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500文字から600文字の日常  作者: マフラー
12/17

空飛ぶ血液(スプラッタじゃない)

 そこから見る夕日はとても綺麗で、山から降りてくるパラグライダーとの対比が目にも鮮やかだ。誰も居ない教室の中、風に揺れるアイボリーのカーテンが私の心も軽くしてくれている。正直、こんなにも穏やかな気分になれるとは思っても見なかった。面倒くさい授業、先生、友達。私は避けてきたつもりだけど、案外心にストレスが溜まっていたみたいだ。

 一つ、二つ、三つ……

 次々降りてくるパラグライダーの色はバラバラでカラフルで、思わず笑ってしまった。笑ってから気がついた。なんだ、私まだ笑えるじゃん。まだ、大丈夫だ。張り付けた笑顔じゃない、素直な笑顔で戸締まりをして教室を出た。

 閑散としている廊下を進み、下駄箱までやって来る。ここまで知っている人は誰も居なかった。珍しいな。そう思いながら靴を出していると、声がかかった。

「お、佐藤、今帰り?」

 振り向くと山口くんがこちらを見ていた。片手をふっ、と挙げながらこちらにやって来る野球帽を被った姿が可笑しくて、また、笑ってしまった。さっきの笑いを引きずっていた。

「……そんな笑い方も出来るんだな」

 どん、と心臓が跳ねて、急速に駆け回る血液に体がついていかない。何で、この人私の笑顔の違いがわかるの?

「なんで……?」

 それしか言えない私に、彼はこう言った。

「あー、それはほら、だってずっと見てきたし……俺佐藤の事、好きだし」

 血液の勢いが止まらない。


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