5話目~入学式にやって来る面倒事〔下〕~
駄文作者の酒桜香燐です。
今回は普段戦闘を書かなかったので時間が思ったより掛かりました。
今回も楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
アルムとの決闘が終わり俺はマルコスの方に顔を向け近付く。
普通なら文句を言ってくる護衛のアルムも先程の拷も………決闘で心が砕けているため何も言ってこない。
取り巻きをしていた女性達も次は自分自身の身に起こりうる可能性を考えて何もしてこない。
なので今なら近付き放題なのである。
「決闘を続けるか?」
「愚問だな戦って改めて分かる事もあるからな」
俺の質問にマルコスが答える。
多分こいつは………マルコスは気づいているのだろうな……
ならばと俺は手を広げて言う。
「観客の皆様方これから始まる戦いは危険でございます‼危害を与えたくないので学院長や先生方も武道館観客席から下に降りてこないように………さ~始めよう‼パーティーのclimaxを‼」
観客達が観客席に上がる。
カノンも上がろうとするので俺は手を掴み言う。
「カノン一緒にいてくれ……」
「はい……夫婦は一心同体ですのでカルマ様がそう言ってくれるのであれば私はずっと側にいますよ」
「……あぁ……ありがとう」
俺は前を向き観客達に聞いた。
戦法は何にしようか……
何でも良いや………たまには他人任せも良いかな……
「では、観客達に問おう‼一番と二番どれが良いと思う‼」
ざわざわしている中、学院長が聞いてくる。
「何が一番と二番なのだね?」
「激しい技か優しい技かの違いですよ」
「激しい技とは?」
「武道館を壊す可能性か壊さないかの違いですかね?」
「「「「「「二番で‼」」」」」」
観客達が大きく声を上げて言う。
二番か………つまらん派手さがない方を選んだな……
それに、新究極魔法を試せるし……ま~良いか……
「後、一応の為に言っておきますが……先生方で結界を張れる人は全身全霊を賭けて結界を張ってください」
顔をお互いに見る。
「それでは、始めよう‼」
今、俺達は決闘の礼儀である御互いの名を叫ぶ。
「俺の名は王国第一王子「マルコス・グロー=アルヴァーナ」だ‼」
「俺の名はしがない怪物の「カルマ・ゲノム=パラケルスス」だ……」
だが、俺は観客達の二番選択でヤル気が削げてきている為……声が小さくなってくる。
「マルコス……取り合えず究極魔法ありで良いんだよな?」
「ふむ……あぁ~ありで良い‼」
「それでは、学院長……お願いします」
俺とマルコスの雰囲気に当てられたのかビクッと体を動かした。
「ルールは先程と一緒のルールで………それでは……第二の決闘を始め‼」
お互いに職技を発動する。
虹色の光を放ち服装が変わった、それもお互いに………
魔職の次は神職を使ったので違う意味で場が湧く。
「魔職の次は神職か昔と違ってレベルが上がったな」
「ふん……マルコスこそ、昔と違って職技に磨きが出てるな………」
マルコスの格好は絢爛豪華な鎧を着て腰には大きな剣を付けている。
そして、俺の格好は屈辱的だが俺は今……純白のウェディングドレスの様な大きめなドレスに身を包んでいる状態である……俺は顔が中性的な為に女装をしたら男性か女性か分からなくなってしまう……なので色んな意味でもっと場が騒がしくなっている。
格好もそうなのだか観客が騒ぐ理由がもう1つあるのだ……
それは、虹色の光が消えた時に俺の足下には黒い柩が現れて俺の隣に居た筈のカノンの姿が消えているからだ……
カノンについては俺が助けてもらう為に今は眠ってもらっているとだけ言っておこう……
そして、その言葉を最後にお互いに究極魔法の言の葉を詠唱していく
「その星屑は全てを貫き………その弾丸は咎人を裁き………その聖光は全てを葬る……そして今……永久の闇を終わらさん……」
