9話目~トムス怒る~
皆が口を閉じクロードの言葉に耳を傾ける。
俺はクロードが何を言うか分かっているので目を閉じて話を聞いた。
「家族………いや……消された一族の残った最後の一人とでも言おうか……」
その言葉にグリムは恐る恐るクロードに聞いた。
「家族……とはどういう事でしょうか?」
「私の義兄の子供だ………」
いつの間にか起きていた大人達の声がざわざわと聞こえる。
「では、この……カルマ・ゲノム=パラケルススは王族なのですか?」
グリムは焦った様子でクロードに聞く。
「いや………」
ざわざわしていた周りの大人達から安堵の声が聞こえる。
だが……クロードの続きの言葉を聞いてまた五月蝿くなった。
「今は違う……」
「今は違う………とはどういう事でしょうか?」
俺はその話に嫌気になった。
「おい……今はそんな事どうでも良いだろ……」
「王に何と口の聞き方だ……っ!?」
この国の御偉いさんが俺の殺気に当てられてビクッとした。
「良い良いカルマの言うとうりだ今は其の時ではない」
俺は殺気を消し頷いた。
「で……其処で俺にだけ殺気を放しているお前は誰だ……」
俺が顔を上げて窓を見る。
「カルマ様其処には誰もおりませんが?」
「そうだぞ‼誰もいないぞ‼」
俺は溜め息を吐き懐に偲ばせていた研究道具のメスを窓のカーテン部分を狙って投げた。
ブチッと音と共にカーテンが落ちた。
「ヤバっ……」
其処には黒い服を着た見るからに怪しい女性がいた。
俺はまた、溜め息を吐き女性に問い掛ける。
「お前は何者だ?」
「………」
無視と言うか無言でいる女性に引き続き俺は問い掛ける。
「お前がこの事件の犯人か?」
「そんなこと言う訳ないじゃない‼」
「いや……そんな言葉言った時点で犯人だろ………」
「ヤバっ……」
何なのかな頭が残念な娘なのかな?
「取り敢えず降伏してくれないか……」
「………………」
「反抗されるのも面倒だから………」
「分かったわよ……って言う訳ないでしょ‼」
そう言って女性は手を上げる振りをして俺にナイフを投げてきた。
突然の為に俺は避けきれずナイフが肩に刺さる。
「グっ!?」
「カルマ!?」
「カルマ様!?」
「カルマっち!?」
俺は痛がる振りをしてこの場にいる奴等の三者三様色々な驚き方を冷静に聞いている。
まだ、裏切り者が居る可能性があるからだ……
すると………
「聖騎士として私が叩き切ってやる‼」
アルムが剣の切っ先を相手に向けて叫ぶ。
「アルムさん……俺にやらせてもらえないっすか………?」
さっきまで聞いていた明るい声でなく暗い声のトーンでトムスはアルムに声を掛けた。