ようやくゲームの知識が役に立ってよかった
さてそろそろ次の地域を帝国から開放しに行くべきか。
住民の話を聞くとこの土地の領主はどうもかなり残酷な男であるらしい。
「ここの領主はとても恐ろしい男だ。
兵士に街の娘をさらわせて、そのさらった娘はすべて犬の化け物に食わせているらしい。
城からは夜な夜な、恐ろしい悲鳴が聞こえてくるのだ。
なんとか娘たちを助けてくれないか」
「ああ、わかった、娘たちをなんとか助けてみるよ」
そのセリフを聞いて、ここでは”アレ”がでてくるのかと気がついた。
その対策のために私は町の商店でとある物を買ってから本拠地へと戻った。
「王子、この土地の領主は極悪非道な男のようです。
すぐにでも討伐に参りましょう」
ミシュリーヌも噂を聞いてかなり憤っているようだ。
「ああ、そうだな。
だがその前にミシュリーヌ、君に受け取ってもらいたいものがある」
「え、私に?
贈り物ですか」
「ああ、ミシュリーヌはカロルともにずっと一緒に戦ってきた。
だが、カロルだけに贈り物をするというのも少し不公平だからな」
私がそういうとミシュリーヌは少しソワソワしている。
「そ、そうですね。
では何をくださるのでしょうか?」
「ああ、これを受け取って欲しい」
私が取り出したのは街で買い求めた”ハガル”のルーンが刻まれた銀のペンダントだ。
「銀製のペンダント……ですか?」
「うん、きっとミシュリーヌに似合うと思ってね。
そんなに高いものではないのだが……」
だがミシュリーヌは喜んでくれた。
「いえ、その気遣いが嬉しいです。
つけていただいてもいいでしょうか?」
「ああ」
とミシュリーヌの首にペンダントのチェーンをまわしてつけてあげた。
「ありがとうございます。
私がんばりますね」
「ああ、頼むよ」
MAP
道道道道砦
本空空空道空空空空空空敵
空空空空道道道村道道道道
今回のマップからは中ボスのいる砦があり、更に飛行ユニットがでてくる。
「今回は途中で落とさなければならない砦がある。
まずカロルとミシュリーヌで砦を落としてくれ」
私がそう言うとカロルがうなずいた。
「わかったよ、王子」
そしてミシュリーヌもうなずいた。
「わかりました、なるべく早く砦の守り手を倒しましょう」
二人の言葉にうなずき私は言葉を続けた。
「砦を落としたら速やかに中継器と転移用魔法陣を設置してくれ。
その後すぐにアナとシュゼットを転移して砦へ送る。
その後は追って指示を出す」
「うん、了解だよ、王子」
カロルがうなずくとミシュリーヌもうなずいた。
「わかりました、可能な限り早く作業を終わらせることにいたします」
アナとシュゼットもうなずき、4人が戦装束をまとい武器を携えれば出撃準備は終わる。
カロルとミシュリーヌに魔力回路を接続し、それぞれの戦装束が色彩をまとうと二人は出撃していった。
今頃は砦からゴブリン2匹出てきているがカロルが足止めしてミシュリーヌが叩き切り砦に到達。
砦にいるホブゴブリンを二人でタコ殴りにすると砦が陥落する。
「中継器と魔法陣を設置したよ」
カロルから連絡が入ってきたので、私は残っているアナとシュゼットに魔力回路を接続し、マナを充填した後に彼女たちを転移用魔法陣へ向かわせると一瞬で陥落させた砦へと転移した。
「これは便利ですね」
アナがそう言うとシュゼットもうなずいた
「本当、便利なのだ」
しかしその頃には飛行ユニットであるガーゴイルが3匹敵の城から飛行してきて、道には3匹のゴブリンが砦へ向かって進んできている。
「カロルとミシュリーヌは砦からでてゴブリンを倒してくれ。
アナとシュゼットはそこで協力してガーゴイルを迎撃し砦を守ってくれ」
「わかったよ、王子」
カロルがうなずくとミシュリーヌもうなずいた。
「わかりました、私達はゴブリンを殲滅します」
「了解。
私はガーゴイルの足止めだね」
アナがそう答えるとシュゼットもふんすとクロスボウを掲げてみせた。
「撃ち落とすのは私に任せるのである」
バサバサと羽音を響かせて砦へ向かってくるガーゴイルにアナが鈍足の魔法を放って、足止めしクロスボウを携えた持ったシュゼットがそのガーゴイルを戦闘から狙撃してバッタバッタと撃ち落としていった。
「私にかかればこんなものなのである」
そしてカロルとミシュリーヌのコンビは手慣れた様子でゴブリンを足止めをし、その攻撃力でバッサバッサとなぎ倒していった。
「カロルとミシュリーヌは先行して敵の本拠地へ向かってくれ。
アナとシュゼットはまだ飛行ユニットが出てくる可能性があるからその場で待機だ」
「了解だよ」
「わかりました」
「ん、了解」
「空を飛ぶ敵は厄介であるな」
そしてカロルとミシュリーヌがたどり着いた本拠地にいたのは軽い口調の優男だった。
「やあやあ、わざわざよく来たね。
反乱軍の諸君」
ミシュリーヌがその男に問いただした。
「お前がここの領主か」
「ああ、そうだよ。
僕はここの領主のウルフルンルンさ」
「娘をさらって買っている犬に食わせているというのは本当か?」
「んーそれはちょっと違うねぇ。
まあ娘をさらっているというのは事実だけど」
「なぜそんなことをする?」
「なぜって?
力のあるものは力なきものには何をしても良い。
それが帝国の掟さ。
力がないほうが悪いんだよ」
「ならば私達がここでお前を倒す!」
「くくく、僕を倒す?
それは無理だな!」
男がそこまで言うと半人半獣の姿に姿を変えた。
「貴様はワーウルフだったのか?!」
「そうさ、僕を倒すには魔法が必要。
でも君たちはただの剣士。
僕が負けるはずがないのさ!」
男がそこまで言った瞬間私がミシュリーヌに送った”ハガル”のルーンが刻まれた銀のペンダントが光を放っって、その光が大剣へ宿った。
「これは?」
「そ、それは、まさか、破壊のルーン?!」
ハガルは元々は雹を意味するルーンだが農作物に壊滅的な被害を出す雹という物体の性質から破壊のルーンの意味も持つ。
「王子はこれを知っていて?
覚悟なさい!」
ただの鋼の大剣であれば傷一つ与えることはできないが、破壊のルーンの加護を得たミシュリーヌの大剣はウルフルンルンの体を切り裂いていく。
一方ウルフルンルンの攻撃はミシュリーヌには通らない。
「こ、こんな馬鹿な、僕が負けるはずが!」
「力に溺れれば力に敗れるものだ!」
ミシュリーヌがウルフルンルンを一刀両断にして敵本拠地を制圧し私達は勝利を得た。
もとのソシャゲでは飛行ユニットを放置して、全員先に進んで砦を落とされて、魔術回路を切断されて負けたり、魔法武器を装備せずに進んでダメージを与えられずにタイムオーバーで負けたりしたものだが、そういった過去の経験が役に立ってよかったよ。