言って何気なく渡された鞘は、黒い下地に金で桜が吹雪いている意匠だった。

思わず、言葉も出ずに見とれてしまった。


「―――――凄い、な」

「当たり前だろうが」


思わず漏れた感嘆の声に、ドワーフは少し照れ臭そうにそう言った。


「いくらだ?」

「ん?金はいらねぇよ。俺が勝手に作ったんだ」

「いや、流石にそういうわけにはいかないだろ。こんな良いものなんだ、正当な対価はあるべきじゃないのか」

「……そう思うんなら、時々俺に刀を持ってこい。高額で手入れしてやらぁ」

「……そうか、有り難う」


照れ隠しなのは間違いないが、ドワーフが引く気配はなかった。

せめて、大切に使おう。



「ああ、言い忘れてたな。俺の名前はパラケル、世界最高峰の鍛冶職人だ」


***


パラケルの自慢が入ったのち、俺は本題を思い出した。


「そういや、指輪をつくって貰おうと思ってたんだ」

「おう?生憎とウチは完全紹介制だが……紹介状はあるか?」


そう言われたので、ギルマスからもらった紹介状を渡す。


「おお!なんだ坊主、ギルガメッシュの知り合いか!なら言う事ねぇ、何をつくるんだ?」

「これに合う指輪をつくって貰いたい。戦闘に耐えれるように頑丈に」


そう言いながら、俺は影から例のサファイアを取り出した。

直接持つと危ないので結界で守っている。



「ッ!」


パラケルは無言で俺の手からサファイアを奪い取り、何かの台の上にそっと乗せ、若干充血した目で凝視した。

既視感があるな。


たっぷり10秒程眺めた後、おもむろに溜息を吐いた。



「……おい、坊主。これは何処で手に入れたんだ?」

「自作だ」


目が怖い。据わった目でこちらを睨みつけるようにして聞いてくるパラケルに自作だと返すと、パラケルは眼を大きく見開いて驚いた。


「こんなもんが自作だとぉ!?―――坊主、てめぇナニモンだ?」

「さぁな。ただの、Cランク冒険者だよ」


そう嘯く。


「はぁ……。まあいい、それを訊くのはご法度だったな。で、これを指輪にするんだな?」

「ああ、頼む」


するとパラケルは、ひとつ大きく頷き、自信満々に言い切った。


「最高の出来に仕上げてやる。明日、取りに来い」



***


店を出る。暇になってしまった。どうしようかと悩んでいた時に、ふと気配探知に反応があった。


脳内マップと照らし合わせると、そこは人通りの少ない裏路地で。

そこに、三つの気配があった。


何となく、いやな予感がした。

《直感》を信じて、俺はその方向に跳ぶ。

屋根の上を駆けるのは、案外楽しいものだと知った。

今度夜中の散歩でもしようかな。


***


「放してください!」


若い娘の、嫌がる声が聞こえた。

はぁ。なんでこう、嫌な予感というものは当たるのか。


気配を消して近づけば、ガラの悪い男二人が、何やら綺麗な服装の少女を囲んでいるところだった。

テンプレか。というかあの少女、嫌な予感がする。


「良いから黙ってついてこい!……おい、なんで猿轡を持ってこなかったんだ」

「知るかよ!もとはと言えば、てめぇが気絶させるとか言っといて失敗したのが悪いんだろ!?」

「あんな魔道具持ってるんなんて分かるかよ!」


余り仲は良くなさそうだが、どうやらただのタチの悪いナンパではなく、計画的な誘拐の様だ。

まあ、どちらが悪いのか考える必要はなさそうだな。


「……何をしている?」


男の背後に回り、肩を握り潰しながらそう問いかける。


「――いッ……ででででででででで!!」

「はぁ!?お前、いつの間に!?」


肩を握り潰された男はただ痛みにのたうち回っている。

もう一人の男と、少女は眼を見開いて驚いている。


「誘拐されそうだった、で良いんだよな?」

「―――あっ、は、はい!!」


驚きにかたまっていた少女に話しかけると、少女はぶんぶんと頭を縦に振った。



「てことで、眠れ」


殺しはしないように手加減して、二人の男を手刀で気絶させる。

瞬き以下の時間でことを終えると、俺は少女に話しかけた。


「大丈夫か?」

「――助かりました!有り難うございます、この恩はジェームス家の名に懸けてお返しします!!」


上目遣いでそう言う少女に、俺は嘆息せざるを得なかった。

嫌な予想が当たってしまった。


「貴族様かよ……。なんでこんなところに居たんですか?」

「あぅ、ちょっとそれは、その……」


言い淀む少女に、面倒事の予感がした。


***


感想、レビュー、ブクマ、評価待ってます!

パラケルについてのお話は今度出てくる予定です。

何故親切に主人公に武器を作ってくれたのかなども後々判明する……予定です。

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