猫目
帰り道にたまに見る猫は何時もこちらを見ているから、なにかをやろう、と思い付いた。急に。だけど猫を飼ったことはないし、実際眺めているだけで満足していた部分もあるから、いざとなると何をして良いのかさっぱりわからない。明日も多分いるだろうから、とりあえずショッピングモールに行ってみた。
ペットショップに足を運び、そこに並んでいる餌を見ていく。沢山入ったドライフードはもちろん論外。ささ身のパックになっているのは、人間様のおつまみでも十分行けそうだ。あの猫が食べなくても、私が食べれば良い。そう思ってレジに行く道すがら……。
小さいスペースに収まっている、小さな命が沢山あった。何時も見る度に心が痛むからなるべく避けて通っていたのに、今日はバッチリ、見てしまった。コロコロと愛らしい、守りたい、守ってあげたい存在。どうか、どうか良いご主人様の手に渡って欲しい。そんなことをキリキリする胃と共に考えていると、ふと子猫と目が合った。なにも心配していない瞳。憂いの無い、ただただ純粋な眼差しと、帰り道の野良猫の、鋭さの中に憂いが垣間見れる目。どちらも同じ猫なのに、こうも人生(いや、ニャン生とでも言うのか)が違う。
「でもそれは人間も同じことだ」
私はレジで会計を済まし、明日の帰り道の事を思う。
上手く食べてくれれば良いけど。