可愛い可愛い妹の子供
いつまでたっても子供は子供で、少し嫌になる……いや、大分嫌になる。なぜそこでごねる。そしてなぜそこで仰向けになって手足をバタバタさせる。
妹がどうしても行きたい所があるらしく、私は子守を買ってでた。だけど。
「智くん、もうやめて」
どれだけなだめすかしても、一向にじたばたを止めてくれない。他人の目が気になるのはもうとうに過ぎた。なんだかほんとに……我が甥ながら情けなくて、その情けなさを通り越してどうでも良くなってきた。だから私はその両手を引っ張ってとりあえず往来から外れたところで手を離した。
「さぁ、思う存分、暴れるが良い」
子供は子供、承認欲求が強い子なんだろう。……その親である私の妹もそうだったから。
私が私の意見を言えなくなったのは、妹も荷担していると思う。所謂「お姉ちゃんだから」病だ。年が少し離れていることもあって、誰もが妹に夢中になった。そして、誰よりも私が夢中になった。妹はこの甥と同じように自分の意見が通らないと暴れる。私は妹がかわいいから、子供も甘やかした。
だけど、その可愛い可愛い妹の子供が可愛いとは思えなかった。所詮、妹と男の血が混じった、妹成らざる存在。
「ごめんなさい……」
ややあって聞こえてきたのはそんな声。なんならもっと暴れていれば良いのに。さて、私は上手く笑えていたのかしらね。