水の住人
私のスマホの防水ケースはダサい。なんか、やぼったい。だけどこれがないと海で遊べないし、お風呂で洋楽も聞けないから、渋々使っている。お金がもっとあれば良いのに、と何時も思うけど、じゃ、遊ばないでお金を貯めれば? と言う親友の声は聞こえない振りをする。
私はちょくちょく海に行く。海に入り、さらりと泳ぐ。本格的に泳いでいたあの頃を思い出すと少し心は痛むけど、こうやって水と戯れることが出来るだけ、ありがたいと思うようにしている。
水球が出来なくなってかれこれ2年……まだまだ2年しか経っていない。私はまだ立ち直っていないと自覚している。だけど、そろそろ受け入れようかな、と思い始めてもいる。この現実に。
プールに入るのは正直まだ抵抗がある。海開きをした途端、私のフィールドは海になる。だけどシーズンが終わると、またプールに戻る。水に浸かってないと駄目なのだ。水にすべてを包んでもらえないと、寂しい。
そういうと親友は少しだけ頭を傾げて、私の目を見つめてくれた。それで少し、落ち着く。
「あんたは水の住人なんだわ。きっと」
水球が出来なくなっても、私は水の住人なんだから、水に浸かっていても良い。
「なんだ、そりゃ」
笑い飛ばそうとして失敗した。ぼたぼたこぼれる涙を必死で拭ってまた笑い飛ばそうとする。
「人魚って呼んであげるわ」
思わず吹いた。涙も何処かにいった。