おいおいヤバイ詠唱が聴こえてくるんだけど……
ま~俺も人の事言えないが………
「此処を照らすは平和の詩……夫婦に鳴らすは愛の詩……人に伝うは永久の詩……戦場を導くは勝利の詩……聖女が歌うは女神の詩……」
「「究極魔法発動‼」起動‼」
『無限星王結界‼』
『唄え神界の歌姫~ミューズ~』
マルコスの究極魔法で武道館が夜の様に暗くなる。
観客達は武道館の天井を見て息を呑む。
そこには確かに満天の星空が広がっていた……そしてその中の星の一つがピカッと光ったと思ったら空間に線を描き俺の目の前に降ってきた。
「チッ……」
今一歩でも歩いていたら俺はその星に貫かれていた……
俺は髪飾りの様に着いているヘッドマイクに手を伸ばして息を吸い込んだ……
そして観客達は夜空を見ていた目線が俺に向く。
なぜかって、それは俺の歌声が聴こえたからだ……
「キレイな声……」
「何て美しい歌声何だ‼」
「こんな歌声がこの世に存在しているなんて!?」
うっとりと聴いている者も居れば驚いている者も居る。
俺が歌い始めてからこの武道館はライヴ会場の様になったのは言うまでもない……
そして、マルコスがなぜ俺の不用心な後ろ……背中に何もしてこないのかは理由を言うなら究極魔法の副作用だと思う。
究極魔法は最強の魔法そんな魔法を何の代償も無しで使えるわけがない……
例えば、俺の場合は〔ネクロの花嫁〕は特定の人物への依存……だから俺はカノンを俺の嫁にしたのだ自分の代償者にする為に……
そして、この神界の歌姫だった場合は……発動中の性別の転換である……
なので今、発動中の俺は本物の女性なのである……
話を変えよう……あいつの……マルコスの究極魔法の代償は……
多分だが、こんな攻撃魔法だと制御が辛い筈だ……と、言うことは………行動制限か激痛のどちらか……
俺の予想は、前者だと思うのだが……
俺が歌いながら考えていると……
「なぜだ‼なぜ当たらんのだ!?」
「この歌は相手の脳に浸透する……」
そう、この歌姫は只の美しい歌を歌うだけではない‼
歌姫は相手の脳に周波数を合わせた音波を放ち操ることが出来るのだ‼
そして、相手を操ると言うことは相手の魔法を俺に当てさせない事も出来る訳だ。
「次の曲は私のパートナーと一緒に歌い踊ります」
そう言うと黒い柩が開かれて格好良いスーツを着たカノンが現れる。
その姿はさながら女性に見えない……どちらかというと麗人の女性と言うより執事の様に見える。
俺はカノンと手を繋ぐ。
「それじゃあ……重ね掛けいくよ……」
「はい。わかりました」
「その二人は永遠の愛を誓った……「かつての私はもういない……」二人は永遠の愛を唄った………「貴女の為なら全てを捧げる」私達二人の絆は永遠に壊れない……」
そう究極魔法の重ね掛けである……今まで誰も試したことのない神も魔王も考えない様な事を今俺達はしている。
『『〔福音乃夫婦〕』』
発動した瞬間にキレイな鐘の音が聞こえてくる。
俺達夫婦の周りに天使が現れる。
「其れでは最後の曲です……」
「「福葬曲」」
一人で歌う神職「歌姫」と違いこの神職は一人で出来ない事を可能にする。
結婚して一日の夫婦の筈なのにずっと昔から一緒にいた様に感じられる……特にこの神職を使ってから確実にそう思えてきた……
「美しい歌‼」
「一人でもあんなに綺麗だったのに二人になってこんなにすごいなんて!?」
俺達が歌っているとマルコスが苦しみだした。
そして、最後の曲を歌い終わった時………マルコスが意識を失い倒れた。
マルコスの究極魔法で出来ていた星空の空間が硝子が割れる様に崩れていった。
「ワァ~~」
「ウォ~~」
「スゴい」
俺とカノンは静かに礼をする。
「眠りなさい……据傲の王子様……」
倒れたマルコスを見ながら呟いた言葉が歓声で消えていった……
次回も頑張って書いていきます。