犠牲はなるべく出したくはないのだけどな
ここの領主でワーウルフのウルフルンルンを俺たちが倒したことで、彼のバカでかい屋敷にさらわれた町娘の一部は無事に家に戻れたが、多くの者たちはすでに殺されており、みるも無残な亡骸となって家に戻ることになった。
ウルフルンルンがろくでもないやつであったのは間違いない。
「なんでもっと早く倒してくれなかったんだ!
あんたらがもっと早く来てくれれば娘は死なずに済んだ!」
と娘を殺された父親に詰め寄られたりもしたが、こればかりは仕方がない。
メタな話をするのならば、そうなるようにシナリオが組まれており、王子が反帝国の戦いに決起する日時も決まっているので、私が気が付いた時にはすでにこの街の町娘はかなりの数が殺されていたであろうから、こればかりは本当にどうしようもないのだ。
RPGなどで死者復活の施設がたくさんあったり、死者復活のアイテムが安く買えたりしても、シナリオ上の理由で死んだ人間は絶対に生き返らなかったりするのはひどい矛盾だとも思うが、この世界には死者蘇生どころか回復魔法すら存在しない。
戦装束システムがあるので、私とともに戦う者たちは怪我をすることはなかったりもするのだが、その恩恵に預かれるものはごく一部だけだしな。
「すまない、私達にできる最大限のことはしたのだが……」
実際に娘を取りかえそうとして殺されたらしい父親などもいるようではあるし、娘が無事帰ってきた家が娘を殺された家に逆恨みされたりもしそうではあるが……。
シュゼットが寂しそうにポツリと呟いた。
「私達はこの人達に恨まれるために頑張って戦ったでありますか?」
私はそれに対して首を振った。
「少なくとも娘が帰ってきて喜んでいる人達もいるんだ。
そして私達にできるのはこれ以上帝国の支配の犠牲者を増やさないように先に進むことだけだ」
「たしかにそうでありますな」
実際娘が殺されたものから見れば逆恨みしたくも成るのだろう。
特別な力を持つというのはおそらく理不尽な感情を向けられることも許容せねばならないのだ。
無論こういった犠牲が少ないに越したことはないのだが。